更新日: 2023.09.21 その他年金

夫の年金「月20万円」を頼りにしてきた70代妻は、夫の死後「遺族年金」をいくら受け取れる?

夫の年金「月20万円」を頼りにしてきた70代妻は、夫の死後「遺族年金」をいくら受け取れる?
夫の年金を頼りに生活している妻にとって、万が一夫に先立たれた後、年金がどうなるのかは気になる事項でしょう。
 
そこで、夫が受け取る月20万円の老齢厚生年金を頼りに生活してきた70代の妻のケースを例に、遺族年金について考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

夫の遺族年金と自身の老齢厚生年金は併給できることがある

日本の公的年金制度は、1人1年金を原則としています。そのため、複数の支給事由が異なる年金を受け取れるようになった場合、自身でどの年金を受け取るのか選択する必要があります。例えば、障害年金(けがや病気を原因として受け取れる)と老齢年金(老後受け取れる年金)とを受け取れる場合、どちらか一方を選んで受け取ることになるという具合です。
 
しかし、例外的に2つの年金を併給できる場合があります。それが65歳以降に受け取る「老齢年金」と、「遺族年金」です。具体的には、「遺族厚生年金と老齢基礎年金」という組み合わせや「遺族厚生年金と自身の老齢基礎年金+老齢厚生年金」という組み合わせであれば、合わせて受け取ることができます。
 
しかし、「遺族厚生年金と自身の老齢基礎年金+老齢厚生年金」という組み合わせの場合、支給額に調整がなされます。両者について、まずは優先して自身の老齢厚生年金が支給されます。その上で遺族厚生年金は、老齢年金の合計額より高い場合に差額のみの支給となります。
 
【図表】


出典:日本年金機構 年金の併給または選択
 

夫が月20万円の老齢厚生年金を受け取っている場合、妻が受け取る遺族年金の額は?

遺族厚生年金の支給額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3になります。つまり、夫の老齢厚生年金の支給額次第で、妻が夫の死後に受け取る遺族厚生年金の金額が変わる、ということになります(妻が老齢厚生年金や共済年金を受け取れる場合は別途適用される計算式があります)。
 
では、簡単に下記の条件で試算してみましょう。

・夫の老齢厚生年金自体は14万円(20万円の内6万円が国民年金と仮定)
・妻は老齢基礎年金(国民年金)のみの受給
・夫の老齢厚生年金額=報酬比例部分の額と簡易的に計算

すると、夫の老齢厚生年金の支給額14万円の4分の3に当たる、10万5000円が、毎月受けられる遺族厚生年金の額と想定できます。支給される遺族厚生年金に老齢基礎年金部分は反映されないため、存命中に毎月20万円の年金収入を得られていたことを考えると、小さな金額に感じられるかもしれません。
 
なお遺族厚生年金と、妻自身が受け取っている老齢基礎年金とは併給が可能です。仮に妻自身の老齢基礎年金月額が6万円だとすると、それも含めて毎月16万5000円の収入を得られることになります。
 

自身の年金と遺族年金だけで生活できないときは?

自身の年金と夫の遺族年金だけでは生活できない、という場合には、何らかの公的支援制度を頼ることが必要になります。就労も選択肢となりますが、体調によっては問題解決に至らないことも考えられるからです。
 
その際に頼れる制度として「生活困窮者自立支援制度」があります。この制度は、経済的に生活が困窮している方に対して、その状況から脱するための諸支援をする制度です。相談窓口は全国に設置されているので、まずは市区町村役場の窓口に、この制度を利用できないか、相談してみるとよいでしょう。
 

夫の年金が月20万円なら遺族厚生年金の支給額は10万5000円と想定!

遺族厚生年金の支給額はおおむね、亡くなった方が受け取っていた老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3となります。目安として、夫が月20万円の年金を受け取り、そのうち14万円が厚生年金という場合、10万5000円が遺族厚生年金の支給額となります。遺族厚生年金の支給額は、本人が受け取る年金総額に比べて、低額となることが想定されます。
 
もし、今は配偶者の年金に頼って生活しているという方は、遺族年金が受け取れるかどうかとその額について一度確認しておき、万が一の際にどうするか考えておくとよいでしょう。
 

出典

日本年金機構 年金の併給または選択
厚生労働省 自立相談支援機関 相談窓口一覧
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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