在職老齢年金で減額や支給停止された老齢厚生年金、後から支給してもらえるの?
配信日: 2023.03.02
本記事では、在職老齢年金の概要や年金額の計算方法を説明するとともに、「減額された年金は退職後に取り戻せるの?」という疑問にもお答えします。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
在職老齢年金の仕組み
在職老齢年金とは、老齢年金を受給しながら働く人の老齢厚生年金の金額と、給与やボーナスの金額の合計額が一定額を超えた場合に、年金が一部減額、または全額支給停止となる制度です。
在職老齢年金は、老齢年金を受給しながら働く人のうち、次のいずれかに当てはまる人に適用されます。
●70歳未満で厚生年金保険に加入している人
●70歳以上で厚生年金保険の適用事業所に勤めている人
在職老齢年金によって年金が減額や支給停止となるのは、老齢厚生年金等の基本月額(※1)と総報酬月額相当額(※2)の合計金額が47万円を超えた場合です。
※1:加給年金額を除く老齢厚生年金または退職共済年金(報酬比例部分)の月額
※2:当該月の標準報酬月額と当該月以前1年間の標準賞与額を12ヶ月で割った金額の合計額
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在職老齢年金による減額後の年金額の計算方法
老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円を超えた場合の、在職老齢年金による減額後の年金支給月額は、下記の計算式で算出します。
在職老齢年金による減額後の年金支給月額=老齢厚生年金等の基本月額-(老齢厚生年金等の基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2
例えば、老齢厚生年金の基本月額が15万円、総報酬月額相当額が40万円の場合、在職老齢年金によって調整された年金額は、次のとおりです。
基本月額15万円-(基本月額15万円+総報酬月額相当額40万円-47万円)÷2=11万円
このケースでは老齢厚生年金が4万円減額されます。ただし、老齢基礎年金は減額の対象にならないため、仮に老齢基礎年金が満額だとすると、約6万5000円を上乗せした17万5000円程度が受け取れる年金月額です。
在職老齢年金を受けている人の年金額の見直しタイミング
在職老齢年金で減額や支給停止を受けている人の支給停止額は月ごとに見直され、総報酬月額相当額が変わると、当月から減額や支給停止の金額が変更されます。
また、退職をした場合、翌月には年金の減額や支給停止が解除となります(退職後1ヶ月以内に厚生年金保険に再加入した場合を除く)。
また、在職老齢年金の対象者の厚生年金被保険者期間は次の2つのタイミングで年金額に反映される仕組みです。
●在職定時改定
●退職改定
それぞれ詳しく説明します。
在職中は「在職定時改定」で毎年見直される
65歳以上70歳未満の人の場合、毎年9月1日に厚生年金被保険者であれば、前年9月から当年8月までの厚生年金加入期間を反映して年金額を再計算し、翌月10月分の年金額から適用されます。これが、「在職定時改定」と呼ばれる制度です。
また、例外として、9月1日前に厚生年金保険被保険者の資格喪失後、9月1日を挟んで1ヶ月以内に再度厚生年金保険に加入した場合にも、在職定時改定の対象となります。
在職定時改定の結果、年金の支給停止額が変わることがあるため注意しましょう。
リタイア時には「退職改定」が行われる
退職をして1ヶ月が経過したときには、退職した翌月分から年金額が見直されます。これが「退職改定」です。
具体的には、年金額の減額や支給停止が解除されることに加えて、退職までの厚生年金保険加入期間のうち年金額に未反映の分を加算して、年金額が再計算されます。
また、70歳に到達して厚生年金被保険者資格を喪失したときにも、同様に年金額の見直しが行われます。
在職老齢年金の減額分はリタイア後に取り戻せる?
退職時には減額や支給停止の解除が行われますが、在職老齢年金で基準額を超えて減額や支給停止された年金は返還されません。
しかし、働いていた間の厚生年金保険被保険者期間を反映した年金額を受給できるようになります。
そのため、定年後に働かなかった場合や、減額や支給停止にならないように収入を抑えて働いた場合と比べると、リタイア後の年金収入は多くなるでしょう。
在職老齢年金の仕組みを理解しよう
在職老齢年金は、年金と働いて得た報酬の合計額が基準を超えると、年金が減額・支給停止される制度です。減額・支給停止を受けた年金は、退職しても返還されません。
しかし、在職老齢年金を受けながら働いた期間は年金額の算定に反映されるため、在職時に減額を受けたとしても、リタイア後の年金額は結果的にアップします。
制度の仕組みを理解して、自分に合った老後の働き方を検討しましょう。
出典
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
日本年金機構 在職中の年金(在職老齢年金制度)
日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部