年金暮らしの夫婦で「配偶者」が死亡。「遺族年金」はどのくらい受け取れる?「妻・夫」それぞれを検証
配信日: 2023.06.07 更新日: 2023.06.13
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
夫婦とも生存の際に受け取る基準となる年金額
残された配偶者が受け取る年金支給額は、夫婦が共に生きていた際に受給していた金額が基準となります。
平均的な年金支給額として、厚生労働省の「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」を参考に、1人当たりの受け取る年金額は年額で老齢基礎年金は79万5000円、老齢厚生年金は110万3784円を基準とし、残された側が受け取る年金について見ていきましょう。ただし、妻の分の老齢厚生年金は夫の半分の55万1892円とします。
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
3つのパターンで解説
実際はいろいろなケースがありますが、今回は夫婦ともに65歳以降で子どものいない2人暮らし、収入は公的年金のみとします。
この前提で、代表的な3つのパターンについて見ていきましょう。
パターン1:会社員の夫・専業主婦の妻で夫が先立つ
この場合、夫が生存している時、夫は老齢基礎年金と老齢厚生年金、妻は老齢基礎年金のみ受給しています。夫と妻、そして世帯として受け取っていた年金額は下記のとおりです。
(1)夫:老齢基礎年金 79万5000円 老齢厚生年金 110万3784円
(2)妻:老齢基礎年金 79万5000円
(3)世帯:(1)+(2)=269万3784円
夫が先立った場合、妻は夫の老齢基礎年金分から支給される遺族基礎年金は受け取れず、老齢厚生年金分から受け取る遺族厚生年金は4分の3を受け取ることとなります。そのため、夫が先立った後に妻が受け取れる年金は下記のとおりです。
(1)夫の分:遺族厚生年金 110万3784円×4分の3=82万7838円
(2)妻:老齢基礎年金 79万5000円
(3)世帯:(1)+(2)=162万2838円
夫の生存時と比べると、世帯収入は約60%となります。なお、夫の遺族厚生年金分である約83万円には所得税や住民税は課税されません。
パターン2:共働きで夫が先立つ
この場合、夫生存時は夫も妻も老齢厚生年金と老齢基礎年金を受給しています。ただし、前出のとおり妻の老齢厚生年金受給額は夫の2分の1と仮定します。そうすると、夫と妻、そして世帯として受け取っていた年金額は下記のとおりです。
(1)夫:老齢基礎年金 79万5000円 老齢厚生年金 110万3784円
(2)妻:老齢基礎年金 79万5000円 老齢厚生年金 55万1892円
(3)世帯:(1)+(2)=324万5676円
夫が先立った場合、妻は夫の遺族基礎年金は受け取れず、妻自身の老齢基礎年金は受け取れます。遺族厚生年金は、次の内、高い金額が受け取れる仕組みです。
A:夫の老齢厚生年金の4分の3
B:夫の老齢厚生年金の2分の1と妻の老齢厚生年金の2分の1の合計
今回の想定では、Bの方が高いので、夫が先立った後に妻が受け取れる年金は下記のとおりです。なお、要件を満たせば中高齢寡婦加算や経過的寡婦加算も受給できますが、金額もそこまで多くないため今回は割愛します。
(1)夫の分:遺族厚生年金 110万3784円×2分の1=55万1892円
(2)妻:老齢厚生年金 55万1892×2分の1=27万5946円
(3)妻:老齢基礎年金 79万5000円
(4)世帯:(1)+(2)+(3)=162万2838円
夫に先立たれた後の年金支給額はパターン1と同じになりますが、夫生存時との支給額の比率は約50%と、パターン1よりも低くなります。
パターン3:共働きで妻が先立つ
この場合も、夫生存時はパターン2と同様の年金額を受け取っているため、受給額は下記です。
(1)夫:老齢基礎年金 79万5000円 老齢厚生年金 110万3784円
(2)妻:老齢基礎年金 79万5000円 老齢厚生年金 55万1892円
(3)世帯:(1)+(2)=324万5676円
このケースでは妻が先立ちますので、夫は妻の遺族基礎年金は受け取れず、夫自身の老齢基礎年金は受け取れます。また、遺族厚生年金については、次の内、高い金額が受け取れます。
A:妻の老齢厚生年金の4分の3
B:夫の老齢厚生年金の2分の1と妻の老齢厚生年金の2分の1の合計
今回の想定では、Aが多くなりますので、妻が先立った後に夫が受け取れる遺族年金は下記のとおりです。
(1)夫:老齢基礎年金 79万5000円
(2)夫:老齢厚生年金 110万3784円×2分の1=55万1892円
(3)妻の分:遺族厚生年金 55万1892×2分の1=27万5946円
(4)世帯:(1)+(2)+(3)=162万2838円
妻生存時と比べると、約50%の収入となりました。
ただし、夫は(2)(3)の代わりに、自身の老齢厚生年金をそのまま受け取る選択もできます。その場合、(2)(3)の合計が82万7838円ですので、老齢厚生年金として110万3784円を受け取った方が良いです。
残された配偶者が受け取る年金は条件によりさまざま
今回のケースで見ると、パターン1が夫婦ともに存命だった時に最も近い年金支給額を受け取ることができ、またパターン3で自身の老齢厚生年金を受け取る場合が最も年金支給額が多くなりました。
とはいえ、これらは現役時代の収入金額によって変わってきます。気になる人は基本的な計算方法を確認した上で、自身に当てはめて計算してみましょう。
出典
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
※2023/6/13 記事を一部修正いたしました。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー