更新日: 2023.05.15 その他年金
「年収500万円」の夫が死亡。妻と子どもは「遺族年金」をいくら受け取れる?
本記事では、年収500万円の夫が死亡した場合、パート勤務の妻と子どもが受給できる遺族年金について解説します。
執筆者:齋藤彩(さいとう あや)
CFP
遺族年金とは?
国民年金または厚生年金に加入していた人が死亡した場合、その人に生計を維持されていた遺族に、遺族年金が支給されます。
国民年金からは遺族基礎年金、厚生年金からは遺族厚生年金が支給され、死亡した人の加入状況によっていずれか、あるいは両方を受給することができます。
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遺族基礎年金
国民年金に加入していた人が死亡した場合、その人に生計を維持されていた「子どものいる配偶者」もしくは「子ども」に遺族基礎年金が支給されます。子どもがいない場合は支給されません。「子ども」は18歳になる年の3月31日まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1級あるいは2級の状態にあることが必要です。
遺族基礎年金の年金額は図表1の通りです。
【図表1】
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)を基に筆者作成
子どもの加算は1人目・2人目の場合はいずれも22万8700円、3人目以降は7万6200円です。また、子どもが受け取る場合は、図表1の金額を子どもの数で割った額が1人あたりの額となります。
遺族厚生年金
厚生年金に加入していた人が死亡した場合、その人に生計を維持されていた遺族に遺族厚生年金が支給されます。支給される遺族は次のうち最も優先順位が高い人です。
(1)子どものいる妻
子どもがいない妻の場合、30歳未満であれば5年間に限り遺族厚生年金が支給されます。
(2)子ども
18歳になる年の3月31日まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1級あるいは2級の状態にあることが必要です。
(3)妻死亡時に55歳以上である夫
支給されるのは60歳以降です。受給資格を満たしていても60歳までは受給できませんが、遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り60歳前でも受給できます。
(4)死亡時に55歳以上である父母
支給されるのは60歳以降です。
(5)孫
18歳になる年の3月31日まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1級あるいは2級の状態にあることが必要です。
(6)死亡時に55歳以上である祖父母
支給されるのは60歳以降です。
まとめると、図表2のようになります。
【図表2】
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
また、遺族厚生年金の年金額は、死亡した人が生存していれば受給できる老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額になります(図表3)。
【図表3】
日本年金機構 は行 報酬比例部分を基に筆者作成
標準報酬月額とは、厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料を算出するときに基準となる額のことです。給与などの報酬を一定の等級に区分し、等級に応じた保険料を支払います。
厚生年金に加入していた期間が長いほど遺族厚生年金から支給される年金額が多くなります。ただし、若くして亡くなった場合に遺族が困窮することを防ぐため、厚生年金の加入期間が300ヶ月(25年)未満の場合は、300ヶ月(25年)加入していたとみなして支給額が計算されます。
年収500万円の夫が死亡したら遺族年金はいくらもらえる?
正社員の夫とパート勤務の妻、子どもが1人いる家庭の場合、夫が死亡すると遺族年金がいくら支給されるのか、計算してみます。
・夫婦ともに40歳(1983年生まれ)、子どもは10歳
・夫は年収500万円(年棒制、平均標準報酬額:42万円)
・国民年金保険料は夫婦ともに全額納付
・夫は2005年4月から2023年3月までの216ヶ月(18年)厚生年金に加入
遺族基礎年金
遺族は妻と子ども1人であるため、遺族基礎年金の支給額は79万5000円+22万8700円=102万3700円となります。子どもが18歳になる年の3月31日まで支給されます。
遺族厚生年金
標準報酬月額は42万円であり、厚生年金に加入したのは2003年以降です。また、厚生年金への加入が300ヶ月(25年)に満たないため、300ヶ月加入したとみなして、次のように計算します(小数点以下四捨五入)。
(42万円×5.481/1000×216ヶ月)×300ヶ月/216ヶ月×3/4=51万7955円
遺族基礎年金と遺族厚生年金の合計
遺族基礎年金と遺族厚生年金の合計は、次の通りです。
102万3700円+51万7955円=154万1655円
年収500万円の夫が死亡した場合、遺族に1ヶ月あたり約12万8500円支給される計算です。
※実際の支給額は状況によって異なる場合があります。
まとめ
本記事では、遺族基礎年金と遺族厚生年金について解説し、「年収500万円の夫が死亡した場合、遺族年金がいくら支給されるか」について解説しました。
遺族年金は一家の大黒柱に万が一のことがあった場合、遺族の生活を支える大切な制度です。ただし、遺族年金だけでは毎日の生活費や子どもの教育費などのすべてをカバーすることは難しいと考える場合には、生命保険への加入や資産運用といった選択肢を含め、もしもの事態に備える資金計画をできるだけ早めに策定するとよいでしょう。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 は行 報酬比例部分
全国健康保険協会 標準報酬月額・標準賞与額とは?
※2023/5/15 記事を一部修正いたしました。
執筆者:齋藤彩
AFP