更新日: 2023.06.19 その他年金

65歳、平均寿命まで20年あるけど「健康寿命」は10年? 年金は本当に「繰下げ受給」の方が得なのでしょうか?

執筆者 : 菊原浩司

65歳、平均寿命まで20年あるけど「健康寿命」は10年? 年金は本当に「繰下げ受給」の方が得なのでしょうか?
国民年金や厚生年金などの公的年金は、基本的に65歳から老齢年金を受け取ることが可能ですが、給付額を減らして60歳から受け取ったり、逆に、65歳以降に受け取ることで給付額を増やすこともできたりします。
 
金額だけをみれば、受給開始年齢を遅らせる「繰下げ受給」のほうがお得なように見えますが、本当にそうなのでしょうか?
 
今回は、公的年金の支給開始年齢の決め方について解説します。
菊原浩司

執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

http://conserve-investment.livedoor.biz/

老齢年金の繰上げ・繰下げ受給とは

日本には、いくつかの公的年金制度がありますが、最も基本的なものとして、国内に住所を有する20歳以上60歳未満の人が加入する国民(基礎)年金があります。
 
国民年金は原則として、受給資格期間を満たしている加入者が65歳に達すると受給資格が得られ、給付額は基本的に、掛け金を支払った期間に応じて増算出されます(満額あり)。
 
繰上げ受給は、最短で60歳から老齢給付を受けることができますが、給付額は減少してしまいます。
 
減額率は、1964年4月1日以前に生まれた方は、1ヶ月繰り上げるごとに0.5%(最大30%)、それ以降に生まれた方は0.4%(最大24%)となります。
 
繰下げ受給は最大で75歳まで繰り下げることができ、1ヶ月繰り下げるごとに給付額は0.7%ずつ、最大84%まで増加していきます。
 

繰下げ受給は変化する老後モデルへの対応策の1つ

少子高齢化の進行などによって、公的年金の老齢給付だけでは老後の生活費を十分に補えなくなっていくため、ご自身で老後の生活資金を準備していく必要があります。
 
現役時に十分な資産形成が行えなかったり、想定よりも老後生活が長引いてしまい、老後資金が枯渇したりする「長生きのリスク」に備えるためにはより多額の資産が必要となり、以前のように年金のみで老後を送るというスタイルは難しくなりつつあります。
 
今後は定年退職後も働き続けて老後開始年齢を遅らせ、さらに公的年金も繰り下げて給付額を増額させるという老後モデルに変遷していく可能性があります。
 

平均寿命による受取総額の違いは?

2022年現在の日本人の平均寿命は、男性で81.47歳、女性は87.57歳です。65歳で老齢給付の受給を開始した場合、男性は16年、女性は22年間が平均受給期間となります。
 
国民年金の2023年度の老齢給付は、満額で年額79万5000円のため、老齢基礎年金のみの場合は、男性の平均的な受給総額は1272万円、女性は1749万円となります。
 
これを10年繰り下げて75歳から受け取りはじめた場合、老齢給付は年額約142万円にアップしますが、余命からみる平均的な受給額は、男性が約6年で約852万円、女性が約12年で約1704万円となり、平均寿命以上に長生きしない限り、金額的にはマイナスになってしまいます。
 

まとめ~老後スタイルによって繰り下げを~

今後の老後生活は、年金と貯蓄で自分時間を過ごすスタイルのほか、定年退職後も一定の労働収入を確保していくスタイルも増えていくと考えられますが、その前提として、生涯にわたり「働けなくなるリスク」に備えていく必要があります。
 
公的年金の繰下げ受給は、平均寿命では受給総額がマイナスとなってしまいますが、働けなくなるリスクや長生きのリスクに備えることができます。
 
老後の生活資金は個人差が大きいため、公的年金などさまざまな制度のメリット・デメリットを把握し、計画的に進めていく必要がありますが、計画が不十分だと資金が不足して、老後破産に陥ってしまうかもしれません。
 
金融リテラシーを高めたり、ファイナンシャルプランナーなどの専門家を活用したりして、資金計画を立てていくことをお勧めします。
 

出典

厚生労働省 令和3年簡易生命表

日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について

 
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表

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