更新日: 2023.09.11 国民年金
国民年金保険料の支払いが厳しい… ケースごとに免除・猶予制度を紹介
そこで、第1号被保険者には保険料の免除制度があります。保険料の支払いが困難なとき滞納すると免除と違って大きな不利益を被ります。
本記事では、国民年金保険料の免除制度と納付猶予制度について、さまざまなケースで説明します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
滞納と免除の違い
保険料を支払わない点では、滞納も未納も同じです。しかし、滞納の場合、滞納した期間の保険料は、年金額に反映されず、年金受給資格期間にも反映されません。また、障害や死亡になった際の障害基礎年金や遺族基礎年金も受給できない場合があります。
一方、保険料免除の場合、免除期間も年金額に一部反映されますし、受給資格期間にも反映されます。また、障害基礎年金も遺族基礎年金も全額受給できます(図表1)。追納(後から納める保険料)に関しては、滞納保険料は2年前までしか納められませんが、免除の場合は10年前まで納めることができます。追納するメリットは本来の年金額に近づけることができる点にあります。
なお、免除が承認されると、付加年金および国民年金基金は利用できなくなりますし、さかのぼっての加入もできません。
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保険料免除・猶予の種類
保険料免除・猶予には、「法定免除」「申請免除」「産前産後免除」があります。「申請免除・猶予」には、「所得に応じた4段階の免除」「学生納付特例」「納付猶予」「失業者の特例免除」があります。
申請免除は、本人、配偶者および世帯主それぞれの前年所得が、一定の金額以下であれば、申請者本人が免除を受けることができます。
・法定免除
生活保護を受けている、障害年金1・2級を受けている方などが対象です。保険料は全額免除されます。2分の1が年金額に反映されます。
・所得に応じた4段階の免除
所得に応じて保険料の「全額免除」「4分3免除」「半額免除」「4分の1免除」があります。免除の比率に応じて年金額に反映されます。「全額免除」は2分の1、「4分の3免除」は8分の5、「半額免除」は4分の3、「4分の1免除」は8分の7の老齢基礎年金が受給できます。
・学生納付特例
前年所得が基準以下の20歳以上の学生が対象です。家族の所得の多寡は問いません。保険料の納付が全額猶予されます。年金の受給資格期間には算入されますが、年金額には反映されません。
・納付猶予
20歳から50歳未満の方で、本人・配偶者の前年所得が一定額以下の方が対象です。年金の受給資格期間には算入されますが、年金額には反映されません。
・失業者の特例免除
申請者本人、世帯主または配偶者のいずれかが退職(失業等)された方が対象です。失業等のあった月の前月から翌々年6月までの保険料が免除されます。本人の所得を除いて審査され、所得に応じた4段階の免除があります。
・産前産後免除
届出により、出産予定日(または出産日)が属する月の前月から4ヶ月間(多胎妊娠は3ヶ月前から6ヶ月間)は、保険料が全額免除になります。免除された期間も保険料を納付したものとして、老齢基礎年金の年金額に全額反映されます。
まとめ
経済的理由で保険料の支払いが困難なときは、事情に応じて保険料の免除や猶予の制度を利用できます。猶予と違って免除は老齢基礎年金の年金額に反映します。また、追納により、免除も猶予も年金額を増やすことも可能です。
経済的理由で保険料の支払いが困難なときは、滞納する前に役所の窓口に相談し、保険料の免除や猶予の制度を申請しましょう。
出典
日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。