更新日: 2022.12.28 その他年金
75歳で年金を繰下げ受給すると決めたけど、健康不安で70歳からに変更できる?
本記事では、老齢年金の繰下げ受給にスポットを当てて、受給開始年齢や受給方法が変更できるか、変更した場合受給額はどう変わるかについて分かりやすくまとめました。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
繰下げ受給の開始時期は特別な手続きなしで変更可能
老齢年金の繰下げ受給を希望する場合、受給開始年齢は事前申告制ではありません。繰下げ受給を希望する人は、65歳を迎えて老齢年金の受給権が発生した際に年金の請求手続きを行わなければ、繰下げ受給を選択したことになります。
また、老齢基礎年金・老齢厚生年金のうちいずれかだけ繰下げたい場合も、年金請求書の繰下げ希望欄を選択して丸をつけるだけで、受給開始年齢の申告欄はありません。
繰下げ受給を開始する年齢は、66歳以降の受給開始を希望する時期に、年金事務所などに「繰下げ請求書」を提出した時点で決まります。
そのため、もともとは75歳に繰下げる予定を健康不安などの事情で70歳に変更したい場合は、単に70歳の時点で繰下げ請求書を提出すれば、ほかに特別な手続きが発生することはありません。
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
繰下げ受給開始75歳と70歳では年金額はどれくらい違う?
老齢年金の繰下げ受給は、受給開始時期が遅ければ遅いほど高い増額率が適用される仕組みです。受給開始時期に応じた増額率は、次の式で計算できます。
増額率=0.7%×65歳に達した月(誕生日前日が属する月)から繰下げ請求月前月までの月数
70歳で受給開始する場合は、70歳0ヶ月~70歳11ヶ月のどのタイミングから受給するかによって、増額率が42.0~49.7%まで変動します。一方、75歳以降に受給開始する場合は、いつ開始しても増額率は84.0%です。
年金額が180万円(月額15万円)の人が70歳の各月および75歳に繰下げて受給した場合、年金の増額率と金額は図表1のとおりです。
【図表1】
繰下げ請求月 | 増額率 | 年金額 |
---|---|---|
70歳0ヶ月 | 42.0% | 255万6000円 |
70歳1ヶ月 | 42.7% | 256万8600円 |
70歳2ヶ月 | 43.4% | 258万1200円 |
70歳3ヶ月 | 44.1% | 259万3800円 |
70歳4ヶ月 | 44.8% | 260万6400円 |
70歳5ヶ月 | 45.5% | 261万9000円 |
70歳6ヶ月 | 46.2% | 263万1600円 |
70歳7ヶ月 | 46.9% | 264万4200円 |
70歳8ヶ月 | 47.6% | 265万6800円 |
70歳9ヶ月 | 48.3% | 266万9400円 |
70歳10ヶ月 | 49.0% | 268万2000円 |
70歳11ヶ月 | 49.7% | 269万4600円 |
75歳 | 84.0% | 331万2000円 |
日本年金機構「年金の繰下げ受給」より筆者作成
このケースでは、繰下げ請求月が70歳0ヶ月の場合と75歳の場合で、75万6000円もの年金額(年額)の差が生まれます。
ただし、受給開始時期に5年間の開きがあるために、累計受給額はなかなか逆転しません。累計受給額が逆転するには少なくとも92歳になるまで年金を受給する必要があるため、健康的に不安がある場合などは、受給開始時期が早いほうが生涯の受給額が多くなる可能性があります。
繰下げ受給の選択取り消しも可能
65歳から年金を受け取らずに繰下げ待機をしている間に、繰下げ受給を取り下げて65歳からの年金をさかのぼって受給することも可能です。この場合、65歳から受給開始までの期間の年金は一時金として支払われ、手続き以降は増額なしの年金が支給されます。健康状態などによっては、こちらの方法も選択肢となるでしょう。
ただし、年金には5年の時効があるため、さかのぼって受け取ることを選択すると、請求から5年以上前の年金が受け取れなくなることに注意が必要です。
なお、2023年4月より、70歳以上80歳未満の間に繰下げ受給を選択せずに老齢年金を請求する場合、請求時点の5年前に繰下げ申し出があったとみなされ、年金が受給できるようになる「5年前みなし繰下げ制度」が施行されます。これにより5年間の時効がなくなり、受給額が増える可能性があります。
年金の繰下げ受給は開始時期を自由に選択できる
老齢年金の繰下げ受給は事前に受給開始年齢を申請する方式ではなく、自分が受給したいと思うタイミングで繰下げ請求をすることで、いつでも受給をスタートできる仕組みです。
そのため、病気やけがで健康状態に不安が生じたり、退職などで経済状況が変わったりした場合などには、いつでも計画を変更して受給を開始できます。2023年からは、5年前みなし繰下げ制度施行されるので、そちらも考慮に入れて計画しましょう。
繰下げ受給をすると年金額は増えますが、早く受給を始めた場合の累計受給に追い付くには時間がかかるというデメリットもあります。自身の心身や家計の状態に合わせて、受給開始時期を柔軟に調整しましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 66歳以後に老齢年金の受給を繰下げたいとき
日本年金機構 65歳時の年金の手続き(特別支給の老齢厚生年金を受給している方)
日本年金機構 老齢厚生年金を繰下げ請求した場合、どのくらい増額して受給できるのですか。
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部