更新日: 2019.01.10 国民年金

学生の内では納めることが難しい国民年金保険料はどうなる?(3)学生納付特例期間の障害年金・遺族年金への影響

執筆者 : 井内義典

学生の内では納めることが難しい国民年金保険料はどうなる?(3)学生納付特例期間の障害年金・遺族年金への影響
前回第2回目では、学生納付特例を申請した場合の将来の老齢年金に関する影響を見ました。
 
では、障害年金や遺族年金についてはどうなるのでしょう。
 
井内義典

Text:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

保険料の納付要件が問われる

もし、病気やケガが原因で障害が残った場合、障害年金を受給できる場合があります。また、もし自身が亡くなった場合に残された遺族がいれば、遺族に遺族年金が支給されることがあります。
 
しかし、それには保険料の納付要件が問われますので、納付要件が満たせない場合は障害年金や遺族年金が支給されません。
 

障害年金の保険料の納付要件とは

国民年金からの障害基礎年金を受けるためには、
(1)初診日(障害の原因となる病気やケガで初めて病院等で診療を受けた日)の前日において、初診日の前々月までの被保険者期間で保険料の納付と免除の期間が3分の2以上あること。あるいは、
(2)初診日の前日において、初診日の前々月までの直近1年間に保険料未納期間がないこと(平成38年度末までの特例。初診日時点で65歳未満である場合に限定)、いずれかを満たす必要があります【図表1】。


 
「初診日の前日」時点での保険料納付状況を見ますので、初診日の当日になってまだ納めていない保険料を慌てて納めても、納付要件における納付月数には認められません。
 
学生納付特例の期間については、納付要件の免除期間に算入することができますが、初診日の前日までに学生納付特例の申請を行っておく必要があります。
 
申請手続きをしていないまま、病気やケガが発生すると、未納期間扱いのまま納付要件を満たせず、障害年金の支給対象となる障害状態にあっても年金が受給できない可能性があります。もしもの時に備え、申請手続きだけは行っておくほうがよいでしょう。
 

遺族年金の保険料の納付要件も考え方は同じ

自身が亡くなった場合、残された遺族への遺族年金制度があります。国民年金の遺族基礎年金の場合、高校卒業まで(一定の障害がある場合は20歳未満)の子どもがいることが条件です。
 
学生中に亡くなる場合や、そういった子どもがいることは少ないでしょうが、その後の将来にもしものことがあった際、納付要件を満たしていないと遺族が遺族基礎年金を受けられないことにもなります。
 
遺族基礎年金の場合、

(1)死亡日の前日において、死亡日の前々月までの被保険者期間で納付と免除の期間が3分の2以上あること。あるいは、
(2)死亡日の前日において、死亡日の前々月までの直近1年間に保険料未納期間がないこと(平成38年度末までの特例。死亡日時点で65歳未満である場合に限定)、という保険料納付要件があります。
 
(1)(2)いずれかを満たす必要があります【図表2】。ただし、中高齢者で、すでに老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある人は、この納付要件は必要ありません)。
 


 
先述の障害年金の納付要件での、初診日を死亡日に置き換えて考えれば良いでしょう。死亡日の前日までに学生納付特例の申請をすれば、納付要件の免除期間に算入されます。
 
Text:井内 義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

ライターさん募集