【1人1年金の原則】父と母が亡くなった…「遺族年金」は父母2人の分を受け取れないの?
配信日: 2023.08.23
今回は、この1人1年金の原則の内容を確認し、特例的に2つの年金がもらえるケースを解説し、遺族年金がダブルで受け取れるかを解説します。
執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
1人1年金の原則とは?
みなさんが老後に受け取る公的年金は、支給事由が異なる2つ以上の年金給付を受けられるようになった場合、原則として、どちらか1つの年金を選ばなければなりません。この支給事由には、老齢給付、障害給付、そして遺族給付の3つがあります。
この原則に従えば、例えば、今まで遺族厚生年金を受給していましたが、63歳になって特別支給の老齢厚生年金の受給資格を得た場合には、どちらか1つの年金を選択する必要があります。つまり、どちらかたくさん支給を受けることができるほうを選択することになります。
このように、2つの年金受給資格を得た場合には、「年金受給選択届出書」をお近くの年金事務所または街角の年金相談センターに提出し、どちらかの年金を選択する必要があります。
ただし、支給事由(老齢、障害、遺族)が同じであれば、次の3つのケースは1つの年金とみなし、2つの年金を合わせて受け取ることができます。
(1) 遺族給付 :遺族厚生年金(遺族共済年金)および遺族基礎年金
(2) 老齢給付 :老齢厚生年金(退職共済年金)および老齢基礎年金
(3) 障害給付 :障害厚生年金(障害共済年金)および障害基礎年金
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父母の遺族年金をダブルで受給できるか?
1.特例的に2つの年金がもらえるケース
いままで見てきたように、1人1年金の原則により、支給事由が異なる2つ以上の年金を受け取ることができませんが、65歳以降は、特例的に支給事由が異なる2つ以上の年金を受給できる場合があります。
(1) 老齢給付と遺族給付
■老齢基礎年金と遺族厚生年金
65歳以上で老齢基礎年金を受けていて、遺族厚生年金の受給資格が発生した場合には、老齢給付と遺族給付と支給事由が異なりますが、2つの年金をあわせて受給できます
■老齢厚生年金と遺族厚生年金
65歳以上で老齢厚生年金と遺族厚生年金を受ける権利がある場合には、ご自身の老齢厚生年金が支給されます。さらに老齢厚生年金より遺族厚生年金額が高い場合に、遺族厚生年金として、その差額を受けることができます。
ただし、遺族厚生年金より老齢厚生年金の年金額が高い場合は、遺族厚生年金は受け取れず、老齢厚生年金のみ受給できます。
(2)老齢給付と障害給付
障害基礎(厚生)年金を受けている方が、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給できるようになった場合には、65歳以後において、下記の中から選ぶことが可能です。
■障害者厚生年金+障害者基礎年金
■老齢厚生年金+老齢基礎年金
■老齢厚生年金+障害基礎年金
(3)障害給付と遺族給付
障害基礎(厚生)年金を受けている方が、遺族厚生年金を受けられるようになった場合には、65歳以後において、下記の中から選ぶことが可能です。
■障害厚生年金+障害基礎年金
■遺族厚生年金+障害基礎年金
2.父母の遺族年金の取り扱いは?
父と母が亡くなって、それぞれの遺族年金を受給する資格があった場合には、たとえ、同じ支給事由であっても2つ以上の遺族年金を受けられるときは、1人1年金の原則が適用され、父の遺族年金か母の遺族年金のいずれか1つの年金を選択することになります。
遺族年金に関するその他の例として、夫(配偶者)が亡くなったことで遺族厚生年金を受けていた妻が、子が亡くなり新たに遺族厚生年金を受けられるようになった場合でも、1人1年金の原則が適用され、2つの厚生年金をあわせて受けることはできず、どちらか1つを選択しなくてはなりません。ご自身の状況において不明なことがある場合は、年金事務所等に確認してみましょう。
出典
日本年金機構 年金の併給または選択
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー