更新日: 2023.08.01 その他年金

会社員の夫に扶養されている「専業主婦も年金を払う」時代が来るって本当?

執筆者 : 柘植輝

会社員の夫に扶養されている「専業主婦も年金を払う」時代が来るって本当?
2023年5月、労働組合の中央組織「連合」が社会保険制度の見直しをめぐって、第3号被保険者制度の廃止を検討するべきという考え方の方向性を示しました。
 
これを受けて、会社員などに扶養されている専業主婦であっても、今後は年金の保険料の負担が生じる可能性があるのではないかとメディアやSNSで話題となっています。
 
そこで近い将来、専業主婦も年金の保険料を自身で払う時代が来るのか考えてみました。

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柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

第3号被保険者とは

第3号被保険者とは国民年金の加入者のうち、会社員や公務員といった厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている配偶者で、原則として年収130万円未満の20歳以上60歳未満の方が該当します。
 
専業主婦などの第3号被保険者は国民年金に加入しているものの、保険料は配偶者が加入する厚生年金が一括で負担し、自身で納める必要はありません。保険料を自身で払わなくても将来は老齢基礎年金を受け取れるため、単身世帯や共働き世帯などから「不公平である」と批判されることもあります。
 

第3号被保険者の範囲は狭くなってきている

第3号被保険者の対象となる範囲は徐々に狭くなってきています。
 
2023年時点では、パート・アルバイトとして扶養の範囲内(年収130万円未満)で働く主婦の方でも、勤務先の従業員数(厚生年金の被保険者数)が101人以上で下記のすべての条件に当てはまる場合、勤務先で厚生年金と健康保険に加入し、第2号被保険者として保険料を納めることになっています。


・週の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上
・2ヶ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない

勤務先の従業員数については、2016年10月から501人以上、2022年10月から101人以上と、社会保険適用の対象となる企業が広がりました。
 
さらに2024年10月からは従業員数51人以上へと対象が段階的に拡大し、第3号被保険者として扶養の範囲で就労できる条件は限られてきています。そして、今後もこの傾向は強まっていくことが考えられます。
 
厚生労働省が公開している「第4回社会保障審議会年金部会」(2023年5月開催)の資料では、社会保険の適用拡大について「企業規模要件を撤廃し、50人以下の企業に対しても被用者である者には被用者保険を適用すべき。」「第3号被保険者制度の縮小・見直しに向けたステップを踏んでいくことが必要であり、引き続き、この方向性に沿った対応を進めていく必要がある。」と記載されています。
 
なお、同資料によると2022年10月に社会保険適用の企業規模が101人以上へと拡大された際、厚生年金と健康保険の加入対象となった第3号被保険者のうち48%と約半数が、手取りが減るなどの理由から労働時間を減らして加入を回避したとあります。
 

専業主婦も年金の保険料を払う時代が来る?

こういった流れを見ていると、専業主婦も年金保険料を払う時代が来るという可能性は決して低くはなさそうです。年金財源が逼迫(ひっぱく)していることや共働き世帯の増加、生産年齢人口の減少などから、国としては1人でも多く年金保険料を納めてほしいと考えるのが自然でしょう。
 
実際、社会保障審議会年金部会の資料においても、上記を踏まえて将来的に第3号被保険者を縮小していく方向性が述べられています。
 
また、専業主婦など無就業の第3号被保険者については、国民年金保険料の免除者のように一定額の給付のみの保障とすることや、配偶者の所得によっては保険料を負担してもらうといった意見も挙げられており、そう遠くない将来、専業主婦も年金保険料を支払うことになるかもしれません。
 

まとめ

近年、パート・アルバイトといった短時間労働での社会保険の適用範囲が拡大しています。
 
また、第3号被保険者に対する国の捉え方や今後についての方向性、そして年金の財源や少子高齢化といった問題を考えると、社会保険制度の改正によって専業主婦も年金保険料を負担する時代が来る可能性はあるでしょう。
 

出典

厚生労働省 被用者保険の適用拡大
厚生労働省 令和2年年金制度改正法等において指摘された課題
日本年金機構 社会保険適用拡大ガイドブック
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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