更新日: 2019.01.10 その他年金
Aさんは『自営業』 Bさんは『会社員』 二人の年金や健康保険はどう違うのか?
奥様は専業主婦。5歳と3歳の子どもがいます。奥様はどちらも日中パートに出て、月2万の収入があります。
国民年金加入の自営業と厚生年金加入の会社員。公的保険の保険料と受給額、どう違うのでしょうか?
Text:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
老齢基礎年金しかない自営業。老齢厚生年金が上乗せできる会社員
自営業のAさんの場合は年収がいくらであっても、奥様が会社員でなければ、本人と奥様にそれぞれ国民年金保険料が掛かります。平成30年度の場合1万6340円です。2人分で3万2680円が毎月掛かります。受け取れる年金は、平成30年度の場合それぞれ77万9300円です。
一方、会社員のBさんは年俸制で標準報酬月額が41万円とすると、毎月3万7516万円掛かりますが、奥さんの分は掛かりません。
平成30年から配偶者特別控除の枠が拡大され、配偶者が年収150万までは税制上の扶養となりましたが、社会保険上の扶養は年収130万円です。Bさんの奥様は年収24万円ですから、税制上も社会保険上も扶養のままでいられます。
そして、奥様が20歳からずっと国民年金のみの加入であれば、65歳の誕生日に77万9300円、そして、Bさんが23歳から60歳まで会社員で平均年収500万円だとしたら、41×【2×12×7.125/1000+35×12×5.481/1000】≒94万円の老齢厚生年金の上乗せがあります。Bさんは、老齢基礎年金77万9300円と老齢厚生年金94万円の計171万円の年金が受け取れます。
会社員の場合、実際の保険料は本人負担額の倍です。会社が保険料の半分負担をしてくれるためです。
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受給できる等級の範囲も違う
公的年金には、年を取った時にもらえる老齢年金の他に、障害年金、遺族年金があります(受給には、保険料納付要件等の受給要件を満たす必要があります)。
国民年金は、障害等級が1級、2級の場合に受給できます。
1級の場合77万9300円×1.25+子の加算
2級の場合77万9300+子の加算
子の加算(1子につき22万4300円、3子以降7万4800円)が付き受給できます。
一方、厚生年金加入の場合同じように、1級は報酬比例の年金額×1.25+配偶者加給年金(22万4500円)、2級は報酬比例の年金額+22万4500円となりますが、加入期間が25年に満たない場合は25年加入しているとみなして受給額の計算をします。
1級・2級は障害厚生年金に加えて障害基礎年金の受給もできます。
さらに、障害厚生年金には3級にも障害厚生年金があり、3級までに該当しない軽い障害が残った場合に、障害手当金が受け取れることもあります。3級の場合は報酬比例の年金額(最低保障額が58万4500円)、障害手当金は3級の2年分を一時金で受け取ります(最低保障が116万9000円)。
受給できる遺族の範囲も違う
国民年金は遺族基礎年金の受給になります。基本年金額+子の加算を受給できますが、この基本年金額は老齢基礎年金の満額の金額です。障害基礎年金と同様、加入期間にかかわらず、老齢年金の満額の受給ができます。
遺族厚生年金も、25年に加入期間が満たない場合、25年加入したものとして計算されます。算出された報酬比例の厚生年金額のうち3/4が遺族厚生年金となります。
ところで、受け取れる「遺族」とは誰なのかが、遺族基礎年金と遺族厚生年金とで違います。
遺族基礎年金は子(18歳に達した3月31日まで、または障害を負っていた場合20歳未満)がいる場合にしか支給されません。支給額は老齢年金の満額+子の加算です。
しかし、遺族厚生年金は生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫、祖父母も受給対象になります。
子・孫の年齢は遺族基礎年金と同様で、夫・父母。祖父母は被保険者死亡時に55歳以上(受け取りは60歳から)という年齢制限があります。夫死亡時に子どもがいる場合は、遺族基礎年金も同時に受けられますが、子どものない30歳未満の妻は、5年間の遺族厚生年金のみ5年間の限定支給となります。
国民健康保険と健康保険の違い
ところで、国民年金第1号被保険者は国民健康保険に加入します。
保険料は、1.医療分、2.後期高齢者支援金分、3.介護分(40歳から65歳未満負担)の3つの区分の合計が保険料となります。
それぞれ、
【所得割】所得額×料率
【資産割】固定資産税額×料率
【均等割】加入者数×均等割額
【平等割】一世帯あたりいくら
で計算しますが、各市町村によって、組み合わせや賦課限度額は違います。
国民健康保険では所得のある人すべて、「前年総所得金額−33万円の基礎控除」の合計をします。例えば、Aさんは346万-33万=313万、奥様は24万-33万=-9➝0 となり、世帯の基準所得金額は313万となります。
そして、均等割りは世帯加入者の人数に応じて掛かります。子どもも被扶養者ではなく1人と数えられます。計算された額から,法定軽減額、調整額、減免等を差し引いて計算します。保険料は住民基本台帳の世帯主が納付します。Aさんの場合、57万ほどの年間保険料になります(注意、市町村により保険料が違います)。
一方、健康保険は、被保険者の標準報酬月額で保険料が決定します。扶養家族が何人でも保険料は同じです。標準報酬月額41万円の場合、月に2万3513.5円(東京都)となり、年間28万円の保険料ですみます。
そして、傷病手当金や出産手当金の給付など、国民健康保険では実施されてない制度も健康保険にはあります。
同じ年収(所得)、家族構成でも、自営業と会社員、公的保険においてこれだけの差がでます。第2号被保険者は会社が保険料を半分負担しているため、個人負担分の倍の保障があるからです。
働き方が多様な時代、社会保険の制度にも関心を持ってみてはいかがでしょうか。
Text:林 智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
相続診断士
終活カウンセラー
確定拠出年金相談ねっと認定FP