私の子を養子にしたい両親。私が受給している遺族年金はどうなる?
配信日: 2023.06.23
そんななか、妻の両親がその子(その両親から見ての孫)を「養子にしたい」とのこと。もし、養子となった場合、遺族基礎年金や遺族厚生年金は引き続き受給できるのでしょうか。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
遺族基礎年金と遺族厚生年金の対象遺族と実際の受給者
公的年金の遺族年金には、定額で支給される遺族基礎年金と報酬比例で支給される遺族厚生年金があります。それぞれ対象となる遺族は【図表1】のとおりです。
夫が死亡し、生計を維持されていた、妻と小学生の子1人がいると、妻は「子のある配偶者」となります。遺族基礎年金と遺族厚生年金それぞれについて、その妻と子に受給権が発生しますが、妻と子両方が年金を受給できるわけではなく、それぞれ受給できる遺族には優先順位があります。
【図表1】のIとIIのそれぞれ※1のとおり、「子のある配偶者」の優先順位が高いため、妻が実際に年金を受給します。夫の報酬比例の年金の4分の3で計算された遺族厚生年金と、子は1人のため、基本額(2023年度:79万5000円。67歳以下の場合の額)に子の1人分(2023年度:22万8700円)が加算された遺族基礎年金が妻に支給されます。
一方、子は、それぞれの年金の受給権者ではあっても、妻が受給していることから支給が停止されます(子の年金は0円となります)。
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養子縁組すると遺族年金はどうなる?
妻が遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給しているなか、子が妻の父母(その子にとっての祖父母)と養子縁組をするとどうなるでしょうか。
まず、遺族基礎年金について、子にとっての祖父母と養子縁組をすると、その子は妻の受給する遺族基礎年金の加算対象の子ではなくなる扱いとなります。子が1人いる場合のその子が祖父母と養子縁組をすることによって、妻は「子のある配偶者」でなくなり、結果、妻の遺族基礎年金の受給権はなくなって、支給されなくなります。
そして、養子縁組後も子には遺族基礎年金の受給権が残りますが、妻に支給されなくなる代わりに子に支給されるようになるかというと、そうでもありません。子が自身の父母(実母と祖父母である養父母)と生計を同じくする場合は支給停止となるルールがあります。したがって、同居して生計同一のままでいると、引き続き子には支給されません。
一方、遺族厚生年金については、養子縁組で妻も子もその受給権はなくなりません。しかし、養子縁組によって、配偶者は遺族基礎年金のない、「子のない配偶者」に変わります。
遺族厚生年金の支給については、子が子のない配偶者に優先するというルールがあり(【図表1】IIの※1)、また、遺族基礎年金のような、子と父母が生計同一であることによる子への支給停止制度もありません。その結果、妻は受給できなくなる代わりに、子が受給するようになります(【図表2】)。
遺族年金受給中の養子縁組に注意
以上をまとめると、養子縁組後の妻はいずれも受給しなくなり、代わりに子が遺族厚生年金のみを受給します。
もし、子の18歳年度末到達後(遺族基礎年金の受給権消滅後)に養子縁組をする場合は、影響がありません。将来の相続の関係などで、孫を養子にしたいと考える祖父母もいることでしょうが、遺族年金がある場合はこれらのことも考えたうえで養子縁組について決めましょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー