更新日: 2023.02.03 その他年金

遺族年金と老齢年金は同時に受給できる? 国民年金と厚生年金では違うの?

執筆者 : 伊達寿和

遺族年金と老齢年金は同時に受給できる? 国民年金と厚生年金では違うの?
日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は公的年金に加入しており、原則として65歳になると老齢年金を受け取ることができます。また、万が一亡くなった場合には、対象となる遺族には遺族年金が支給されます。
 
遺族年金を受け取っている人が65歳になった場合、遺族年金と老齢年金を同時に受け取ることができるのでしょうか?
 
また、公的年金は2階建ての構造で、1階部分の国民年金と2階部分の厚生年金保険に分かれていますが、国民年金と厚生年金保険で扱いに違いがあるのでしょうか?
 
今回は、遺族年金と老齢年金の受け取りについて説明します。
伊達寿和

執筆者:伊達寿和(だて ひさかず)

CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

会社員時代に、充実した人生を生きるには個人がお金に関する知識を持つことが重要と思いFP資格を取得。FPとして独立後はライフプランの作成と実行サポートを中心にサービスを提供。

親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けて、地域に根ざしたFPとして活動中。日本FP協会2017年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2018年「FP広報センター」スタッフ。
https://mitaka-fp.jp

原則は1人1年金

公的年金の給付には次の3種類があります。
 

・老齢給付
・障害給付
・遺族給付

 
公的年金では1人1年金が原則であり、老齢給付、障害給付、遺族給付のうち、複数を受け取る権利がある場合は、どの年金を受け取るか選択しなければなりません。
 
また、公的年金は20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」と、会社員や公務員などが加入する「厚生年金保険」の2階建ての構造となっています。老齢給付を例に挙げると、国民年金に対応する老齢基礎年金と、厚生年金保険に対応する老齢厚生年金があります。
 
老齢基礎年金と老齢厚生年金は別の年金ですが、同じ老齢給付であり、同時に受け取ることができます。同様に、障害基礎年金と障害厚生年金、遺族基礎年金と遺族厚生年金も、それぞれ同時に受け取ることが可能です。
 

遺族基礎年金と老齢基礎年金

遺族基礎年金は、国民年金に加入している人や老齢基礎年金を受け取っていた人が亡くなった場合に、子がいる配偶者、または子が受け取ることができる年金です。
 
この場合の子とは、18歳になった年度の3月31日までの人、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある人です。
 
一方、老齢基礎年金は、国民年金に加入していた人が原則65歳になったときに受け取ることができる年金です。
 
老齢基礎年金を受け取るためには、保険料を納めた期間と免除された期間などを合算した受給資格期間が10年以上必要ですが、1人1年金の原則があるので、遺族基礎年金と老齢基礎年金は同時に受け取ることができません。
 
例えば、遺族基礎年金を受け取っている人が65歳になったときには、受給額を考慮して、そのまま遺族基礎年金を受け取るか、老齢基礎年金に切り替えるかを選択する必要があります。
 

遺族厚生年金と老齢厚生年金

遺族厚生年金は、厚生年金保険に加入している人や老齢厚生年金を受け取っていた人が亡くなった場合に、遺族が受け取ることができる年金です。
 
対象となる遺族は優先順に、妻、子、55歳以上の夫、55歳以上の父母、孫、55歳以上の祖父母です。
 
老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受給できる人に厚生年金保険の加入期間がある場合、65歳から上乗せして受け取ることができる年金です。
 
65歳以上の人が老齢厚生年金を受け取る場合、遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方を受け取ることができるものの、受給額の調整が行われます。遺族厚生年金の受給額は、老齢厚生年金の受給額を引いた残りの金額に減額されます。
 
一方、65歳より前に受け取りが始まる「特別支給の老齢厚生年金」については、1人1年金の原則が適用されますので遺族厚生年金との選択になります。
 

両方を受け取れる特別なケース


遺族年金と老齢年金は原則として選択する必要がありますが、両方を受け取れる以下の特別なケースがあります。
 

・老齢基礎年金と遺族厚生年金の組み合わせ
・老齢厚生年金と遺族厚生年金の組み合わせ

 
遺族厚生年金を受け取っている人が65歳になると、遺族厚生年金に加え、老齢基礎年金・老齢厚生年金を併給できます。自営業者や専業主婦などで国民年金だけに加入している人は、老齢基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れます。
 
また、会社員・公務員などで国民年金と厚生年金保険の両方に加入している人は、老齢基礎年金と老齢厚生年金、さらに遺族厚生年金を受け取れます。ただし、遺族厚生年金は老齢厚生年金と受給額の調整が行われます。
 

まとめ

公的年金は1人1年金の原則で、どの給付を受けるか選択が必要な場合がありますが、老齢給付と遺族給付の組み合わせには今回説明した特例が設けられています。
 
遺族年金を受け取っている人は、老後の生活設計を考える上で受給額がどのようになるか知っておくといいでしょう。詳細については日本年金機構のホームページなどで確認してください。
 

出典

日本年金機構 年金の併給または選択
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
 
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
 

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