更新日: 2023.04.24 その他年金

【2023年度の年金】すべて67歳以下と68歳以上に分かれる?(1)

執筆者 : 井内義典

【2023年度の年金】すべて67歳以下と68歳以上に分かれる?(1)
2023年度の年金額は2022年度と比べて増えることにはなりますが、67歳以下(新規裁定者)と68歳以上(既裁定者)で異なるとされています。
 
つまり、年齢によって年金方法が2つに分かれていることになります。しかし、年金の種類によって2つに分かれるものと、1つのものが異なっています。年金の種類ごとに、全4回で取り上げます。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

新規裁定者と既裁定者の年金

最初に、年金額は経済状況によって毎年度改定されることになっています。2022年度までの年金の計算方法については、受給する本人の年齢が異なっていても同じでした。
 
しかし、2023年度の年金額改定に当たって、2023年度は新規裁定者(当該年度で67歳以下である人)、既裁定者(当該年度で68歳以上である人)、それぞれ異なる改定がされることになり、年齢によって計算方法が2つに分かれることになっています。
 
これは「名目手取り賃金変動率」が「物価変動率」を上回っていることにより、67歳以下と68歳以上を分けて改定するルールがあることによります。
 
新規裁定者は名目手取り賃金変動率(+2.8%)を基準にして年金額が改定され、既裁定者は物価変動率(+2.5%)を基準にして改定されます。ここからさらにマクロ経済スライドによる調整(前年度・前々年度の未調整分も含む)もあり、結果、2023年度は2022年度と比べ、新規裁定者が+2.2%、既裁定者が+1.9%です。
 
老齢基礎年金(満額)・障害基礎年金(障害等級2級の場合)・遺族基礎年金(基本額)は、2022年度が77万7800円だったのに対し、2023年度は新規裁定者が79万5000円、既裁定者は79万2600円です(図表1)。
 
2022年度は、78万900円の法定額に改定率0.996を掛けた額77万7800円(100円未満四捨五入)でしたが、2023年度は新規裁定者が+2.2%、既裁定者が+1.9%であることから、法定額に掛ける改定率はそれぞれ1.018(2022年度の0.996×1.022)、1.015(2022年度の0.996×1.019)になり、それぞれの額は79万5000円と79万2600円です。
 


 
また、厚生年金の加入記録で計算される老齢厚生年金(報酬比例部分・経過的加算額)、障害厚生年金、遺族厚生年金についても、同じ加入記録でも新規裁定者と既裁定者で年金額は異なることになります。
 
しかし、その一方で、新規裁定者と既裁定者で分かれていないものもあります。
 

加給年金は年齢に関係なく同じ額

老齢厚生年金や障害厚生年金(障害等級1級・2級)には、生計を維持されていた家族がいることによる加給年金の加算があります。老齢厚生年金の加給年金は65歳未満の配偶者や、18歳年度末までの子(一定の障害がある場合は20歳未満の子)がいる場合、障害厚生年金の加給年金は65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます。
 
老齢厚生年金あるいは障害厚生年金を受給し、加給年金が加算される人の年齢が67歳以下でも68歳以上でもその加算額は同じです。加算額については図表2のとおりで、これは新規裁定者の額として計算・支給されます。つまり、68歳以上であっても既裁定者の額は基準としません。
 


 
このように、新規裁定者と既裁定者で計算方法が分かれていない年金があります。次回、第2回でも他の加算額の計算方法について取り上げることとします。
 

出典

厚生労働省 令和5年度の年金額改定についてお知らせします
日本年金機構 加給年金額と振替加算
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
 

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