3号不整合を放置してはいけない理由(1)そもそも3号不整合とは?
配信日: 2023.02.28
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
第3号被保険者は第2号被保険者の被扶養配偶者
国民年金の第2号被保険者の被扶養配偶者が、第3号被保険者です。主に会社員・公務員に扶養されている人(専業主婦・主夫、パートタイマー等)が該当します。
健康保険の扶養と同じく、年収130万円未満であるなど収入要件を満たせば第3号被保険者になることができます。そして、第3号被保険者期間は保険料納付済期間として、老齢基礎年金の受給のための資格期間に含まれ、また、その年金額も計算されることになります。
ただし、20歳以上60歳未満の人が第3号被保険者となりますので、20歳前や60歳以降は健康保険制度の扶養には入っても、年金制度の扶養には入りません。
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配偶者が退職した場合や65歳になった場合
会社員・公務員(第2号被保険者)である夫が退職すると、夫は第2号被保険者でなくなります(【図表1】A)。そうなると、それまで第3号被保険者だった妻は第3号被保険者になれません。夫の退職後は夫婦ともに第1号被保険者ですので、「2号から1号へ」(夫)、「3号から1号へ」(妻)の切り替え手続きが市区町村等の国民年金窓口で必要です。
また、夫が退職しなくても、65歳を迎え老齢年金が受給できるようになると、夫は引き続き働いて厚生年金の被保険者(最大70歳まで)にはなったとしても、国民年金としては第2号被保険者にはなりません。この場合も60歳未満の妻は夫の65歳到達を機に、第1号被保険者に切り替えなければなりません(【図表1】B)。
1号への切り替えをしていないと不整合に
夫の退職や65歳到達を機に、妻が第1号被保険者への切り替えをしないままでいると、3号不整合が発生することがあります。年金の被保険者期間は月単位で計算しますが、例えば、夫が月の途中で退職し、その月は夫も妻も第1号被保険者期間になるところを、妻が第3号被保険者期間のままであると、3号不整合となります(【図表2】)。
誤った記録のまま、もし【図表2】の8月の翌月(9月)始めに妻自身が第2号被保険者になると、1号への切り替えを忘れたまま、9月から2号(「3号から2号へ」。※2号への切り替え手続きは勤務先)になってしまうことにもなるでしょう。正しくない記録になってしまいますので、放置すると後々不利益を被ります。
3号から1号未納状態に
不整合で第3号被保険者となっていた期間は、年金事務所で手続きをすれば本来の第1号被保険者の期間に記録が訂正されます。訂正されると、【図表2】でいう「誤った記録」が「正しい記録」になります。そうすると、当該期間は第1号被保険者として国民年金保険料を納付しなければなりませんが、納付がないままでは未納状態になってしまいます。
国民年金保険料の納付は2年の時効があるため、納付しないまま納期限(翌月末日)から2年を過ぎると未納で確定してしまいます。
3号のままでは保険料納付済期間として老齢基礎年金が計算されるのに対し、1号の未納では年金額に反映されないため、その分の年金が少なくなり、また、受給資格期間にも含まれません(※2013年6月以前の当該時効消滅期間については届出により「特定期間」として受給資格期間には算入されます)。
このように、将来の年金の受給にも影響が出てしまいますので、不整合記録がないか夫婦でお互いの年金記録を確認することが大切です。
出典
日本年金機構 年金Q&A (国民年金 3号不整合記録関連)
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー