年金の「5年前繰下げみなし増額」制度、適用されない場合とは?(2)
配信日: 2023.05.16
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
70歳を過ぎて71歳になる前にさかのぼることも可能
通常の繰下げ受給は66歳・8.4%(0.7%×12ヶ月)増額からでないとできません。66歳0ヶ月から75歳まで1ヶ月単位で繰下げが可能となっていますが、繰下げ受給したい場合、65歳で年金の受給する権利が発生して、まず66歳までの1年は待機することになります。
一方、5年前繰下げみなし増額については70歳を過ぎれば71歳前でも可能となりますので、例えば、70歳10ヶ月の時に5年前にさかのぼり、65歳10ヶ月・7%のみなし増額も可能となっています(【図表1】)。
つまり、繰下げみなし増額では、通常の繰下げではなかった、65歳1ヶ月繰下げ・0.7%増額~65歳11ヶ月繰下げ・7.7%増額という扱いがあります。
70歳まで在職していた人が、70歳を少し過ぎてから手続きすることもあるかと思いますが、本来請求をするとこのようにその5年前の日にさかのぼります。
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80歳まで手続きしていないとみなし繰下げは対象外
65歳で受給できる年金を、80歳(受給権発生から15年)になっても繰下げ待機していた場合は5年前繰下げみなし増額の対象となりません。さかのぼって受給しても、繰下げみなし増額のない年金を過去5年分受給できるに過ぎませんので、65歳以降長期にわたる年金が時効消滅します(【図表2】(1))。
一方、通常の繰下げ受給もできます。ただし、繰下げ受給自体が75歳までのため、84%増額の年金で受給することになります。また、75歳から5年を過ぎている場合は、5年前まではさかのぼって84%の年金が受給できますが、5年を過ぎた分については時効消滅します(【図表2】(2))。
【図表2】のように80歳過ぎまで待機していた場合は、(1)の本来請求よりも(2)の繰下げ受給をしたほうが受給額も多くなります。実際、80歳まで年金の手続きをしていない人については非常に少ないかもしれませんが、自分が受け取っている年金や受け取る権利のある年金は何かを確認し、必要な手続きは早く済ませるようにしたいところでしょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー