更新日: 2023.07.31 その他年金

妻を亡くした夫は寡婦年金を受給できない? 夫が受け取れるものは何がある?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

妻を亡くした夫は寡婦年金を受給できない? 夫が受け取れるものは何がある?
夫が亡くなった場合、その夫によって生計を維持されていた妻は、寡婦年金や遺族年金の受け取りが可能です。しかし、亡くなったのが夫ではなく妻だった場合、寡婦年金や遺族年金を夫は受け取れるかどうかを知らない人も意外と多いのではないでしょうか。
 
結論から言えば、妻を亡くした夫は寡婦年金を受け取れません。要件を満たす場合は、遺族基礎年金や遺族厚生年金の受け取りが可能です。本記事では、寡婦年金や遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給要件について詳しく解説します。
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寡婦年金とは?

寡婦年金とは、国民年金の第1号被保険者である夫が老齢年金を受け取る前に死亡した際に、その妻に対して支払われる給付制度です。夫の第1号被保険者期間だけに基づき計算した老齢基礎年金額の4分の3相当の額を受け取れます。
 
寡婦年金の受給期間は、被保険者である夫によって生計を維持されていた妻が60〜65歳までの期間に限定されます。ただし、夫が老齢基礎年金・障害基礎年金を受けていたり、妻が老齢基礎年金を繰り上げ受給していたりする場合は寡婦年金を受け取れません。
 

妻を亡くした夫は支給対象に含まれない

日本年金機構が伝えている 寡婦年金の支給対象は以下のとおりで、妻を亡くした夫は該当しません。


・夫の死亡日の前日に、国民年金の第1号被保険者として保険料を納付した期間と国民年金の保険料免除期間が10年以上ある
・その夫と10年以上継続して婚姻関係にあり、死亡当時にその夫によって生計を維持されていた妻

生計を維持されていた人とは、同居状態にあり生計を同じにしていたことを意味します。ただし、仕送りをしていたり、健康保険の扶養親族であったりすれば、別居状態でも生計を維持されていた人として認められる場合があります。
 

妻を亡くした夫が受け取れる年金とは?

妻を亡くした夫は寡婦年金を受け取るための要件を満たしませんが、遺族基礎年金や遺族厚生年金なら受け取れる場合があります。寡婦年金と同様に受給要件はありますが、夫を亡くした妻だけを対象にしているわけではありません。
 
どのような場合に遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取れるのかについて解説するので、チェックしていきましょう。
 

子のいる場合:遺族基礎年金

死亡した妻が以下の要件に該当する場合、死亡した妻によって生計を維持されていた子のいる夫は遺族基礎年金を受け取れます。


1.国民年金の被保険者である間に死亡した
2.国民年金の被保険者である60歳以上65歳未満の人、かつ日本国内に住所を有していた人が死亡した
3.老齢基礎年金の受給権者であった人が死亡した
4.老齢基礎年金の受給資格を満たしている人が死亡した

※1と2については死亡日の前日に、保険料免除期間を含む保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上ある
※3と4については保険料納付済期間、保険料免除期間の合算期間が25年以上ある

遺族基礎年金の受給対象になる子とは、18歳になった年度末(3月31日)まで、20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級の状態にある人が該当します。子のいる配偶者が遺族基礎年金を受け取っていたり、子に同一生計の父や母がいたりする場合は遺族基礎年金の受給要件を満たしません。
 
子のいる夫が受け取れる遺族基礎年金の年金額は図表1のとおりで、年齢によって違いがあります。
 
【図表1】

子のいる夫の年齢 年金額
67歳以下(昭和31年4月2日以後生まれ) 79万5000円+子の加算額
68歳以上(昭和31年4月1日以前生まれ) 79万2600円+子の加算額

出典:日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
 
子の加算額とは、1人目および2人目の子は各22万8700円、3人目以降の子は各7万6200円と定められています。
 

妻が厚生年金に加入していた場合:遺族厚生年金

死亡した妻が以下の要件に該当する場合、死亡した夫は遺族厚生年金を受け取れます。


1.厚生年金保険の被保険者である間に死亡した
2.厚生年金の被保険者期間に初診日がある傷病によって、初診日から起算して5年以内に死亡した
3.1級または2級の障害厚生(共済)年金の受給権者が死亡した
4.老齢厚生年金の受給権者であった人が死亡した
5.老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡した

※1と2については死亡日の前日に、保険料免除期間を含む保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上ある
※4と5については保険料納付済期間、保険料免除期間の合算期間が25年以上ある

なお、妻を亡くした夫が遺族厚生年金を受け取る場合は、死亡当時に55歳以上である人に限ります。受給開始時期は60歳以降となり、死亡した妻の老齢厚生年金の報酬比例部分4分の3の額を受け取れます。
 

受給要件を満たせば夫も遺族年金を受け取れる

妻が亡くなった際に、その夫は寡婦年金を受け取れません。寡婦年金とは、国民年金の第1号被保険者である夫によって生計を維持されている妻に対して支払われる制度だからです。ただし、子のいる夫や妻が厚生年金に加入していた場合は、遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取れる場合があります。
 
ただし、遺族年金を受け取るには一定の要件を満たさなければなりません。記事内で解説した内容を参考にして、受け取り可否や支給額を確認しておきましょう。
 

出典

日本年金機構 寡婦年金
日本年金機構 寡婦年金を受けるとき
日本年金機構 生計維持
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
厚生労働省 資料V-6-1 現在の遺族年金制度の仕組み
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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