更新日: 2023.07.13 厚生年金

ボーナスが出て年収が50万円アップしそうです。年金保険料はどれくらい上がりますか?

執筆者 : 辻章嗣

ボーナスが出て年収が50万円アップしそうです。年金保険料はどれくらい上がりますか?
最近は、物価上昇などに伴う賃金アップの動きが強まっているようです。今回は、厚生年金保険料の仕組みと、年収の上昇に伴って厚生年金保険料がどのくらい上がるのかを解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

年金保険料の仕組み

厚生年金の保険料は、毎月の給与と賞与から徴収され、事業主と被保険者が半分ずつ負担します(※1)。
 

1.毎月の給与から支払う保険料

被保険者が毎月の給与から支払う保険料は、被保険者が受け取る給与(注1)を一定の幅で区分した報酬月額(注2)に当てはめて決定する標準報酬月額に、保険料率を掛けて下式のとおり算出されます。
 
毎月の給与から支払う保険料額=標準報酬月額×保険料率(18.3%)×1/2

注1:報酬月額の基となる「給与」とは、基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の額(報酬)をいいます。
注2:報酬月額には、残業手当などを含む報酬に、宿舎費や食事代などの現物給与の額も含まれます。
 
なお標準報酬月額は、1等級(8万8000円)から32等級(65万円)までの32等級に分かれています。
 

2.ボーナス(賞与)ごとに支払う保険料

被保険者がボーナス(賞与)から支払う保険料は、標準賞与額に保険料率を掛けて下式のとおり算出されます。
 
賞与から支払う保険料額=標準賞与額×保険料率(18.3%)×1/2

標準賞与額は、税引き前の賞与(注3)の額から1000円未満の端数を切り捨てた額で、支給1回につき150万円が上限となります。
 
注3:標準賞与額の対象となる「賞与」は、賞与(役員賞与を含む)、ボーナス、期末手当、年末手当、夏(冬)季手当、越年手当、勤勉手当、繁忙手当、年末一時金など、年3回以下の回数で支給されるもの、およびその他定期的でなくても一時的に支給されるものです。
 

年収50万円アップに伴い、保険料はどう上昇するの?

厚生年金の保険料は、毎月の給与の分と賞与の分とで、別々に計算されます。年収が50万円アップした要因が、毎月の給与によるものか、賞与によるものかにより、同じ上昇幅でも支払う保険料が異なります。
 

1.ボーナス(賞与)だけで年収が50万円分アップした場合の保険料の上昇

受け取った賞与だけで年収が50万円分アップした場合、1年間で賞与から支払う厚生年金の保険料は、下式のとおり4万5750円上昇します。1回で支払われた賞与だとしても、年2~3回に分けて支払われた賞与の合計だとしても変わりません。
 
賞与から支払う保険料の上昇額=50万円×18.3%×1/2=4万5750円

なお、賞与から支払う厚生年金の保険料は、1回当たりの賞与額が150万円で上限となりますので、既に150万円の賞与を受け取っていた方の賞与がアップしても、保険料は変わりません。
 

2.給与の上昇のみで年収が50万円アップした場合の保険料の上昇

上昇した給与の分だけで年収が50万円分アップした場合は、賞与と違って単純に計算することはできず、厚生年金保険料額表(※2)に照らし合わせて計算する必要があります。
 
表1
 
表1

1年間に支払われた給与が、前年から50万円分上昇した場合、平均で報酬月額が4万1667円上昇したことになります。
 
厚生年金保険料額表において、標準報酬月額15等級から23等級の間は2万円刻みで設定されていますので、報酬月額が4万1667円上昇すると、標準報酬月額は2~3等級上がることになります。
 
例えば報酬月額が21万円(標準報酬月額15等級)であった方の場合は、この上昇によって報酬月額が25万1667円に、標準報酬月額が2等級上がって17等級となりますので、保険料は先述の式に基づき月額で3660円、1年間で4万3920円上昇することになります。
 
また、同じ標準報酬月額15等級であっても、報酬月額が22万9999円であった方の場合は、報酬月額はこの上昇によって27万1666円となり、標準報酬月額も3等級上がって18等級となりますので、保険料は前述の式に基づき、月額で5490円、1年間で6万5880円上昇することになります。
 
なお、給与から支払う厚生年金の保険料は、標準報酬月額32等級が上限となりますので、既に報酬月額が63万5000円以上の方の給与が上昇しても保険料は変わりません。
 
また、標準報酬月額は毎年9月に、4月から6月の報酬月額を基に改定(定時改定)されますが、この3ヶ月間で支給された報酬の平均月額に該当する「標準報酬月額」が2等級以上変化した場合は、随時改定(※3)されます。
 

3.賞与と給与両方の上昇により、年収が50万円アップした場合の保険料の上昇

1年間で受け取った賞与と上がった給与の分を合わせて、年収が50万円アップした場合は、賞与と給与の上昇分を分けて、前述した方法によりそれぞれ計算する必要があります。
 

まとめ

年収アップに伴う厚生年金保険料の上昇額は、賞与による年収アップなのか、給与による年収アップなのかによって、算定方法が異なります。また、給与による年収アップの場合は、厚生年金保険料が平均標準報酬月額に基づいて計算されるため、上がった年収の額が同じでも、保険料の上昇額は元の報酬月額によって異なります。
 

出典

(※1)日本年金機構 厚生年金保険の保険料

(※2)日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)

(※3)日本年金機構 随時改定(月額変更届)

 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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