将来を担う現役学生は、公的年金をどうとらえているのか!?『大学生の年金意識調査の実態と家庭でのマネーリテラシー』

配信日: 2018.07.05 更新日: 2019.01.10

この記事は約 7 分で読めます。
将来を担う現役学生は、公的年金をどうとらえているのか!?『大学生の年金意識調査の実態と家庭でのマネーリテラシー』
20歳になると、国民年金の保険料の支払いが始まりますが、近年、大学の進学率も高くなったので、20歳といっても学生のうちはまだ社会人という意識は薄いのではないでしょうか。
 
先日、日大ラグビー部、学生の記者会見の勇姿が、威風堂々としており惚れ惚れしましたが、大人の証・責任において「年金の支払い義務」を遂行してもらい、年金について理解を深めてもらいたいと思います。
 
家族、お知り合いへ、ぜひシェアしてください。
 
寺門美和子

Text:寺門美和子(てらかど みわこ)

ファイナンシャルプランナー、相続診断士

公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー
大手流通業界系のファッションビジネスを12年経験。ビジネスの面白さを体感するが、結婚を機に退職。その後夫の仕事(整体)で、主にマネージメント・経営等、裏方を担当。マスコミでも話題となり、忙しい日々過ごす。しかし、20年後に離婚。長い間従事した「からだ系ビジネス」では資格を有しておらず『資格の大切さ』を実感し『人生のやり直し』を決意。自らの経験を活かした夫婦問題カウンセラーの資格を目指す中「離婚後の女性が自立する難しさ」を目のあたりにする。また自らの財産分与の運用の未熟さの反省もあり研究する中に、FPの仕事と出会う。『からだと心とお金』の幸せは三つ巴。からだと心の癒しや健康法は巷に情報が充実し身近なのに、なぜお金や資産の事はこんなに解りづらいのだろう?特に女性には敷居が高い現実。「もっとやさしく、わかりやすくお金や資産の提案がしたい」という想いから、FPの資格を取得。第二の成人式、40歳を迎えたことを機に女性が資産運用について学び直す提案業務を行っている。
※確定拠出年金相談ねっと https://wiselife.biz/fp/mterakado/
女性のための電話相談『ボイスマルシェ』   https://www.voicemarche.jp/advisers/781 

少子高学歴化がますます進んでいる

今年成人を迎える人は「平成9年生れ」になるそうで、総務省の発表によると、その数123万人だそうです。
 
これから年々成人を迎える人数は減少して行きます。また、文部科学省の発表によると、平成23年度の高専・専門学校・短大・大学への進学率は79.5%。昭和60年に20歳になった私の世代は、高専以上の進学率が50%でしたので、大きく変化しています。
 
確かに30年前は、まだ女子の4年制の大卒数は少なかったですね。また、全体の世代人口は30年前に比べて減少していますが、高専以上卒業者のグロス人数は増加しています。
 
それだけ、10代で厚生年金に加入している人も少なくなっているのでしょう。
 
年金が社会問題になっている今、意外にも今後年金を支えて行く大学生への意識調査は少ないようですが、『日本年金学会』が大学生に意識調査をした事例をみつけました。
 

【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資

【PR】J.P.Returns

おすすめポイント

・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる

大学生がとらえる年金実態

このアンケートは、2017年12月の学会で発表されたもので、首都圏に通う大学1年生から院生まで、約1000人に行ったようです。
 
なんと99.5%の回収率があったとのこと。場所もカフェテリア等、憩いの場でのランダムな調査だったそうで、非常に日常的で偏りがない調査だと感じました。その中で「年金の満足度」を聞いたところ、
 
「不満」「どちらかと言えば不満」 53.3%
「どちらとも言えない」      37.6%
「満足」「どちらかといえば満足」  8.9%
 
という結果だったそうです。
 
多くの学生=将来の日本を担う人が、年金には不満を持っているようですね。
 
不満の9割は「将来年金がもらえるかどうか不安」と回答されたそうで、このような話は、私の40~50代のお客様からも聞かれますが、日本全体として年金に対して「負」のイメージが大きいようです。
 
そのほか「もらえる額に世代格差がある」「年金の運営が不透明」という回答にも70%の人が「そう思う」と回答をしたそうです。
 
私自身もFPになるまでは、そのような感情を抱いていました。確かに、現在75歳以上の人は年金によるリターンが大きいといわれています。
 
私の自論としては「第2次大戦で苦労した人には年金が手厚くてもよいのでは」と思うのですが、現役の学生には通じないのかも知れません。
 
また、肯定的な意見と「どちらとも言えない」と回答した人たちは、「先のことでピンとこない」と75%の人が話したそうです。
 
実際私も、30代前半の起業家の人に年金の話をしたところ、ピンときていな様子でしたから無理もないでしょう。振り返って自分が30代の頃、年金のことなど深く考えていませんでした。
 
肯定的な意見では、少数派の満足感を感じている人たちが「国が行っているので安心」という回答が3割あったとか。私もFPの現場では「公的年金は終身なのですよ」ということをかなりアピールしています。
 
50代あたりから「終身保障」はとてもありがたいと気がつくのですが、若いとまだ実感がないかもしれませんね。
 

大学生の年金知識

上記の質問の中に、「年金に関する知識問題」組み入れたところ、全問正解はなんと1名。全体の0.1%だったとか。しかし、全問不正解が211名もおり、全体の21.8%にものぼったそうです。
 
そして、6問中全問不正解と、2問まで正解の人で80%を占めたという。学歴のある現役の大学生が! と驚きますが、日本のマネーリテラシー教育の遅れを痛感致します。
 
さらに、間違えた内容が興味深く、年金の保険料の支払額は多く答え、給付額は少なく答えていることから「年金悪伝説」により、間違った知識を得ているようで、公的年金アドバイザーの資格を持つ身としてはとても悲しく思い、情報発信を頑張らなくてはいけないと自分に誓ったしだいです。
 
この間違った年金情報の入手ルートはテレビと答えた人が多かったそうで、テレビがネガティブな情報発信をしているのが、大学生の年金に対する不満や不安を高めているようです。
 
それを打ち消す、我々FPのパワーが試されているのでしょうか。
 

大学生の年金への入口『学生納付の特例制度』

この春、新入社員の男性が企業型確定拠出年金の加入コンサルティングに来ました。その時、相談者は研修会の真っただ中でしたが、周りの同期の人たちは年金に対する知識も興味もなかったそうです。
 
上記アンケートと同じような結果でした。
 
学生にもわかりやすく年金制度を伝えていかないと、と感じたのはこの経験からなのですが、まずは大学生にとって年金への登竜門になるのは『学生納付の特例制度』と思います。
 
厚生労働省年金局の報告によると、平成27年度末で学生納付特例者の人数は172万人。平成22~26年度の数値は±6万人でした。
 
20歳以上である大学生の人数の詳細はわかりませんが、文部科学省のデータによると平成22、23年の大学入学者数は100万人位なので、全体の40%前後は制度を利用しているのかもしれません。
 
この制度は、学生からの申請により保険料が猶予される制度(年収制限がある)で、将来の受給権の確保や万が一の事故などにより障害を負ったときの、障害基礎年金の受給資格を確保できるので、アクティブな学生は備えておくとよいと思います。
 
ここでいう学生とは、大学(大学院)、短大、高等学校、高等専門学校、専修学校、各種学校(学校教育法で規定されている1年以上の課程)に在籍する学生です。
 

<所得の目安>

118万円+{(扶養家族の数)×38万円}で計算した額。申請できる期間や書類などの詳細、日本年金機構のHPを参照ください。
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150514.html
 
学生の納付特例の期間については、10年以内であれば保険料をさかのぼって納めることができます。また学生納付特例期間は、老齢年金の受給資格10年(120カ月)に含まれます。
 
「追納するか否か」で悩む学生も多いと思いますが、私は追納をお勧めします。なぜなら、今の学生たちが老年期を迎える2060年の平均寿命は、内閣府の発表によると男性84.19歳(2017年発表80.98歳)、女性90.93(2017年発表87.14歳)といわれています。
 
また日本経済新聞の発表では、2050年に100歳以上の人は53万人になるといわれています(2017年発表6万7000人)。
 
現役学生が100歳になる2100年の頃に、どれだけの人が100歳を迎えるかは未知数ですが、長生きすればするほど、終身保障の公的年金は有難い存在です。
 
1年あたりの加入価値は約2万円なので、2年間の払い込みで約4万円年金額を増やすことができます。たかが2年間けちってしまうより、満額支給されるほうが将来安心なのではないでしょうか?
 
65歳から支給されたとして、75歳までに約40万円、85歳では約80万円増加されるのですから。
 
また、学生の追納は親がすることも可能です。ただし、生計を1つにしている間だけなので、独立・結婚前に済ませてください。
 
また特例制度を使わずに、親が支払えば、親の「社会保険料控除」として申告をすることができます(ただし、生計を1つにしている場合、必ずしも同居を要件としていない)。
 
前納の割引制度を利用すると平成30年度では、1年度分で3480円、2年度分で1万4420円もお得です。
 
もし、両親が支払いをする際は、ぜひお子さんと話し合いをしてからにしてください。このような場面がマネーリテラシー教育の現場になると思います。
 
Text:寺門 美和子(てらかど みわこ)
ファイナンシャルプランナー/公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集