更新日: 2023.06.02 その他年金

年金受給前に亡くなったら、支払ってきた分はどうなる? 代わりに遺族が受け取れる?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

年金受給前に亡くなったら、支払ってきた分はどうなる? 代わりに遺族が受け取れる?
毎月欠かさず年金保険料を納めたとして、受け取り前に亡くなったらそのお金はどうなるのだろう、と疑問に思っている人もいるでしょう。特に、年金の繰下げを検討している場合などは、想定より早く亡くなって年金が実質掛け捨てになってしまうことを不安に思う人が多いのではないでしょうか。
 
そこで本記事では、年金受給前に亡くなったら遺族が年金を受け取れるかどうかについて解説するとともに、納めた年金から遺族が受け取れるお金の種類や受給要件をまとめました。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

年金受け取り前に亡くなったら老齢年金は受け取れない

年金保険料を払っていた人が老齢年金の受給が始まる前に亡くなった場合、遺族が代わりに老齢年金を受け取るのは不可能です。
 
「それならば、納めてきた年金保険料は全くの無駄になってしまうのでは?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。条件を満たしている遺族がいる場合は、当該の遺族にさまざまな年金や一時金が支払われる制度があります。
 

家族が年金受け取り前に亡くなったときに遺族が請求できるお金は?

家族が老齢年金を受給する前に亡くなった場合、亡くなった家族が支払っていた年金から家族が受け取れるお金は次のとおりです。

・遺族基礎年金
・遺族厚生年金
・寡婦年金
・死亡一時金

いずれも生前の年金の支払い状況や、対象となる遺族がいるかどうかなどの条件があります。受け取れる遺族の条件と支給内容を、それぞれ以下にまとめました。
 

遺族基礎年金

遺族基礎年金は、次のいずれかに当てはまる人が亡くなったときに遺族に支給されます。

・国民年金の被保険者(※1)
・国民年金の被保険者であった60~65歳未満の人で、日本国内に居住していた(※1)
・老齢基礎年金の受給権者(※2)
・老齢基礎年金の受給資格を満たしている(※2)

※1:死亡日の前日時点で保険料納付済および免除期間が国民年金加入期間の3分の2以上ある、または死亡した月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないことが必要
※2:保険料納付済期間と免除期間、合算対象期間の合計が25年以上必要
 
年金を受け取れるのは、亡くなった人に生計を維持されていた遺族のうち、次に当てはまる人です。

・子(※3)のいる配偶者
・子(※3)

※3:18歳を迎える年度の3月31日まで、または障害の状態にある20歳未満の子
 
遺族基礎年金の支給額は、国民年金を満額納めたときの老齢基礎年金額(年額)と同等の金額を基本として、誰が受給するか、もしくは子の人数などで決まります。
 

遺族厚生年金

遺族基礎年金は、次のいずれかに当てはまる人が亡くなったときに遺族に支給されます。

・厚生年金の被保険者(※1)
・厚生年金の被保険者期間に初診日がある傷病で初診日から5年以内(※1)
・1・2級の障害厚生(共済)年金の受給者
・老齢厚生年金の受給権者(※2)
・老齢厚生年金の受給資格を満たしている(※2)

※1死亡日の前日時点で保険料納付済および免除期間が国民年金加入期間の3分の2以上ある、または死亡した月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないことが必要。
※2保険料納付済期間と免除期間、合算対象期間の合計が25年以上必要。
 
受給できるのは、亡くなった人に生計を維持されていた遺族のうち、優先順位が高い人です。

・妻:30歳未満で子がない場合は5年間のみ
・子
・55歳以上の夫:遺族基礎年金をあわせて受給する場合を除き受給開始は60歳から。
・55歳以上の父母:受給開始は60歳から。
・孫(※3)
・55歳以上の祖父母:受給開始は60歳から。

※3:18歳を迎える年度の3月31日まで、または障害の状態にある20歳未満の孫
 
優先順位は高い順に、子のある配偶者と子⇒子のない配偶者⇒父母⇒孫⇒祖父母となります。支給額は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3が基本です。
 

寡婦年金

寡婦年金は、夫を亡くした妻に支給される年金です。死亡日の前日時点で、国民年金の第1号被保険者として保険料を納付した期間と免除期間の合計が10年以上ある夫が亡くなったときに支給されます。
 
受け取れるのは、亡くなった人と10年以上継続した婚姻期間(事実婚を含む)があり、死亡時点で亡くなった人に生計を維持されていた妻です。妻が60歳から65歳になるまで、夫の第1号被保険者期間から計算した老齢基礎年金額の4分の3が支給されます。
 
ただし、次のときは支給されません。

・亡くなった夫に老齢基礎年金・障害基礎年金の受給期間があるとき
・妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受給しているとき

 

死亡一時金

死亡一時金は、死亡日の前日時点で第1号被保険者として保険料を納付した月数が36月(免除期間は納付割合×1月として計算)以上ある人が亡くなったときに支給されます。受け取れるのは、その人と同一生計の次の遺族のうち優先順位が高い人です(優先順位は上から高い順)。

・配偶者
・子
・父母
・孫
・祖父母
・兄弟姉妹

基本の支給額は保険料の納付月数に応じて12~32万円です。ただし、次の場合は支給されません。

・亡くなった人に老齢基礎年金・障害基礎年金の受給期間があるとき
・遺族基礎年金の支給を受けられるとき
・寡婦年金を受給するとき(死亡一時金といずれかを選択)
・請求時点で死亡日の翌日から2年を過ぎているとき

 

亡くなった人が払った年金は遺族がさまざまなかたちで受け取れる制度がある

老齢年金の受け取り前に亡くなると、老齢年金を受給する権利は遺族に引き継がれません。しかし遺族年金など別の年金や一時金のかたちで国民年金や厚生年金から遺族が受け取れるお金があります。
 
受け取れるお金の種類や受給要件をよく確認し、支払ってきた年金が無駄にならないよう、請求できるものがあれば忘れずに請求しましょう。
 

出典

日本年金機構 遺族に支払われる年金
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 寡婦年金
日本年金機構 死亡一時金
総務省 e-Gov法令検索 国民年金法
江東区 年金を受け取る前に亡くなったとき
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

ライターさん募集