50代主婦ですが熟年離婚した場合、私の年金はどうなりますか?

配信日: 2023.03.12 更新日: 2023.03.13

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50代主婦ですが熟年離婚した場合、私の年金はどうなりますか?
会社員の夫と婚姻関係にあった主婦が離婚した場合、婚姻期間中の厚生年金記録を分割し、分割した記録に基づく厚生年金を受け取ることができます。
 
本記事では、離婚時の年金分割制度について説明し、50代の主婦が会社員の夫と離婚した場合の年金分割に関して具体的に解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

離婚時の年金分割制度とは

離婚時の年金分割制度とは、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を離婚した当事者間で分割できる制度のことで、「合意分割制度」と「3号分割制度」の2種類があります(※1)。
 

1.合意分割制度とは

合意分割制度とは、平成19年4月1日以降に成立した離婚を対象として、婚姻期間中における当事者双方の厚生年金記録の合計額を、当事者双方の合意または裁判手続きで決めた案分割合(分割する割合)で分割できる制度です(※2)。
 

2.3号分割制度とは

3号分割制度とは、平成20年5月1日以降に成立した離婚を対象として、国民年金の第3号被保険者(会社員など厚生年金の被保険者に扶養される配偶者)であった方からの請求により、平成20年4月1日以降の婚姻期間中の第3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ、当事者間で分割できる制度で、双方の合意は必要ありません(※3)。
 

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離婚時の年金分割の具体例

50代の主婦が会社員の夫と平成20年5月1日以降に離婚した場合、離婚した妻が専業主婦であったケース、夫婦共働きのケース、離婚した妻が自営業のケースにおける、離婚時の年金分割について具体的に説明します。
 

1.婚姻期間のすべてが専業主婦だった方の年金分割

婚姻期間のすべてが国民年金の第3号被保険者(専業主婦)であった妻が離婚した場合の厚生年金記録は、平成20年3月31日までは合意分割制度による案分割合で、平成20年4月1日以降の厚生年金記録は3号分割制度により2分の1ずつで、それぞれ分割されます。
 
図表1


 

2.夫婦共働きの期間があった方の年金分割

図表2のとおり、婚姻期間中に夫婦共働きの期間と第3号被保険者であった期間が混在する妻が離婚した場合の厚生年金記録は、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間は3号分割制度により2分の1ずつで、それ以外の期間については当事者双方の厚生年金記録の合計額を合意分割制度により決定された案分割合で、それぞれ分割されます。
 
図表2


 
合意分割の対象となる厚生年金記録が妻より夫のほうが多く、合意された案分割合が2分の1であった場合は、図表3のとおり夫の厚生年金記録の一部が妻に分割されます。
 
図表3


 

3.妻が自営業(国民年金の第1号被保険者)であった方の年金分割

婚姻期間のすべてが国民年金の第1号被保険者(自営業など)であった妻が離婚した場合の厚生年金記録は、合意分割制度により決定された案分割合で分割されます。
 
図表4


 

離婚に伴う年金分割の流れ

離婚に伴う年金分割を進める際の流れは、「情報提供の請求」、「年金分割の割合の決定」および「年金分割の請求」の順になります(※2)。
 

1.情報提供の請求

年金分割に必要な情報の提供を当事者双方または一方から請求することができます。提供される情報は、分割の対象となる期間、その期間における当事者双方の標準報酬月額や標準賞与額などの厚生年金記録および案分することができる範囲などになります。
 
請求は、合意分割の請求期限である離婚から2年以内に、以下の書類を近くの年金事務所に提出して行います。

●年金分割のための情報提供請求書
●基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにすることができる書類
●婚姻期間を明らかにすることができる戸籍謄本などの書類

 

2.年金分割の割合の決定

合意分割を請求する場合は、年金分割の請求に先立ち当事者間の合意または裁判手続きにより年金分割の割合を決定します。
 

3.年金分割の請求

(1)合意分割の請求
合意分割の請求は、離婚成立後2年以内に以下の書類を年金事務所に提出します(※2)。

●標準報酬改定請求書
●基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにすることができる書類
●婚姻期間および生存を明らかにすることができる戸籍謄本などの書類
●年金分割の割合を明らかにすることができる書類

なお、合意分割の請求が行われた場合、婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれる場合は、合意分割と同時に3号分割の請求があったものとみなされます。
 
(2)3号分割の請求
3号分割の請求は、離婚成立後2年以内に以下の書類を年金事務所に提出します(※3)。

●標準報酬改定請求書
●基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにすることができる書類
●婚姻期間および生存を明らかにすることができる戸籍謄本などの書類

3号分割の請求は、当事者双方の合意は必要ありません。
 

まとめ

会社員の夫と離婚した妻は、婚姻期間の厚生年金記録の分割を請求することができます。分割には「合意分割制度」と「3号分割制度」の2通りの方法があり、「合意分割制度」より「3号分割制度」が優先して適用されます。
 
年金の分割は、当事者間の合意や裁判手続きによって分割割合が決定されていたとしても、離婚が成立してから2年以内に年金事務所に対して分割の請求手続きをしなければ有効とはなりません。また、分割された厚生年金記録に基づく老齢厚生年金は、妻自身が年金受給開始年齢となり年金の請求をするまでは支給されませんので、ご注意ください。
 

出典

(※1)日本年金機構 離婚時の年金分割
(※2)日本年金機構 離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)
(※3)日本年金機構 離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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