年金を「66歳以降」に受け取る予定の人が死亡。受け取れなかった分は「未支給年金」になる?
配信日: 2023.05.09 更新日: 2023.07.14
亡くなった後に支給される場合、遺族のうちの誰がどのような名目で、どのように計算された金額を受け取れるのでしょうか? 本記事では、年金「繰下げ受給」待機中の人が亡くなった場合の「未支給年金」について解説します。
執筆者:福嶋淳裕(ふくしま あつひろ)
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
リタイアメントプランニング、老後資金形成を得意分野として活動中の独立系FPです。東証一部上場企業にて、企業年金基金、ライフプランセミナー、DC継続教育の実務経験もあります。
未支給年金とは
「年金を受給中の人」が亡くなったとき、「まだ受け取っていない年金」や、「亡くなった日より後に振り込まれた年金」のうち「亡くなった月の分までの年金」は遺族が受け取ることができます。
これを「未支給年金」といいます。年金を受給していた親が亡くなったときに役所で手続きした経験がある人など、未支給年金を請求できることを窓口で教えてもらった人も多いでしょう。
なお未支給年金は、遺族基礎年金や遺族厚生年金などの「遺族年金」とは異なります。遺族年金を請求できる遺族がいる場合は別の請求手続きが必要です。
未支給年金を受け取れる遺族
亡くなった人と生計を同じくしていた遺族のうち、未支給年金を受け取れる人と受け取れる順位は「配偶者」「子」「父母」「孫」「祖父母」「兄弟姉妹」「3親等内の親族」です。
受給要件は亡くなった本人と同居していたり、別居でも仕送りを受けてたりした場合、つまり「生計同一」だけです。対象となる遺族の範囲も広いため、生計同一だった家族・親族がいれば、通常は問題なく請求できます。
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繰下げ受給(繰下げ増額)とは
老齢基礎年金および老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取ることができます。ただし本人が希望すれば、受給開始の時期を66歳以降75歳までの間に遅らせて、受け取る年金の額を増やすことができます。
これを「繰下げ受給」といいます。受給開始の時期を1ヶ月遅らせるごとに、受け取る年金の額は0.7%ずつ増えます。
・例1:5年遅らせて70歳から受け取る場合、42%増額(0.7%×60ヶ月)。
・例2:10年遅らせて75歳から受け取る場合、84%増額(0.7%×120ヶ月)。
年金を受け取り始めていない人が亡くなった場合は?
「年金を増やすために繰下げ受給を待機していた」「単に請求手続きを失念していた」などの事情で老齢年金を受け取り始めていない人が亡くなった場合、亡くなった人が受け取るはずだった年金はどうなるのでしょうか?
この場合、亡くなった人が受け取るはずだった年金は、亡くなった人と生計を同一にしていた遺族の請求に基づき、未支給年金として支給されます。
ただし未支給年金の支給額は、「亡くなった人に老齢年金の受給権が発生した時点(65歳)から、亡くなるまでの期間に支給すべきであった本来の額」で計算された老齢年金の合計です。
亡くなった人に繰下げ受給の意思があったとしても、実際に繰下げ受給を申し出る前の死亡であることから、遺族に支給される未支給年金に繰下げ増額は行われません。
未支給年金は、「年金を受給中の人」が亡くなったときだけでなく、「年金を受け取り始めていない人」が亡くなったときにも適用される、いわば「死亡時の年金清算」の仕組みといえます。
ただし、繰下げ受給の請求を、遺族が代わって行うことはできません。また、未支給年金のうち、遺族が請求した時点から5年以上前の年金は、時効により受け取れない点にも注意が必要です。
まとめ
老齢年金の受け取り開始を遅らせて年金の額を増やす「繰下げ受給」をするつもりで、年金の請求手続きを待機していた人が亡くなった場合、亡くなった人が受け取るはずだった年金は、生計同一だった遺族が「未支給年金」として受け取れます。
ただし「繰下げ増額」は適用されず、亡くなった人が本来65歳から受け取っていたであろう額が一括で支給されます。
出典
日本年金機構 年金を受けている方が亡くなったとき
日本年金機構 年金の繰下げ受給
執筆者:福嶋淳裕
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)