更新日: 2023.07.04 その他年金
年金を60歳から受け取るとずっと減額。それでも「繰り上げ受給したほうがトクな人」の条件とは?
本記事では、年金の繰上げ受給の制度概要と、繰上げ受給をしたほうがお得になる人の特徴を解説しますので、みていきましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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年金の繰上げ受給とはどんな制度?
原則、65歳以降に受け取れる老齢年金ですが、繰上げ受給によって受取開始時期を繰り上げると、期間に応じて年金額が減額されます。繰上げ受給によって減額された年金は、生涯にわたって減額されたままになります。
また、年金の繰上げ受給には、年金額が少なくなる以外にも、以下のようなデメリットがあります。
●国民年金の任意加入や追納ができなくなる
●老齢基礎年金と老齢厚生年金の、どちらか一方のみの繰上げ受給はできない
●厚生年金基金から支給される年金額の減額
●繰上げ請求日以降は、遺族年金と併せて受け取れない
●繰上げ請求日以降は、寡婦年金の受給権利がなくなる
●繰上げ請求日以降は、障害年金を請求できない
繰上げ受給によって、年金の早期受け取りは可能ですが、これらのデメリットを考慮して、必要性を慎重に判断しなければなりません。
年金の繰上げ受給に対して、年金の受取開始時期を66歳0ヶ月~75歳0ヶ月までに繰り下げるのが、繰下げ受給です。年金を受け取る時期を繰り下げた期間に応じて、年金額を増やせます。
あたりの減額率
年金の繰上げ受給における、1ヶ月あたりの減額率は、昭和37年4月1日以前生まれの人が0.5% 、昭和37年4月2日以降生まれの人が0.4%です。繰上げ受給の手続きを行ったら、その後に、減額率が変わることはありません。
年金請求時の年齢でまとめた減額率は、表1、表2のとおりです。
【表1】
繰上げ受給請求時の年齢 | 減額率 |
---|---|
60歳0ヶ月 | 30.0% |
61歳0ヶ月 | 24.0% |
62歳0ヶ月 | 18.0% |
63歳0ヶ月 | 12.0% |
64歳0ヶ月 | 6.0% |
【表2】
昭和37年4月2日以降生まれの人の減額率
繰上げ受給請求時の年齢 | 減額率 |
---|---|
60歳0ヶ月 | 24.0% |
61歳0ヶ月 | 19.2% |
62歳0ヶ月 | 14.4% |
63歳0ヶ月 | 9.6% |
64歳0ヶ月 | 4.8% |
※表1・2ともに、日本年金機構「年金の繰上げ受給」をもとに筆者作成
令和5年度の老齢基礎年金は、満額で月額6万6250円です。年金の受取開始時期を、65歳から60歳0ヶ月に繰り上げた場合、以下の金額が、年金額から減額されます。
●昭和37年4月1日以前生まれの人:6万6250円 × 30%=1万9875円
●昭和37年4月2日以降生まれの人:6万6250円 × 24%=1万5900円
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年金の繰上げ受給をしたほうがお得な人の条件とは?
繰り上げた月数分の年金額が減るなど、デメリットもみられる年金の繰上げ受給ですが、一定の条件に該当する人は、早期受け取りをしたほうがお得な場合があります。
●健康状態に自信がない人
●65歳まで働くことができず、貯金もない人
「年金額を減らしたくないから、繰上げ受給はしたくない」と考える人も多いことでしょう。しかし、持病などを抱えていて、長寿の自信がなかったり、生活資金がなくて困っていたりする場合は、65歳まで待つよりも、60歳からの年金受け取りが、損をせずにプラスとなる可能性が高いのです。
健康状態に自信がない人
現在、健康状態に自信がない、長生きする可能性は低そうと感じる人は、繰上げ受給をするのもよいでしょう。なぜなら、年金は、本人死亡によって受給資格を喪失するからです。65歳になることを待ったり、繰下げ受給をしたりした結果、年金を受け取れなくなることも。
ただし、病気やけがが、完治する可能性も想定できます。健康状態がよくなって、長生きした際には、受け取れる年金額は減るということは、把握しておいてください。
65歳まで働くことができず貯金もない人
定年退職後に収入が減った、生活資金に充当できる貯金がないなど、すぐにお金が必要な人も、年金の繰上げ受給をしたほうがよいでしょう。将来的に受け取れる年金額は減りますが、お金がないことによるストレスを軽減できます。
また、カードローンやクレジットカードのキャッシングなどで、一時的にお金を借りる行為は避けてください。利息の負担が発生するだけでなく、借金することに慣れてしまって、借入金額を増やしてしまう危険性が高いからです。
繰上げ受給の内容を十分に理解したうえで選択しよう
年金の繰上げ受給をするかどうかは、老後の資金計画を立てるにあたって、重要な問題です。繰上げ受給を検討する場合は、制度の特徴やデメリット、年金額がどれくらい少なくなるかを確認して、納得した状態で手続きを進めましょう。
特に、60歳で年金を受け取る場合は、最大で24%、または30%も年金受給額が減額するため、十分に考えたうえで、受給開始時期を設定してください。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー