更新日: 2023.07.28 その他年金

年金受給額10万円以下と知ったので、老後は「生活保護」を受けたいのですが、可能ですか?

年金受給額10万円以下と知ったので、老後は「生活保護」を受けたいのですが、可能ですか?
将来の年金受給額が10万円以下というのは、何も珍しい話ではありません。現実には、年金だけで生活できず苦しい状況に追いやられている方は多いです。
 
そこで、年金額の少なさに悩む方に向けて、老後に年金を受け取りながら生活保護を受けることについて考えていきます。

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柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

年金を受け取りながら生活保護は受け取れる

生活保護は、世帯の全員が資産や能力その他あらゆるものを活用しても、最低限度の生活を営むことができない程度の状態にある場合に、受けられます。
 
つまり、年金を受給していても生活保護で支給される保護費未満の収入しかなく、貯金もなく、持っている資産をお金に換えても最低限の生活を送ることができず、親族からの支援も受けられない状態であれば、生活保護を受け取れる可能性があるということです。
 
生活保護から支給される金額は、地域ごとに定める最低生活費が、収入を上回る部分です。
 
例えば福岡県北九州市の場合、68歳と65歳の2人世帯においては、最低生活費が11万5890円と定められるので、年金収入を9万円しか受け取れないという場合、2万5890円を生活保護によって受け取れます。
 
実際、生活保護を受給している方の半数以上が65歳以上の高齢者となっています。
 
図表

図表

出典:厚生労働省 被保護世帯数の年次推移
 
ここから年金を受けながら生活保護も受けている、という方が多いことが想定できます。
 

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3親等以内の親族による扶養が優先される

生活保護は収入や資産の要件に加えて、3親等以内の親族による支援を受けられない場合に受給できます。
 
例えば、親族と同居する、仕送りによって金銭的な支援を受けられるというような状況であれば、生活保護よりも前に親族による支援を受ける必要があるということです。3親等以内の親族としては、例えば子どもや父母、兄弟姉妹、おじ・おばなどが該当します。
 

生活保護を受ける際の注意点

生活保護を受けると、一定の制限がかかります。例えば、老後に生活保護を受ける際に問題となりそうな制限として、下記のようなものが挙げられます。


・車や住宅など資産のほか、スマートフォンやパソコンの複数台の保有に制限がかかることがある
・生命保険などに加入できないことがある
・クレジットカードの使用や作成に制限がかかる
・住む場所に制限がかかる
・ケースワーカーと定期的な面談が必要となる
・福祉事務所からの指示・指導に従って生活しなければならない

また、自治体が一定範囲の親族に援助が可能か問い合わせる「扶養照会」により、親族に生活保護の受給について知られることもあります。
 
現在では、DVや虐待がある、そのほか親族との関係が著しく悪いなど、一定の場合には扶養照会をしなくともよいとされていますが、「一般的には申請時に扶養照会が行われる可能性がある」という点に注意してください。
 

生活保護を受給するには?

生活保護を受給するには、住んでいる自治体を管轄する福祉事務所への申請が必要です。必要な書類については、申請先や個別の事情によって異なることもあります。必ず事前に福祉事務所へ相談してください。
 
なお、福祉事務所が分からないという場合は、住んでいる市区町村の役場に問い合わせることでも確認することができる場合もあります。
 

生活保護の利用には十分な検討が必要

老後、年金が10万円以下であり、それだけでは生活できない場合でも、生活保護を受けることは可能です。しかし、生活保護を受けるとさまざまな制限がかかり、思っているような生活ができない場合もあります。
 
「年金の支給額が低くても、生活保護がある」と安易に考えていると、将来思わぬ落とし穴にはまる可能性もあるでしょう。
 
最初から生活保護に頼ることを予定するのではなく、今からでもできる範囲で老後に向けて備えをする、老後も就労して生活費を稼ぐことを検討するなど、まずは生活保護を頼らずに老後の生活を送ることについて考えてみてください。
 

出典

厚生労働省 被保護世帯数の年次推移
北九州市 生活保護制度について
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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