FPが解説! 年金の繰上げ受給・繰下げ受給を選択する際に注意すること

配信日: 2023.03.01

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FPが解説! 年金の繰上げ受給・繰下げ受給を選択する際に注意すること
年金の繰上げ受給・繰下げ受給という制度があることは、ご存じの方も多いことでしょう。今回は、繰上げ受給・繰下げ受給を選択する時に気をつけなければならないことを、FPがわかりやすく解説します。
三藤桂子

執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。

社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。

また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。

https://sr-enishiafp.com/

公的年金の老齢年金は65歳から本来受給

公的年金には、高齢期に受け取る老齢年金、一家の働き手が亡くなった時に受け取れる遺族年金、ケガや病気で障害が残った時に受け取れる障害年金と、大きく分けて3種類あります。
 
公的年金は、いずれも一定の要件を満たすことで請求し、受け取ることができます。今回は本来65歳から受け取ることができる老齢年金を早くに受け取る(繰上げ)、もしくは遅らせて受け取る(繰下げ)ことができますが、選択する際、注意する点についてお伝えします。
 

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最大のデメリットは早くに受け取ると減額する

早くに受け取る場合は、いろいろとデメリットが生じます。65歳からの年金を早くに受け取ることを検討する際は、デメリットをよく理解しましょう。主なデメリットは次のとおりです。
 

・1ヶ月につき0.4%ずつ減額します(昭和37年3月31日以前生まれの人は1ヶ月につき0.5%)。減額した年金は生涯にわたって受け取ることになります。
 
・既往症がある人は注意が必要です。繰上げ請求した日以後は、事後重症などによる障害年金を請求できません。
 
・65歳までに他の年金の受給権(遺族年金や障害年金)が発生した場合、1人1年金(1種類)のため、一般的にいずれか多い年金を受け取ります。

 
厚生年金保険の加入期間(共済加入期間も含む)と国民年金の加入期間のすべての期間が対象です。どちらか一方や半分だけということはできません。
 

遅らせると増やして受け取ることができる

遅らせて受け取るには、1ヶ月につき0.7%ずつ増額します(1952(昭和27年)4月2日以降生まれの人は75歳まで繰下げ可能)。一般的に増額するので、繰下げ受給はメリットのほうが大きいのですが、注意点もあります。
 

・老齢年金は収入になるため、医療保険・介護保険等の自己負担や保険料、税金が高くなることもあります。
 
・65歳以上で現役世代の人と同等以上の給与で働いている人は、在職老齢年金制度によって老齢厚生年金の報酬比例部分が全部もしくは一部が支給停止される場合、停止された年金は、増やすことができません。
 
・繰下げは1ヶ月ごと増やすことができますが、増えた年金を受け取るには1年間待機してからとなります。つまり、66歳になってからはじめて増えた年金で受け取ることができるため、65歳から66歳までの間で年金の受け取りを希望する場合は、65歳からの年金額となります。

 

夫婦の生年月日や年の差によって受け取り方を考える

公的年金は2階建て年金といわれています。1階部分は日本に住所のある人が加入する国民年金、2階部分は会社員や公務員などが加入する厚生年金保険です。
 
国民年金を受け取るには老齢基礎年金、厚生年金保険は老齢厚生年金と言います。夫婦で年金の受け取りを検討する場合には、老齢厚生年金部分に着目します。
 
厚生年金保険に原則20年以上加入期間のある人にはプラスされる年金があり、これを加給年金といいます。原則65歳になった時、要件に該当する家族がいると受け取れる年金で、分かりやすく年金の家族手当といわれることもあります。
 
配偶者であれば、配偶者自身の年金を受け取る(原則65歳)まで加給年金を受け取ることができますが、老齢厚生年金を繰下げすると受け取れないまま時期が過ぎてしまうこともあります。つまり、繰下げ待機している間は加給年金を受け取ることはできません。
 
繰下げは厚生年金保険部分と国民年金部分と両方、もしくはどちらか片方だけ繰下げることができます。65歳からの老齢厚生年金を遅らせる場合は、その間プラスとなる加給年金も受け取ることができません。しかしながら、国民年金である老齢基礎年金のみ遅らせるのであれば、加給年金を受け取ることができます(老齢厚生年金が全額停止された場合を除く)。
 
さらに、加給年金とセットで考える加算として振替加算があります。加給年金対象の配偶者が65歳になると配偶者の老齢基礎年金につく加算です。配偶者の生年月日により加算額が異なり、1966(昭和41)年4月2日以降生まれの配偶者には振替加算はありません。
 
これらの加算は、夫婦の厚生年金保険の加入期間も関係してきます。共働き世帯が増えている現在では、2人が厚生年金保険に20年以上加入しているケースも多くなっています。
 
お互いが厚生年金保険に20年以上加入し、老齢厚生年金の受給権が発生した場合、加給年金や振替加算がそもそもつかないということもあります。長く厚生年金保険に加入されている人は「一人前」とみなされるので、自分の年金を受け取りはじめると加算はつかなくなります。
 

まとめ

繰上げ・繰下げを検討する際は、単身者の人であれば、自身の健康や仕事との調和を、配偶者がいる場合には、お互いの生年月日や年金の加入期間と働き方を考慮し、年金の受け取る時期を考えてみてはいかがでしょうか?
 
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
 

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