企業型DCで「元本確保型商品」を選んでいる人は要チェック! デメリットを解説
配信日: 2022.12.30 更新日: 2023.01.04
さらに、会社が拠出する掛金に上乗せする形で加入者が掛金を拠出するマッチング拠出をすると、加入者が負担した掛金の全額が所得控除になるため、利用している人も多いでしょう。
しかし、所得控除が使えれば良いという考えから、定期預金や保険などの元本確保型商品を選んでいませんか?
本記事では、企業型DCのうち元本確保型商品の特徴と、元本確保型商品を選んだ際のデメリットについて解説します。
執筆者:谷口まり恵(たにぐち まりえ)
一級ファイナンシャルプランニング技能士
元本確保型商品とは
元本確保型商品とは、積み立てた元本が確保される商品のことで、企業型DCの中では定期預金や保険が該当します。あらかじめ決められた利率で運用され、元本割れのリスクが低いという特徴があります。
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元本確保型商品を選んだ際のデメリット
企業型DCで元本確保型商品を選んだ際のデメリットは、主に、資金を増やせない、非課税のメリットを活かせない、手数料がまかなえないの3つです。
資金を増やせない
元本確保型商品は利率が低いため、資金を増やすことは難しいといえます。元本確保型商品の利率は金融機関によって異なりますが、メガバンク系信託銀行の円の1年定期預金の利率は0.002%です(2022年12月時点)。
例えば、月2万円を年率0.002%で20年間複利で運用した場合、元本480万円に対して運用益は956円であり、わずか0.019%しか増えません。
積立金額と期間の条件を変えずに年率3%の商品で運用した場合の運用益は176万6040円となり、約176万円もの差が生まれます。将来に向けた資産形成を考えれば、元本確保型商品のみで運用すると資金を増やす機会を逃しているともいえます。
非課税のメリットを活かせない
元本確保型商品では、運用益が全額非課税になるメリットを活かしきれません。
一般的に、投資商品で資産運用をして得た利益に対しては約20%の税金がかかるため、できる限り運用益が期待できる商品で運用するほうが非課税の金額を大きくすることができ、税制優遇措置のメリットを活かせる可能性があります。
例えば、先ほどの定期預金で運用した場合に運用益にかかる税金は運用益956円に対して約194円ですが、年率3%の商品で運用した場合は運用益176万6040円に対して約35万8000円です(税率20.315%で計算)。本来であればこの税金がかかるところ、企業型DCであれば非課税になるのです。
手数料がまかなえない
退職や転職をきっかけに、将来企業型DCの資産をiDeCoに移換するケースがあるかもしれません。その場合、iDeCoにかかる手数料は加入者本人が負担することになります。
iDeCoの手数料は国民年金基金連合会と運営管理機関の両方に支払う必要があり、運営管理機関あての手数料は申し込む金融機関によって異なります。
国民年金基金連合会に支払う手数料だけでも、iDeCo加入時に2829円(初回のみ)、掛金を納付するごとに105円かかります。現状の金利情勢を考えると、元本確保型商品では運用益で手数料をまかなうことは難しいでしょう。
積み立てた掛金の中から手数料を支払うため、結果として元本を取り崩すというデメリットが発生します。
まとめ
企業型DCには、加入者が自分の好きな投資商品を選択できる特徴があります。選んだ商品の運用成績次第で将来もらえる年金額が異なるので、商品選びが非常に大切です。
元本確保型商品は元本割れのリスクが低いというメリットはある一方で、運用しても資金が増やせない、非課税のメリットを活かせない、iDeCoに移換した場合に手数料がまかなえず実質的に元本を取り崩さなければならないというデメリットもあります。
また、加入者自身が商品を選んでいなくても、加入してから一定期間の間に商品を指定しないと、会社が指定した商品で自動的に運用が始まる場合もあります。その際、リスクの低い元本確保型商品が選ばれていることもあります。
もらえる年金額が運用成績に左右されるからこそ、この機会に自分が選んだ商品の運用状況をチェックしてみてはいかがでしょうか。
出典
一般社団法人投資信託協会 企業型DC(企業型確定拠出年金)ってなあに? -制度の概要-
金融庁 資産運用シミュレーション
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト 手数料について
執筆者:谷口まり恵
一級ファイナンシャルプランニング技能士