正社員と契約社員、それぞれ平均的な給与で働いていたら「老後の年金」はどのくらい違う?

配信日: 2023.04.22

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正社員と契約社員、それぞれ平均的な給与で働いていたら「老後の年金」はどのくらい違う?
昨今、働き方は多様化してきています。働き方によって、将来もらえる年金にどのくらいの差があるのでしょうか? この記事では、正社員と契約社員の平均的な給与から、老後の年金にどのくらいの違いが出てくるのかを解説します。
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
https://miraiken.amebaownd.com/

正社員と契約社員の違い

雇用形態を分類する際、正社員が「正規雇用」となるのに対し、契約社員はパートや派遣社員と同じように「非正規雇用」となります。正社員と契約社員の大きな違いは、雇用期間にあるといえるでしょう。
 
無期雇用となる正社員は、一度雇用契約を結べば基本的に定年まで働き続けることができます。一方で、有期雇用となる契約社員は、契約期間満了後も引き続き同じ職場で働く場合、勤務先との契約更新が必要となります。
 
契約社員については、1回の契約で雇用期間を最長3年(一部のケースでは5年)までとすることができます。しかし、実際には雇用期間を1年とし、1年ごとの契約更新となる場合も少なくないようです。
 
ほかにも、正社員と契約社員には次のような違いが見られます。
 
図表1
 

正社員 契約社員
雇用期間 無期雇用 有期雇用
仕事の範囲 担当業務以外の仕事をする場合もある 契約で定めた範囲の仕事
勤務地 転勤の可能性あり 転勤なし
給与制度 年俸制や月給制が多い 月給制や時給制が多い
昇給制度 あり 企業による
賞与 企業による(あることが多い) 企業による(ないことが多い)
退職金制度 企業による(あることが多い) 企業による(ないことが多い)
福利厚生 あり 内容が制限される場合がある

 
※筆者作成
 

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正社員と契約社員、それぞれの平均的な給与額


 
国税庁による「令和3年分 民間給与実態統計調査」によれば、正社員の平均年収が508万円であるのに対し、正社員以外は198万円となっています。
 
この調査における「正社員以外」には、契約社員だけではなくパートや派遣社員なども含まれています。そのため、契約社員に限定した給与については、東京都産業労働局による「令和元年度 契約社員に関する実態調査」を参考にします。
 
同調査によれば、契約社員の平均年収は363万円となっています。ただし、同調査の対象は都内事業所となっており、地方の賃金は首都圏よりも低い傾向にあることから、全国の契約社員の年収はこれより低くなる可能性があります。
 
また、同調査のなかで正社員に比べた契約社員の賃金について、「正社員より低い」との回答が事業所調査では58.3%、従業員調査では80.2%となっています。以上の調査から、正社員と契約社員では、一般的に契約社員の給与のほうが低い傾向にあることが分かります。
 
契約社員が正社員より給与が低くなる要因としては、次のようなものが考えられます。
 

●給与が時給制の場合、勤務時間によって収入に差が出る
●賞与が正社員に比べて低いか、もしくはない
●昇給や昇進などが契約期間中は基本的にないため、昇給や昇進のチャンスが少ない

 
ただし、契約社員でも管理職や専門的な技術職に就くことで、同年代の社員よりも収入が高くなる可能性もあります。図表2は、業務内容別における契約社員の平均年収を表しています。
 
図表2
 

 
出典)東京都産業労働局 令和元年度 契約社員に関する実態調査
 

老後にもらえる年金額

正社員であっても契約社員であっても社会保険の加入条件は等しく、「正社員」「契約社員」といった区分は無関係です。厚生年金保険に加入している会社、工場、商店、船舶などの適用事業所に常時使用される70歳未満の社員であれば、厚生年金保険に加入することになります。
 
先に見てきた調査結果の平均年収を基に、正社員と契約社員が老後65歳以降にもらえる年金額について試算してみます。試算をするうえでの仮定として、国民年金には20歳から加入し、就業開始年齢を大卒後22歳、そこから60歳まで働くものとします。また、現時点での年齢を40歳とします。配偶者などの扶養者については考慮しません。
 
図表3
 

 
※筆者試算(100未満切り捨て)。老齢基礎年金額は令和5年4月分からの数字を使用
 
試算結果では、月あたり2万5000円ほどの差が生じています。年間では約30万円の差になります。年収の差が年金額の差にも影響することが分かります。
 

有期雇用から無期雇用への転換

契約社員には、雇用期間を無期に変更できる「5年ルール」が存在します。同じ勤務先との間で有期雇用契約が5年を超えて更新された場合、本人からの申し込みにより無期雇用契約に転換することが可能となります。
 
正社員と契約社員の大きな違いである雇用期間の定めですが、このルールによって、雇用期間満了のたびに更新といった手続きを踏まずとも同じ職場での仕事を継続できるようになり、安定した収入を得ることが期待できます。
 
ただし、このルールでは「雇用期間が無期になる」というだけで、正社員として扱われるようになるとは限らないことに注意しましょう。
 

まとめ

将来の年金額も含めた収入面で見ると、正社員のほうが良さそうに思えますが、その分、仕事の範囲が広がることや責任が重くなることも考えられます。
 
一方で、スキルアップや経験を得ることを目的として、契約で仕事内容を明確にできる契約社員を選ぶ人もいるでしょう。働き方を選ぶ際は、収入だけではなく自分のライフスタイルも考慮するようにしましょう。
 
なお、契約社員として一定期間だけ働くことを選択した人でも、働き続けるうちに職場での働きやすさや仕事のやりがいなどに心を引かれ、同じ職場でより長く働くことを希望する場合もあるかと思われます。そのような場合に備え、正社員登用や無期転換の実績がある会社を選ぶようにするのもいいかもしれません。
 

出典

厚生労働省 労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール

国税庁 令和3年分 民間給与実態統計調査

東京都産業労働局 令和元年度 契約社員に関する実態調査

日本年金機構 老齢年金(受給要件・支給開始時期・年金額)

厚生労働省 無期転換ルールについて

 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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