更新日: 2023.08.28 その他年金

月収10万円のパートを始めました。5年くらい働いたら将来の年金はどのくらい増えますか?

執筆者 : 大竹麻佐子

月収10万円のパートを始めました。5年くらい働いたら将来の年金はどのくらい増えますか?
社会保険の適用が段階的に拡大しつつあり、パートでの働き方にも変化が見られます。
 
社会保険の加入義務が生じるケースが増え、また今後さらに増える見込みです。将来の年金額が増えるとは言え、給与から差し引かれる社会保険料の金額を負担に感じる方は、パートに限らず多いものです。
 
もし月収10万円のパートで5年間働いたら、具体的にどのくらい年金は増えるのでしょうか。今後の働き方を考える上でも参考にしてみてください。
大竹麻佐子

執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)

CFP🄬認定者・相続診断士

 
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
 
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
 
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
 
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/

社会保険の適用拡大って?

そもそも社会保険とは、病気やけが、出産、死亡、老齢、障害、失業などで生活の困難に遭遇した場合に、一定の給付を行い、その生活の安定を図ることを目的とした制度です。公的医療制度や公的年金制度などが代表的な例として挙げられます。
 
このうち公的年金は、給与などの勤労収入に代わって高齢期の生活を支える収入源と言えます。さらなる深刻化が懸念される人口減少や超高齢社会にむけて安心できる体制を整備し、財源を確保するとともに、働き方や雇い方の選択により不公平が生じないよう中立的な制度であることが必要です。
 
厚生年金は、適用対象となることで定額の老齢基礎年金に加え、老齢厚生年金も受給することができるようになります。報酬に応じた老齢厚生年金の給付は、年金制度における所得再分配機能の維持も期待できるものです。
 
つまり、パートなどの短時間労働者についても、社会保険の適用により年金等の保障が手厚くなるということです。
 
適用事業所で労働日数・時間が正社員の4分の3未満で働くパート・アルバイトなどの短時間労働者については、企業規模要件、時間要件、賃金要件などにより段階的に社会保険加入義務の適用拡大が進められてきました。(※1、2)
 
2022年10月以降、従業員101人以上の会社に勤務する短時間労働者のうち、以下のすべての要件をみたす人に社会保険加入義務があります。


(1)週の所定労働時間が20時間以上
(2)雇用期間が2ヶ月を超える見込み
(3)月額の賃金が8万8000円以上(通勤手当、残業代含まず)
(4)学生ではない(定時制等のぞく)

また、2024年10月以降、対象となる企業規模は「従業員51人以上の会社」へとさらに拡がります。
 

どれくらい増える? ~年金額の計算方法~

社会保険に加入して厚生年金の被保険者となった場合、65歳以降に受け取る老齢厚生年金の報酬比例部分の金額は、報酬額や加入期間等に応じて年金額が計算されます(※3)。計算式は図表1のとおりです。
 
【図表1】

【図表1】

 
月収10万円のパート収入は、下の厚生年金保険料額表(※4)から等級2に該当するため、標準報酬は9万8000円、負担する保険料は毎月8967円となります。
 
【図表2】
【図表2】

 
5年(60月)間働いた場合の年金額は3万2228円です。月あたりにすると2685円増える計算です。
 
なお、老齢厚生年金は、老齢基礎年金の上乗せとして受給することのできる年金です。老齢基礎年金の受給額は、20歳から60歳までの40年間すべて納付した場合の満額(令和5年度は79万5000円)から未納期間分を差し引いて受給額が算出されます。
 

長く働けば、受け取れる年金は、さらに増える

月あたりの金額で考えると、「これだけ? 」と思われるかもしれません。給与から差し引かれる保険料負担をふまえると、ため息が出るのも理解できます。
 
ただし、上記の金額は5年間働いたケースです。計算式を見ると、一定の乗率の後に「加入月数」を乗じていることから、加入期間が長くなればなるほど金額は増えることが分かります。
 
月収10万円が20年(240月)間継続したとすると、年金額は12万8913円(月あたり1万742円)となり、長く働いて加入し続けることで年金額はさらに増えます。
 
また、働く期間が長くなることで、報酬額がアップすることも考えられます。とすると、平均標準報酬額が上がることでも年金額は増えます。
 
公的年金のメリットは、一生涯受給が続くことです。長生きすることで受給の総額は増えるのです。月あたりではわずかであっても、一生涯で受け取れる金額が増えると考えると、安心感につながりますし、社会保険加入の意味は大いにあると言えるでしょう。
 

公的年金は、生涯受け取れる

公的年金は生涯受け取れるもので、いつまで受け取れるのか受給期間の予測は難しいとしても、健康を意識した生活を送ることで、なるべく長く、なるべく多く受け取れるように対策することは可能です。
 
さまざまなライフスタイルのなかで、働き方を選ぶことができる時代となりつつあります。出産などにより働けない時期があるとしても、社会保険の適用拡大は社会全体として必要不可欠な制度であることを理解したうえで、長期的視野で人生を、また社会保険への加入を考えたいものです。
 
なお、社会保険適用にむけた拡大の取り組みは、働き方の多様化を背景に2000年(平成12年)頃より検討されてきましたが、保険料の労使折半による事業主側の負担が増えることで、経営に影響を及ぼすといった懸念等をふまえ、段階的に進められていることも理解しておきたいところです。
 

出典

(※1)厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
(※2)厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト パート・アルバイトのみなさま 社会保険適用拡大についてご案内します
(※3)日本年金機構 報酬比例部分
(※4)日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)
 
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士

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