更新日: 2023.08.25 その他年金

将来は夫婦2人で「月30万円」の年金をもらいたい! 現役時代の年収はいくら必要? 妻の働き方別に解説

将来は夫婦2人で「月30万円」の年金をもらいたい! 現役時代の年収はいくら必要? 妻の働き方別に解説
公共財団法人生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人で老後を送る際に必要と考える最低額は平均23万2000円、ゆとりある老後生活費は平均37万9000円となっています。
 
そのほぼ中間にあたる30万円を、「ほどほどの生活」をするために必要な額と仮定した場合、月30万円の年金を将来受給するためにはどうすればいいのでしょうか。
 
本記事では夫婦合わせて30万円の年金を受け取る方法について、夫を主な稼ぎ手とした場合の妻の働き方別に3パターン紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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夫婦で30万円の年金を受給するための働き方3パターン

日本年金機構によると令和5年度の夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は毎月約22万4000円です。これは夫婦2人の国民年金と夫の厚生年金を合計した金額で、妻が専業主婦の場合はこの数字となります。この額は冒頭で示した夫婦2人で老後を過ごすための最低必要額ギリギリで、かなり不安な数字と言えるでしょう。
 
では夫婦で毎月30万円の年金を受け取るためにはどうすればいいのでしょうか。今回は妻の働き方が「正社員」「パート」「専業主婦」だった場合の試算を紹介します。
 
なお、今回の記事で示す金額はあくまでも平均値等を参考にした一例です。年金の受給額は物価によっても変動しますし、少子高齢化が続く中で今後も現在と同じ水準で受給できるとは限りません。あくまでも現段階の参考としてお読みください。
 
※文中に出てくる「国民年金」は正確には「国民年金の老齢基礎年金」のことです。わかりやすくするため本記事では国民年金と表記しています。
 

妻が正社員の場合

妻が正社員で夫婦共働きであった場合、夫婦共に40年間厚生年金に加入したときの年金はいくらになるのでしょうか。
 
国税庁が行った2021年分民間給与実態統計調査の結果によると正社員の平均給与は男性が約570万円、女性が約389万円です。今年65歳になる夫婦が40年間この給与だったと仮定して厚生労働省の公的年金シミュレーターを使用して試算してみると、65歳から受け取る場合の年金見込み受給額は男性が年202万円(月額約16万8000円)、女性が年164万円(月額約13万7000円)となりました。
 
これらの金額を合計すると夫婦合わせた受給額は30万5000円となり、毎月30万円の年金を受け取りたいという希望がかなうことがわかります。実際の給与によって前後しますが、妻が正社員で共働きという働き方は将来30万円の年金を受け取るための近道と言えるでしょう。
 
家事育児をしながら共働きを続けるのはとてもハードなため、妻が働き方を変えるのはよくある話です。しかし将来の年金額を考えると夫婦共働きは最強のパターンです。ぜひ夫婦で協力して家事育児を分担し、長く働き続けてください。
 

妻がパート勤務の場合

先にも示した国税庁の2021年分民間給与実態統計調査の結果によると、非正規雇用の女性の平均年収は約162万円です。今年65歳になる女性が40年間この給与で働いていたと仮定して公的年金シミュレーターで試算すると、受け取れる年金額は年間116万円(月額約9万7000円)となります。
 
夫婦で月30万円の年金を受け取りたい場合は、夫が約20万円の年金を受け取る必要があります。国民年金として約6万6000円受け取れるので、あと約14万円必要です。今回は約14万円を厚生年金で受け取るために必要な金額を試算します。
 
厚生年金の年額=平均年収÷12×0.005481×加入月数
 
の計算式でおおよそ算出できます。
 
今回は毎月14万円を受け取る場合を算出したいので、年額にすると14万円×12ヶ月で168万円です。先の計算式に当てはめると、以下のようになります。
 
168万円=平均年収÷12×0.005481×480ヶ月(12ヶ月×40年)
平均年収=168万円×12÷0.005481÷480ヶ月=約766万円

 
つまり、月14万円の厚生年金を受け取りたい場合、賞与も含んだ年間の給与を約766万円にする必要があります。国税庁が発表している男性の平均給与は約570万円なので平均の約1.35倍とかなりの高額になります。
 
夫の給与を1.35倍にするのはなかなか厳しい、しかし年金の受給額を上げたい場合、繰下げ受給することが考えられます。繰下げ受給をすると1ヶ月につき0.7%増額された年金を受け取ることができます(1年で8.4%)。
 
前述したとおり、年収が男性の平均である約570万円だった場合の年金受取額は月約16万8000円、非正規雇用女性の平均である約162万円だった場合の年金受取額は月約9万7000円です。つまり妻がパート勤務など非正規雇用の場合の夫婦の年金受取額は約26万5000円です。
 
これを繰下げ受給の制度を使って増やすことを考えます。年金の受給開始を夫婦それぞれ1年半(18ヶ月)遅らせると12.6%増しとなり、月々の受取額は夫婦合わせて約29万8000円になり、ほぼ30万円の受給が実現します。
 
また、そのほかの方法として、妻側の厚生年金を多く受け取るためには給与を上げること、年金に加入する期間を延ばすことが有効です。
 
以上を整理すると、妻がパートで働きながら夫婦で月30万円の年金を目指すためには以下の方法があります。

・夫が年収766万円を目指す
・繰下げ受給をする(目安1年半)
・妻の給与を上げる、年金加入期間を伸ばす

 

妻が専業主婦の場合

妻が専業主婦の場合、妻側の年金受取額は国民年金の約6万6000円です。そのため30万円を受け取るためには夫が約23万円の年金を受け取る必要があります。妻と同じく夫も約6万6000円は国民年金で受給するため、残りの約16万円を厚生年金で受け取れれば夫婦で30万円という目標が達成できます。
 
先ほどの計算式に当てはめると、以下のとおりです。
 
192万円(16万円×12)=平均年収÷12×0.005481×480ヶ月(12ヶ月×40年)
192万円×12÷0.005481÷480ヶ月=約876万円

 
国税庁の調査によると、年収が800万円を越えるのは全男性の15%とかなり少数です。年収800万円超を実現させるのは現実的に難しいと感じる人も多いでしょう。
 
では平均的な給与で働く夫、専業主婦の妻という夫婦の場合、受給開始をどれくらいの期間繰り下げれば月30万円になるのでしょうか。
 
前述したとおり、年収が男性の平均である約570万円だった場合の年金受取額は月約16万8000円、専業主婦の場合の年金受取額は国民年金の約6万6000円です。つまり妻が専業主婦の場合の夫婦の年金受取額は約23万4000円です。
 
これを繰下げ受給の制度を使って増やすことを考えます。年金の受給開始を夫婦それぞれ3年半(42ヶ月)遅らせると29.4%増しとなり、月々の受取額は夫婦合わせて約30万3000円になり、ほぼ30万円の受給が実現します。
 
以上を整理すると、妻が専業主婦の場合、月30万円の年金を得るためには以下のどちらかが必要です。

・夫が年収876万円を目指す
・繰下げ受給をする(目安3年半=42ヶ月)

 

まずは夫婦で加入している年金をチェックして計画的な老後を過ごそう

「ほどほどの老後」を送るためには現役時代から計画的に考え、備えておく必要があります。年収アップが難しい場合は、細く長く働き続けて受給する年齢を遅らせましょう。また、夫婦で協力して妻が受け取る厚生年金の金額を高めるのも重要です。
 
自身が今まで払った年金の記録は毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。人生100年時代、年金の受給額をもとに将来のライフプランを立ててください。
 

出典

公共財団法人生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?
国税庁 令和3年分民間給与実態統計調査
厚生労働省 公的年金シミュレーター
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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