妻が障害厚生年金を受給中、夫の老齢年金に影響はある?
配信日: 2023.08.27 更新日: 2023.08.28
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
夫婦それぞれの年金
Aさんは65歳が老齢年金の支給開始年齢で、65歳になってから老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建てで受給します。
一方、妻・Bさんは、障害等級1級・2級が対象を対象とする障害基礎年金は受給していませんが、障害等級3級であることから障害厚生年金を受給中です。
Bさんはこのまま65歳までは障害厚生年金を受給し続け、65歳になると、(1)障害厚生年金、(2)老齢基礎年金+老齢厚生年金、いずれか選択して受給します。(2)の合計額が(1)よりも高くなることによって、65歳からは(2)を選択受給することにもなるでしょう(この場合(1)は支給停止となります)。
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夫の配偶者加給年金が支給停止に
2階建ての老齢年金の2階部分・老齢厚生年金には、生計維持された65歳未満の配偶者がいることで加算される、配偶者加給年金があります。その加算額は年額39万7500円(2023年度の場合)となっています。
すでに20年以上厚生年金に加入し、65歳から老齢厚生年金を受けられる本人に年下の配偶者がいる場合、本人が65歳(老齢厚生年金の受給開始時)になってから加算され始め、原則、年下の配偶者が65歳になるまで加算されます。生計維持とは、本人と配偶者が同居等によって生計が同じで、さらに配偶者の年収が850万円未満などである場合を指します。
しかし、その配偶者が障害厚生年金あるいは障害基礎年金を受給していると、当該配偶者加給年金は支給停止となります。AさんBさん夫婦の場合、妻・Bさんは障害厚生年金を受給しています。そのため、Bさんについての生計維持はあっても、夫・Aさんの配偶者加給年金は支給停止となって加算されません(【図表1】)。
配偶者の障害が軽くなった場合は加算
AさんとBさんは10歳差。Aさんの65歳からBさんの65歳までは10年間あります。もし、その10年の間に、Bさんの障害が軽くなった(障害等級3級不該当)と認定されると、その障害厚生年金が支給停止されます。しかし、これによってAさんの配偶者加給年金は加算されます(【図表2】)。
障害の種類によっては障害状態が軽くなることもあれば、重くなることもあるかもしれません。配偶者に障害厚生年金や障害基礎年金の受給がある場合、加給年金の加算がなくなることも想定しておく必要があるでしょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー