更新日: 2023.02.01 国民年金

最後の年金は誰が受け取るの? 未支給年金とは?

執筆者 : 三藤桂子

最後の年金は誰が受け取るの? 未支給年金とは?
年金を受け取っている人が亡くなった場合に、その人に支給すべき年金であって、まだ支給されていないものは、請求に基づいて一定の範囲の遺族に支給がなされます。この年金のことを「未支給年金」といいます。
 
未支給年金は、年金を受けている人が亡くなった時、まだ受け取っていない年金や亡くなった日より後に振込された年金のうち、亡くなった月の分までの年金は、未支給年金として亡くなった人と生計を同じくしていた遺族が自己の名で請求できます。
三藤桂子

執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。

社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。

また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。

https://sr-enishiafp.com/

なぜ未支給年金があるの?

年金の振込は、原則偶数月の15日となっているため、亡くなった日より後に振込された年金や亡くなった月分までの年金については、未支給年金となります。つまり、亡くなった月日によって変わり、1~3ヶ月発生します。


 
亡くなった人の最後の年金である未支給年金は、亡くなった当時、生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他三親等以内の親族が受給できます(優先順位は配偶者が第1順位で、以下記載順のとおり)。先順位者がいても生計を同じくしていなければ、後順位者の人で生計を同じくしている人が受け取ることができます。
 

「生計を同じく」とは?

「生計を同じく(生計同一)」というのは、基本的に、亡くなった人と同居していたことを指しますが、別居の場合でも、継続的に経済的な援助が行われていた場合などは生計を同じくしていると認められます。
 
しかしながら、受け取る権利のある人が複数人いたとしても、亡くなった当時に生計を同じくしていなければ、未支給年金を受け取ることができません。その場合は、未支給請求書の2枚目の「受給権者死亡届(報告書)」を提出します。
 
生計を同じくする要件について、認定基準ではどのように規定されているか見ていきましょう。 認定基準は次のとおりです。

(1) 住民票上同一世帯に属しているとき
(2) 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一でいるとき
(3) 住所が住民票上異にしているが、現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一にしていると認められるとき

 
未支給年金を請求する場合、必要な添付書類は次のとおりです(マイナンバーを記入すると請求する人の世帯全員の住民票の写しは省略できます)。亡くなった日より後に交付された戸籍謄本・住民票が必要です。

・亡くなった人の年金証書
 
・亡くなった人と請求する人の続柄が確認できる書類(戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し等)
 
・亡くなった人と請求する方が生計を同じくしていたことがわかる書類(亡くなった人の住民票の除票および請求する人の世帯全員の住民票の写し)
 
・受け取りを希望する金融機関の通帳(請求書に金融機関の証明を受けた場合は添付不要)もしくは公金受取口座を利用することもできるようになりました。
 
・亡くなった人と請求する方が別世帯の場合は「生計同一関係に関する申立書」

(日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」(※)より一部抜粋)
 

「生計同一関係に関する申立書」

亡くなった当時、亡くなった人と住民票上同一世帯であれば、「生計同一関係に関する申立書」は必要ありません。また、住民票上、世帯が別であっても2世帯等で住所が同一の場合、「別世帯となっていることについての理由書」の「受給権者の死亡当時、同じ住所に2世帯で住んでいたため」の申立てをします(未支給請求書に記載欄があります)。
 
住所も世帯も別となると、未支給請求書の生計を同じくしていたことの申立てが必要となります。主なケースを例にしました。
 

<例1>

配偶者・子が単身赴任や就学による別居が考えられます。健康保険証等の被扶養者になっていれば、健康保険被保険者証の写しや学生証の写し、定期的に送金がある場合、預金通帳等、その事実を証明する書類を提出することで、生計同一関係証明書類となります。
 

<例2>

配偶者が介護施設等に入所され、住所が異なるケース。経済的援助等を生計同一関係に関する申立書に記入いただき、第三者証明として介護保険施設の施設長さんやケアマネジャーさんが証明してくれることが多いです。
 

<例3>

配偶者がいない場合で、子が婚姻し住所が異なるケース。婚姻により世帯が別になっていますが、定期的に経済的援助や音信・訪問をしていることを生計同一関係に関する申立書に記入いただき、第三者証明欄に三親等以外の人に証明をしてもらいます。
 
子以外で婚姻等で住所が異なるケースでも、例3のように生計同一関係に関する申立書に記入いただき、第三者証明をしてもらい請求します。
 

まとめ

経済的援助とは、日常生活に必要な仕送り等を指します。金銭だけでなく、食料品・日用品の購入や家賃や光熱水費などがあげられます。
 
未支給年金は亡くなった人の最後の年金です。生計を同じくしていた遺族の人は、忘れずに請求しましょう。
 

出典

(※)日本年金機構 年金を受けている方が亡くなったとき
 
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

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