更新日: 2023.06.29 iDeCo(確定拠出年金)
企業型確定拠出年金(企業型DC)の「選択制」って何? メリットや「マッチング拠出」との違い、「iDeCo併用」についても解説
今回は、企業型DCでもわかりづらい、給与減額方式の「選択制」とそのメリット、マッチング拠出との違い、iDeCo併用について解説します。
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佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー
立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。
現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。
「選択制」企業型DCとは?
「選択制」企業型DCとは、あらかじめ企業が準備した一定の金額の範囲内で、従業員が現行給与の中から掛金を拠出する方法を、選択できる制度です。後述のマッチング拠出のように、従業員が事業主の拠出する掛金(事業主掛金)へ、お金を上乗せするわけではありません。
選択制DCにおいては、ライフデザイン手当(ライフプラン手当といわれることもある)と呼ばれる選択金を設定する場合が多いです。この手当は、確定拠出年金の掛金として将来受け取ることにしてもいいし、給与の一部(退職金の前払い)としてすぐに受け取ることもできます。
例えば基本給30万円の場合、基本給24万5000円、ライフデザイン手当が5万5000円となります。手当は給与内に設定されるので、制度を利用してもしなくても、会社からの総支給額は変わりません。
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確定拠出年金の掛金を給与から拠出するメリットは?
ライフデザイン手当を確定拠出年金の掛金にする場合、その金額が給与から切り離され、社会保険料算定から外れるので、社会保険料が下がります(なお、掛金拠出後の標準報酬月額の等級によっては、社会保険料が下がらない場合もあります)。
例えば給与30万円の場合、30万円の標準報酬月額に対して、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料が計算されます。このケースで掛金を3万円拠出すると、社会保険料の算定対象となる給与が27万円となるため、社会保険料の支払いが少なくなります。
社会保険料を給与のおよそ15%とすると、3万円の拠出により、会社、従業員それぞれ1ヶ月あたりおよそ4500円の社会保険料削減となります。
ただし社会保険料の削減ということは、公的保障の給付が減額されることを意味します。例えば雇用保険の育児休業手当、介護休業手当、失業手当、傷病手当金、老齢厚生年金などが減額対象となります。どの程度の減額になるかは、必ず把握しておく必要があるでしょう。
選択制とマッチング拠出の違いは?
マッチング拠出とは、事業主掛金とは別に、従業員個人が自分の給与から掛金を確定拠出年金の口座に上乗せできる制度です。選択制では企業型DCに拠出するか否か、マッチング拠出では加入者掛金を上乗せするかどうか、従業員が選択することになります。
マッチング拠出は、従業員が自身の資金から掛金を上乗せするため、選択制のような社会保険料の減少はありません。ですが、事業主の掛金を上回る金額を払うことができません。仮に事業主掛金が1万円の場合、個人掛金は1万円を上回ることはできません。
そもそも企業型DCは、その他企業年金がない場合、掛金の上限は5万5000円と規定されています。ゆえに事業主掛金の金額が不十分な場合は、この枠を十分活用できないことになります。
iDeCoを併用できるの?
2022年10月以降は、企業型DC加入者は、マッチング拠出を利用するかiDeCoを併用するか選択できるようになりました。例えば事業主掛金が1万円の場合、マッチング拠出では1万円、iDeCo併用では2万円を上限に拠出できます。
事業主掛金が2万円の場合は、マッチング拠出でもiDeCo併用でも個人掛金は2万円が上限です。その場合は、運用商品の内容や手数料などを考慮に入れて選択することになるでしょう。
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まとめ
企業型DCを導入する企業は、今後増加していくことが想定されます。企業型DCでも選択制、マッチング拠出、iDeCo併用など、いずれかを選択する場合、それぞれのメリット・デメリットを理解する必要があります。企業型DCは、将来受け取る公的年金の上乗せ部分です。人任せにせず、自分でしっかり制度の趣旨を理解し、判断しましょう。
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー