更新日: 2023.08.19 その他年金

年収500万の夫、年収300万の妻、いわゆる「日本の平均年収」の世帯はいくら年金を受け取れる?

執筆者 : 柘植輝

年収500万の夫、年収300万の妻、いわゆる「日本の平均年収」の世帯はいくら年金を受け取れる?
夫婦共働きのケースでは、例えば夫の年収が約500万円、妻の年収が約300万円など、日本の平均収入に概ね該当する世帯も少なくないでしょう。
 
ここでは老後の生活費やライフプランを考える上での参考として、現役時代、夫婦のいずれも平均的な収入であった世帯が得られる年金額について考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

夫婦共働きで平均的な収入の世帯が受け取れる年金額を試算

国税庁の「民間給与実態統計調査」(令和3年分)によれば、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与について、男性は545万円、女性302万円となっています。
 
夫婦共働きの世帯で、夫の年収が500万円、妻の年収が300万円というケースは、それぞれ男女の平均的な収入にほぼ該当します。
 
では、この夫婦2人の世帯が将来受け取る年金額はどれくらいになるでしょうか。厚生労働省の「公的年金シミュレーター」を利用し、以下の条件で試算してみます。

・夫婦ともに1978年9月1日生まれ
・夫婦ともに20歳から22歳までは学生として国民年金に加入
・夫婦ともに23歳から60歳まで会社員として厚生年金に加入して就労
・就労期間全体の平均年収は夫が500万円、妻が300万円
・年金受給は65歳から

簡略化した条件での試算の結果では、夫が受け取る年金の見込み受給額は年額180万円となり、月額換算で15万円です。また、妻は年額141万円、月額換算では11万7500円で、夫婦2人分の1ヶ月当たりの年金額は26万7500円となります。
 

夫婦2人、月額26万7500円の年金で老後に生活できる?

老後に受け取れる夫婦2人分の年金額の目安を確認したところで、その金額があれば年金収入だけで生活できるのか考えていきましょう。
 
総務省の「家計調査報告」(令和4年)による、65歳以上の夫婦のみ無職世帯での1ヶ月の総支出額は平均で26万8508円です。
 
【図表】


 
※総務省 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要より抜粋
 
統計上の総支出額は、現役時代に平均的な収入があった夫婦2人分の年金額の目安(月額26万7500円)に近い金額となっているため、ライフスタイルなどによりますが、老後に年金だけで生活することも不可能ではないといえます。
 
また、老後も働いて年金以外で収入を増やしたり、老後に向けて蓄えてきた資金を切り崩して生活費などに充てることができれば、より安定した老後の生活を送ることができるでしょう。
 

個別の事情によっては年金額が低くなることもある

年金の受給額は現役時代の年収だけでなく、働き方など個別の事情によっても大きく変化します。
 
例えば年収が500万円、300万円の夫婦であっても、自営業などで国民年金のみに加入していた場合、老後に受け取れるのは老齢基礎年金のみです。そのため、世帯年収が統計による平均程度でも、厚生年金に加入している同じ年収の世帯に比べると受け取る年金額は少なくなります。
 
また、厚生年金の受給額はおおむね加入期間と収入に比例するので、夫婦のどちらかの年収が下がれば年金額も減少することになります。例えば、夫の平均年収が50歳から60歳までの間は500万円から360万円に下がったという条件で試算すると、年金額は年間172万円で8万円減少します。
 
また、前述した年金額の試算では夫婦ともに60歳まで厚生年金に加入しているという条件でしたが、妻が51歳以降は夫の扶養内(国民年金第3号被保険者)でのパート勤務に働き方を変えた場合、妻が受け取れる年金は年額124万円で、会社員として就労し続けたケースでの試算と比べて17万円の減少となります。
 

年金額を試算する場合は過去の年金加入記録も考慮すること

会社員が受け取る厚生年金は、加入期間と収入に概ね比例します。会社員で年収500万円の夫、年収300万円の妻という、統計による男女別の日本の平均収入に近い夫婦共働き世帯の場合、あくまで簡単な条件での試算結果ですが、夫婦2人分で月26万7500円程度の年金が将来受け取れると想定されます。
 
また、現役時代の平均年収が同じであったとしても、過去の年金の加入履歴や今後の働き方によっては年金額が異なります。
 
自分たちが将来受け取れる年金額の目安を知りたいときは、年金の加入履歴や収入などの条件に応じ、公的年金シミュレーターや日本年金機構の「ねんきんネット」で試算を行ってください。
 
より具体的な年金見込額や年金加入記録を確認したいという場合は、最寄りの年金事務所に問い合わせることもできます。
 

出典

国税庁 令和3年分 民間給与実態統計調査
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編) 2022年(令和4年)平均結果の概要
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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