更新日: 2023.01.24 国民年金
遺族年金は再婚するとどうなる?(1)再婚した妻自身の年金
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
配偶者は遺族年金の対象者に
遺族年金には、国民年金制度からの遺族基礎年金と、厚生年金保険制度からの遺族厚生年金があります。亡くなった人に生計を維持されていた妻は、その他必要な要件が満たされていれば、いずれも受給対象です。
遺族基礎年金については亡くなった人に18歳年度末までの子ども、あるいは一定の障害がある20歳未満の子どもがいることが条件となっています(※いずれも結婚していない子)。こういった子どもがいない場合は、そもそも遺族基礎年金は支給されません。一方、遺族厚生年金は子どもがいることは条件ではありません。
遺族基礎年金は定額で支給され、遺族厚生年金は原則として亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3相当が支給されます(【図表1】)。
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遺族年金の受給の流れ
亡くなった夫が会社員等で厚生年金に加入していた人であれば、子どもがいれば遺族基礎年金と遺族厚生年金、子どもがいなければ遺族厚生年金を妻は受給できます。子どもが18歳年度末(障害がある場合は20歳)を迎えると遺族基礎年金が受けられなくなります。
ただし、遺族基礎年金がなくなった当時40歳以上の65歳未満の妻には中高齢寡婦加算が加算されるようになります(【図表2】(1))。また、子どもがいなくて遺族基礎年金を受けない場合でも、夫の死亡当時、40歳以上である妻にも65歳まで中高齢寡婦加算が加算されます(【図表2】(2))。
そして、遺族厚生年金を受給していた妻がこのまま65歳を迎えると、妻自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金(※妻自身が厚生年金に加入したことがある場合)と、老齢厚生年金相当額を差し引いた遺族厚生年金をあわせて受給できます(【図表2】(1)(2))。
このように家族構成によって、受けられる年金の種類は異なりますが、遺された妻は遺族年金による保障があります。
妻が再婚すると妻の遺族年金はなくなる
遺族年金のうち、すべての子が18歳年度末を迎えると受給が終わる遺族基礎年金に対し、遺族厚生年金は【図表2】のとおり一生涯受け取ることも可能となるといえます。
しかし、遺族年金を受給している妻自身が再婚した場合は、妻の遺族年金の受給権はなくなります。夫が死亡したことによって、遺された妻の生活のための年金となっていますが、新たな配偶者と結婚した場合、それより先は支給されません。
もし、子どもが18歳の年度末を迎える前、遺族基礎年金と遺族厚生年金両方を受給している時に再婚すると、妻はそれ以降いずれの年金も受給できなくなるでしょう。
長い人生です。配偶者と死別してもその後再婚することもありえます。遺族年金を受け始めた場合、再婚が遺族年金受給権の1つの消滅原因であることをあらかじめ理解しておくことが大切です。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー