年金の受給、「60歳開始」と「75歳開始」とで比較した場合、月々の額はどのくらい変わる?
配信日: 2023.09.12 更新日: 2023.09.15
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
年金額は受給年齢でなぜ変化する?
年金は原則65歳から受給することになっています。しかし、1ヶ月当たり0.4%減額することを条件に、60歳まで受給開始時期を早めることができます。これを「繰上げ受給」といいます。なお、60歳まで繰り上げると、年金額は24%減となります。
また、1ヶ月当たり0.7%増額することを条件に、75歳まで受給開始時期を遅らせることもできます。これを「繰下げ受給」といいます。75歳まで繰り下げると、年金額は84%も増加します。
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60歳から75歳までの間で受給開始年齢を変えると、受給額はどう変化していく?
では、60歳から75歳までの間、年金を繰り上げたり繰り下げたりして受給開始年齢を調整することで、受給額がどのように変化するのか確認してみましょう。年金の額は「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」記載の受給者の平均年金月額に準じ、厚生年金は14万5665円、国民年金については5万6479円として計算していきます。
図表1
※筆者作成
厚生年金の月額は、65歳から受給する場合は14万5665円となりますが、繰上げ・繰下げ受給した時期によっては、11万705円から26万8024円の間で変動することになります。元の金額が大きい厚生年金の場合、受給額は大きく変わります。
国民年金の場合、65歳から受給する場合は月々5万6479円となるところ、受給開始時期の繰上げ・繰下げによって、4万2924円から10万3921円の間で変動します。
国民年金は元の金額が小さいとはいえ、最大まで繰り下げると10万円を超えることになり、人によっては国民年金だけで老後の生活の大部分をカバーできるくらいに支給額が大きくなります。
結局年金はいつのタイミングで受給するべきなのか
年金が受給開始時期により変動することが分かると、なおのこと「じゃあいつから受給すればいいの?」と疑問に思うことでしょう。
この点では、「いつまで生きられるか」という寿命の予測が、ひとつの判断基準となります。繰下げ受給をして、長生きできた場合は月当たりの年金受給額は大きくなりますが、早くに亡くなると総受給額は小さくなります。
だからといって、早く受給を開始しても、月々の年金受給額が小さくなってしまいます。厚生年金を例に、年金の受給開始時期と総受給額についてまとめると、次のようになります。
図表2
※筆者作成
もし、年金の受給開始時期を総受給額で判断したいときは、自分が75歳までしか生きられないと考えられる場合は、60歳から受け取るべきでしょう。早くに亡くなってしまうとその分受給できる年数が短くなるので、受給額の減少を受け入れてでも早く受給した方がよいようです。
一方で、上記の試算の結果等を踏まえると、自分が85歳、90歳まで長生きすると考えられるのであれば、繰下げして69歳から受給した方がよさそうです。受給は遅くなるけれど、その分毎月の年金額が増えるからです。
しかし受給開始時期を70歳以降にまで繰り下げても、よほど長生きしない限り、受給が遅くなる分を増額分でカバーすることができません。そのため、繰下げのし過ぎには注意が必要です。
年金の受給額は受給時期によって増減する
年金の受給開始時期は60歳から75歳までの間で選ぶことができ、それにより受給額も増減します。もし、総受給額が最も多くなるように年金を受給したい場合は、自分が何歳まで生きるか想定し、受給開始時期を決めるようにしてください。
ただ、早く受給を開始しても長生きした場合に総受給額は小さくなる可能性がある、遅く受受給してもその間の収入をどうするか、といったように、受給開始時期を決めるに当たってはさまざまな問題があります。
年金の受給開始時期に悩んだときは、総受給額だけでなく、その間の生活費など諸般の事情を踏まえて、よく考えて決定するようにしてください。
出典
厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 年金の繰上げ受給
執筆者:柘植輝
行政書士