更新日: 2023.06.23 その他年金

「公務員」と「一般企業」の社員では年金の受取額が違う?

「公務員」と「一般企業」の社員では年金の受取額が違う?
公務員と一般企業との年金格差解消のため、両者の年金制度が一元化されたものの、いまだに大きな差があると感じている方もいらっしゃるようです。そこで今一度、公務員と一般企業の会社員の年金の受取額に違いが生じるのか見ていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

現在は公務員も一般企業も受け取る年金は同様になっている

現在は、公務員であっても一般企業であっても、将来受け取る年金は国民年金と厚生年金になっています。かつて公務員が加入していた共済年金はすでに廃止され、厚生年金と一元化されているからです。そのため、基本的に公務員だろうと一般企業だろうと受け取る年金額に大きな差はつかないことになっています。
 
差がつく大きな原因としては、給与額の違いが挙げられます。「令和4年地方公務員給与実態調査結果等の概要」によると、地方公務員の平均年収は東京都の場合で660万2569円と試算できます。国家公務員(行政職)であれば、「令和4年国家公務員給与等実態調査報告書」より664万2803円と想定できます。
 
一方で、一般企業の正社員の平均年収は443万円となっており、年収に差があります。厚生年金の給付額は、おおむね現役時代の収入が高い人ほど多くなるため、平均年収の高い公務員の方は、一般企業の正社員より多くの年金を受け取れるといわれるのだと推測できます。
 

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公務員には、一般企業の企業年金に相当する退職等年金給付が存在する

共済年金が厚生年金に一元化されたとはいえ、公務員には厚生年金の上乗せとして、退職等年金給付が存在しています。公務員と一般企業との年金の違いといえば、現在はこの退職等年金給付の存在くらいです。これによって公務員優遇に感じられ、公務員の方が年金の受取額が多いと思われることもあります。
 
しかし、これは一般企業の「企業年金」に該当するようなもので、公務員優遇の制度とはいえないようです。
 
国は本制度について、およそ半数の民間の企業が導入している企業年金に相当する労使折半の年金としています。制度自体も、公務の特殊性に配慮した公務員制度の一環としての年金制度になっていると説明されており、平均的な民間企業と総合的に比較して著しく不公平な内容にならないように調整されているようです。
 
とはいえ、中小企業や零細企業を含む民間企業においては企業年金が存在していないことも珍しくはないため、企業年金を有しない企業と比較して、不公平さを感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
 
参考までに、令和4年10月から令和5年9月におけるモデル年金額によると、有期年金を20年で受け取る方は、終身部分の年金7000円に有期年金1万5058円を加算して毎月2万2058円の給付となるようです。
 

iDeCoにおいても公務員と一般企業の正社員とで大きな違いはない

私的年金になりますが、iDeCoにおいても公務員と一般企業とで大きな違いはありません。企業年金に相当する退職等年金給付を有する公務員は月額1万2000円まで掛け金を拠出できます。
 
それに対して一般企業の正社員は、企業年金が存在しない場合は2万3000円、企業年金が存在していれば、その実施状況によって1万2000円または2万円となっています。
 
もともと公務員はiDeCoに加入することができなかったのですが、2017年から加入が認められました。公務員と一般企業の会社員との年金の差は、こうしたところでも縮まっています。
 

公務員と一般企業との年金の受取額は個別の事情によって異なる

基本的に、公務員も一般企業も、加入する年金やiDeCoも含め同様であり、給与水準が同一であれば支給額も同じになると想定されます。
 
ただし、一人ひとり給与の額は異なり、勤務先によって企業年金の有無や内容が異なることから、実際に受け取る年金額は公務員と一般企業の正社員とで異なります。そしてそれは、公務員と一般企業の正社員だけでなく、一般企業の正社員同士でも違いは生じます。「公務員だから」「一般企業だから」と過敏に比較して考える必要はないでしょう。
 
年金に不安を感じているのであれば、他人と比較するよりも、将来に向けてどのような備えをしていくか前向きに考え、実行するほうが建設的でしょう。
 

出典

人事院 令和4年国家公務員給与等実態調査報告書
令和4年地方公務員給与実態調査結果等の概要
国税庁 令和3年分民間給与実態統計調査
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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