更新日: 2023.08.24 その他年金

「長生きする気はないから、貯金ゼロ!」年金月額12万円のおひとりさまは、貯金無しで老後を乗り切れるのか

執筆者 : 柘植輝

「長生きする気はないから、貯金ゼロ!」年金月額12万円のおひとりさまは、貯金無しで老後を乗り切れるのか
「長生きする気もないし、生涯独身の予定だから貯金をしていない。だから将来は厚生年金で十分生活できると思っている」そんな方から先日、将来毎月12万円の年金だけで本当に生きていけるかと相談がありました。
 
おひとりさまが毎月12万円の年金で生活していくことができるか考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

おひとりさまとはいえ、毎月12万円のみの生活は簡単ではない

まず、「おひとりさまであれば毎月12万円の年金のみで生活できるのか」という点について考えていきましょう。この点ですが、いくら長生きしないとはいえ、一般的な生活は難しく、かなり節制した生活が必要になるでしょう。
 
図表

出典:総務省統計局 家計調査報告(家計収支編) 2022年(令和4年)平均結果の概要
 
総務省統計局の「家計調査報告」によれば、令和4年における65歳以上の単身高齢者における月の平均的な支出額は15万5495円となっており、12万円の年金収入のみでは毎月3万円以上不足します。
 
また、消費支出のうち住居費を見てみると、割合から計算して、1万2739円程度となっています。地域にもよりますが、賃貸住宅に住みつづける予定であれば、毎月の住居費を1万円台で済ませられる可能性は低く、なおさら月12万円での生活は困難を極めるでしょう。
 
月12万円での老後の生活は、現在12万円でも生活できるという人でもない限り、無謀といえるでしょう。長生きしないからといって老後、毎月の生活費が極端に小さくなることは基本的にないことをまずは知っておくべきです。
 

就労も加味すれば貯金なしでも老後を乗り切れる可能性は高い

月12万円の年金がある場合、年金を受け取りつつ就労して4万円程度稼げば、貯金なしでも老後を乗り切れる可能性が高いです。長生きしないという前提であれば、大きなけがや病気を負うという想定外の事態が起こらない限り、生活していくことも可能でしょう。
 
時給950円のパートで働いたとして、毎月4万円稼ぐには、おおよそ月に43時間程度働くことが必要です。一般的な正社員が、残業を除いても週に40時間、月160時間は働くことを考えると、その4分の1程度です。就労を前提にできれば、貯金ゼロでも月12万円の年金と合わせて生活していくことができるでしょう。
 

リスクを踏まえると多少の貯金は欲しい

ただ、長生きする・しないはそう簡単に自分でコントロールできるものではありません。突然の病気やけがは、長生きとは関係なく訪れることもあります。
 
その点を考えると、長生きする気はないといっても、よほど日々の生活が圧迫されているような場合を除き多少の貯金はしておくべきでしょう。貯金は老後を迎えるまでの間においても、万が一の備えになります。
 
とはいっても、今から無理に1000万円、2000万円と、いきなり多くの金額を目標とする必要もありません。まずは、軽い入院などに備えて1ヶ月分から2ヶ月分の生活費をためて、それが達成できたら、大きめのけがや病気で療養が必要な場合に備え、半年分の生活費をためてみましょう。
 
そして可能であれば、長期療養に備えて1年から2年分の生活費を……といった具合で、少しずつ貯金をしていくのが理想です。
 

長生きする気はなくとも多少の貯金はしておきたい

「長生きする気はないから」と貯金ゼロでも、12万円の年金収入が毎月得られるのであれば、年金を受け取りながら就労して収入を得たり、生活費を大きく削ったりすることで、老後を乗り切れる可能性があります。
 
ただ、人生は何が起こるか分かりません。考えが途中で変わったり、病気やけがによって計画が想定どおりにいかなかったりする可能性もあります。
 
老後について考えるのは人生において大切なことです。しかし、「長生きする気はないから」と簡単に決めると、状況が変化し想定外の出来事が起きたとき、後悔することにもなりかねません。「おひとりさまで長生きする気もないから」と刹那的に貯金なしで老後を乗り切ろうとするのではなく、万が一に備えて多少なりとも貯金をしておくべきでしょう。
 

出典

総務省統計局 家計調査報告(家計収支編) 2022年(令和4年)平均結果の概要
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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