年金を75歳から受け取ると、金額が「84%」アップ! でも「1.8%」の人しか利用しない理由とは?

配信日: 2023.08.03

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年金を75歳から受け取ると、金額が「84%」アップ! でも「1.8%」の人しか利用しない理由とは?
老後不安を解消する方法の1つに、老齢年金を繰り下げて年金額を増やすことがあります。繰下げ受給を検討する人は増えていますが、実際に年金を受給している人のうち、繰下げ受給をしている人の割合は1.8%しかいません。
 
本記事では、繰下げ受給者があまり多くない理由について解説します。年金の受給方法を選択するときの参考にしてください。
西岡秀泰

執筆者:西岡秀泰(にしおか ひでやす)

社会保険労務士・FP2級

1ヶ月年金を繰り下げると年金額は0.7%増額

老齢年金の繰下げ受給とは、原則65歳である年金の受給開始時期を遅らせることで年金額を増やす受け取り方法です。受給開始時期は66歳から75歳まで(1年間から10年間)、月単位で任意に繰下げをすることができます。
 
1ヶ月繰り下げると年金額は0.7%増額するので、10年間繰り下げると年金は84%も増額します。年金額が少ない人や老後の蓄えに不安を感じる人にとっては、効果的な老後対策といえるでしょう。
 

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年金受給者の受け取り状況

厚生労働省年金局の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢基礎年金受給者のうち、繰下げ受給している人の割合は1.8%に過ぎません。本来の65歳受給の割合が87%、65歳より早く受け取る繰上げ受給の割合が11.2%です。
 
老齢厚生年金については、繰下げ受給している人の割合は1.2%とさらに低い状況です。
 

繰下げ受給の利用者が少ない3つの理由

老後生活に不安を感じ繰下げ受給を検討する人は増えていますが、実際に繰下げをする人の割合が1.8%しかないのはどうしてでしょう。3つの理由を紹介します。
 

加給年金がもらえなくなる

繰下げ受給をする人が少ない1つ目の理由は、繰下げをすると「加給年金」がもらえなくなり損をすることがあるからです。
 
加給年金は、厚生年金に20年以上加入した人に生計を維持されている年下の配偶者や子がいる場合、被保険者が65歳になった時点から配偶者が65歳になるまで(子どもは18歳、障がいの状態によっては20歳まで)の期間、老齢厚生年金に加算して支給されます。
 
しかし、繰下げ期間中は加給年金が支給停止(もらえない)となるのです。
 
加給年金額は年間39万7500円(2023年度・毎年更改)と高額です。繰下げによって年金額が増えても、加給年金を受給できないと総受給額が減ってしまうこともあります。
 

繰下げをする経済的余裕がない

2つ目の理由は、繰下げ受給をしたくても現在の経済状況から年金を受給せざるを得ないことです。
 
繰下げをするには、65歳以降の生活を賄うために年金以外の収入が必要です。65歳で定年になったり継続雇用が終了したりして十分な収入が得られない場合、年金に頼らざるを得ません。
 
年金を繰り下げるには、65歳以降も仕事を継続して受給開始までの生活費を稼ぐ必要があります。65歳以降も仕事をする人の割合は年々増加しており、内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、65~69歳の労働力人口比率(人口に占める労働力人口の割合)は50%を超えています。
 

早くもらわないと損をする

3つ目の理由は、早く年金をもらわないと損をすると感じる人がいることです。損をすると感じる理由は人によって異なりますが、主な理由は次のとおりです。

・年金財政が厳しいことから「年金制度が破綻する」「給付水準が下がる」と思っている
・早期に寿命を迎えると受給期間が短くなる(受給総額が少なくなる)
・よくわからないが、もらえるものはもらっておくと安心 など

将来のことはわかりませんが、長生きするほど繰下げをしたほうが総受給額は多くなるのが一般的です。
 

年金の受給方法は慎重に検討しよう

繰下げ受給には年金額を増やすメリットがある一方、加給年金がもらえない、早死にすると受給期間が短くなるなどのデメリットもあります。それぞれの状況に応じて、いつから年金を受給するか慎重に検討しましょう。
 
ただし、長生きリスク(長生きして生活費が足りなくなる)対策として、65歳以降も仕事を続けて繰下げにより年金額を増やすことは効果的です。
 

出典

日本年金機構 年金の繰下げ受給
厚生労働省年金局 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
日本年金機構 加給年金額と振替加算
内閣府 令和5年版高齢社会白書(全体版)
 
執筆者:西岡秀泰
社会保険労務士・FP2級

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