更新日: 2023.09.04 その他年金
【男女別で試算】健康寿命まで生きた場合、「年金」は何歳から受け取るのがおトク?
そこで、年金の受給開始時期はいつがお得なのか、平均寿命ではなく健康寿命を基準として考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
健康寿命と平均寿命の違い
平均寿命とは「0歳における平均余命」です。「この年齢までは生きる可能性が高い」という年齢ではありますが、体が自由に動く「健康」については考慮されていません。
一方、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」をいいます。この年齢であれば、日常生活に健康上の制限がかかることなく、人生を楽しむことができる可能性が高いとされます。
その点を考えると、平均寿命ではなく健康寿命を基準として年金について考え、「健康で、やりたいことを楽しめる間に、より多くのお金を受け取りたい」と考えるのもよく分かります。
2019年現在、健康寿命は男性で72.68年、女性で75.38年です。平均寿命は男性で81.41年、女性で87.45年です。平均寿命に比べると男女とも、健康寿命はずいぶん低くなっています。
「ある一定のタイミングで健康状態が悪化することもあり、平均寿命まで誰しも生きることができるわけではない」と考えると、年金受給開始時期について、平均寿命ではなく健康寿命を基準として考えるのも合理的だといえます。
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年金は受給開始時期によってどう受給額が変わる?
年金は、60歳から75歳までの間で受給を開始することができます。しかし、65歳より前に早く受け取ると、1ヶ月ごとに0.4%受給額が減額されます。そして、65歳より遅く受け取ると1ヶ月ごとに0.7%増額された受給額を受け取ることになります。つまり、年金は本人の希望次第で、本来の額より-24%から+84%の範囲で金額を増減された状態で受け取ることができる、ということです。
例えば、令和3年の厚生年金の受給額の平均は、14万5665円です。年金受給額が平均的な方であれば、この受給額は、受給開始時期によって月々11万705円から26万8024円の範囲で変化するということになります。
表1
受給開始年齢 | 減額率 | 受給額 |
---|---|---|
60歳 | -24% | 11万705円 |
61歳 | -19.2% | 11万7697円 |
62歳 | -14.4% | 12万4689円 |
63歳 | -9.6% | 13万1681円 |
64歳 | -4.8% | 13万8673円 |
65歳 | 0% | 14万5665円 |
66歳 | +8.4% | 15万7901円 |
67歳 | +16.8% | 17万0137円 |
68歳 | +25.2% | 18万2373円 |
69歳 | +33.6% | 19万4608円 |
70歳 | +42% | 20万6844円 |
71歳 | +50.4% | 21万9080円 |
72歳 | +58.8% | 23万1316円 |
73歳 | +67.2% | 24万3552円 |
74歳 | +75.6% | 25万5788円 |
75歳 | +84% | 26万8024円 |
※筆者作成
健康寿命で死ぬとして、一番お得なのは何歳で受け取るとき?
では、自分が健康寿命で死ぬと仮定して、受給受給額の変化を見てみましょう。健康寿命を男性72年、女性75年として考えると、受給開始年齢から健康寿命までの間に受給可能な額は、下記のようになります。
表2
受給開始年齢 | 減額率 | 女性の受給可能額 | 男性の受給可能額 |
---|---|---|---|
60歳 | -24% | 1992万6900円 | 1594万1520円 |
61歳 | -19.2% | 1977万3096円 | 1553万6004円 |
62歳 | -14.4% | 1945万1484円 | 1496万2680円 |
63歳 | -9.6% | 1896万2064円 | 1422万1548円 |
64歳 | -4.8% | 1830万4836円 | 1331万2608円 |
65歳 | 0% | 1747万9800円 | 1223万5860円 |
66歳 | +8.4% | 1705万3308円 | 1136万8872円 |
67歳 | +16.8% | 1633万3152円 | 1020万8220円 |
68歳 | +25.2% | 1531万9332円 | 875万3904円 |
69歳 | +33.6% | 1401万1776円 | 700万5888円 |
70歳 | +42% | 1241万0640円 | 496万4256円 |
71歳 | +50.4% | 1051万5840円 | 262万8960円 |
72歳 | +58.8% | 832万7376円 | 0円 |
73歳 | +67.2% | 584万5248円 | 0円 |
74歳 | +75.6% | 306万9456円 | 0円 |
75歳 | +84% | 0円 | 0円 |
※筆者作成
意外にも、男女ともに60歳から受け取った方が、受給受給額は高くなるようです。
その差は、減額分や増額分以上に受給年数によって生じています。65歳よりも早く受け取ると減額されますが、その分より長い期間年金が受け取れます。一方、65歳より遅く受け取ると増額される分、受け取れる年数が短くなります。そのため、「健康寿命まで」という条件付きであれば、できるだけ早期に受け取った方が結果的に多く年金を受け取れる、という結論になるのです。
健康寿命で死ぬと想定するのであれば、男女とも年金は60歳から受け取るとよい
年金は60歳から受け取ると24%減額、75歳から受け取ると84%増額となるため、できるだけ遅く受け取る方がよいかもしれません。
しかし、「60歳以降、健康寿命まで」という限られた時間で考えると、減額があっても60歳から年金を受け取った方が受給可能額は多くなり、遅くなればなるほど総受給額は減っていきます。
しかし、誰も自分の死期は予見できず、健康寿命を大きく超えて生きる可能性もあります。受給開始時期を決める際は単に「健康寿命まで生きて楽しみたい」といった刹那的な理由だけではなく、健康寿命を大きく超えて生きた場合はどうするかなどもろもろのリスクを踏まえて決定すべきでしょう。
出典
e-ヘルスネット(厚生労働省) 平均寿命と健康寿命
厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
執筆者:柘植輝
行政書士