更新日: 2023.09.06 その他年金

健康診断の結果で「高血糖」とありました。糖尿病の疑いがあるのですが、「障害年金」は受給できますか?

執筆者 : 柘植輝

健康診断の結果で「高血糖」とありました。糖尿病の疑いがあるのですが、「障害年金」は受給できますか?
国民病や現代病ともいわれる、誰でも患う可能性のある病気のひとつに、糖尿病があります。糖尿病を患うと、体に障害を負ってしまい、仕事や日常生活に大きな影響を及ぼすこともあるようです。
 
そこで、高血糖と診断され、糖尿病の疑いがある場合に、障害年金を受給できるか考えてみました。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

障害年金とは

まずは障害年金の概要から確認していきましょう。障害年金とは、病気やけがによって仕事や生活に一定の制限を負った場合に受け取ることができる年金です。年金とはいえど、60歳未満の現役世代も、所定の条件に合致することで受け取ることができます。
 
原因となる病気やけがについて初めて医師などの診断を受けたときに、国民年金に加入していれば「障害基礎年金」を受け取ることになります。厚生年金保険に加入していれば、「障害厚生年金」を受け取ることになります。
 
障害基礎年金には1級と2級、障害厚生年金には1級から3級まであります。なお、障害厚生年金は3級より軽い症状の場合、一時金として障害手当金を受け取ることができます。
 

高血糖と診断され、糖尿病の疑いがあるだけでは、障害年金の受給は難しい

正直なところ、高血糖と診断され、糖尿病の疑いがある段階では、障害年金を受給することは難しいでしょう。
 
障害年金は、1級であれば日常生活の用を弁ずることを不能ならしめるような状態が該当します。例えば、両上肢の全ての指を欠いている状態や、体幹の機能に座ったり立ち上がったりすることができないほどの障害を負っているような状態です。
 
2級であれば、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度の状態であることが必要です。例えば、体幹の機能に歩くことができないほどの障害を負っている状態や、両下肢の全ての指を欠く状態などです。
 
1級や2級と比較して軽いとされる3級でも、労働が著しい制限を受けるか、労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残す状態であることが必要となっています。一般的な高血糖や糖尿病では上記要件を満たすことは難しく、糖尿病を理由に障害年金を受給することは容易ではありません。
 

具体的にどの程度の状態であれば、糖尿病を原因に障害年金を受け取れる?

では、具体的にどの程度の病状であれば、糖尿病で障害年金を受け取れるか考えてみましょう。
 
糖尿病を原因とする場合、治療を行ってもなお、血糖コントロールが困難であることが必要とされます。日本年金機構によれば、具体的に、以下の3つの条件を満たすことが必要とされています。

・90日以上のインスリン治療を行っている
・Cペプチド値、重症低血糖、糖尿病ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群のいずれかが一定の程度
・日常生活の制限が一定の程度

参考までに、「障害年金3級に該当する」と認定されるには、以下の3つに当てはまることが必要になります。

(1)検査日より前に、90日以上継続して必要なインスリン治療を行っている
(2)下記いずれかに該当すること
・意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月1回以上ある
・インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上ある
・内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、空腹時または随時の血清Cペプチド値が0.3ng/mL未満を示すもの
(3)一般状態区分表のイまたはウに該当する

【図表】


 
出典:日本年金機構 障害年金のお知らせ
 
※一般状態区分表は、日常生活の制限の程度をア~オの5段階で示した指標です。図表は区分表の一部を抜粋したものです。
 
このように、糖尿病を原因として障害年金を受け取るには、3級に該当するだけでも相当に病状が進行している必要があり、容易に障害年金を受け取れるわけではないことが分かります。
 

障害年金については年金事務所などへ相談を

高血糖と診断され、糖尿病の疑いがあるだけでは、障害年金の受給は容易ではないでしょう。障害年金の制度は複雑であり、自分の病状が障害年金の受給要件に合致するか、正確に判断することが難しい場合も珍しくはありません。受給には一定の手続きも必要となり、その手続きも人によっては難しく感じられることもあります。
 
障害年金について悩んだときや知りたいときは、最寄りの年金事務所や街角の年金相談センターへ相談してみてください。
 

出典

日本年金機構 障害年金ガイド 令和5年度版
日本年金機構 障害年金のお知らせ
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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