更新日: 2023.09.22 その他年金
年金支給額はひとつきあたり15万円のはずが、通帳を見ると不足しているようです。なぜ少ないのでしょうか?
なぜ思っていた額よりも少なくなるのでしょうか。今回は、年金受給額について説明していきます。
執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)
夢実現プランナー
2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている
年金ひとつきあたり15万円を受け取るには、いくらの収入が必要?
自営業者など第1号被保険者として国民年金だけに加入していた場合、老齢年金は「老齢基礎年金」しか支給されないことになります。例えば令和5年度の老齢基礎年金において、20歳から60歳まで国民年金保険料を支払い、満額受給する場合では、67歳以下の新規裁定者でひとつきあたり6万6250円が支給されます。
会社員など厚生年金に加入している場合は、この老齢基礎年金に上乗せして、老齢厚生年金が支給されることになります。
年金受給額がひとつきあたり15万円の場合、15万円から老齢基礎年金の6万6250円を引いた8万3750円が老齢厚生年金額となります。平均標準報酬額が38万2000円、年収458万4000円であれば、老齢厚生年金は、8万3749円を受け取ることができます。
平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数=年金受給額
38万2000円×5.481/1000×480ヶ月=100万4996円(月額8万3749円)
老齢基礎年金6万6250円+老齢厚生年金8万3749円=14万9999円
老齢年金の合計額は、上記のようになります。これらの今回の試算は、単身で、ほかに控除などがないことが前提です。
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支給された年金から社会保険料や税金が引かれる
現役時代には、給与から所得税や住民税、社会保険料が引かれますが、年金を受給するようになっても、所得が多ければ所得税や住民税が引かれ、さらに国民健康保険など公的な医療保険や介護保険の社会保険料が引かれることになります。
年金収入がひとつきあたり15万円の場合、年収換算では180万円となり、この収入額から、「公的年金等雑所得」の所得控除の110万円が引かれたもの(今回の場合は控除後70万円)が、税金などの計算の基となる所得となります。また、前年の世帯全員の所得が一定基準以下の場合は優遇措置が適用され、軽減判定所得として高齢者特別控除額15万円が引かれます。
180万円-110万円-15万円=55万円
この額が表1以下になると、国民健康保険料の「均等割額」の軽減が適用されます。
(表1)
軽減割合 | 軽減対象となる所得基準 |
---|---|
7割軽減 | 43万円+10万円×(給与所得者等の数-1) |
5割軽減 | 43万円+29万円×(被保険者数+旧国保加入者数)+10万円×(給与所得者等の数-1) |
2割軽減 | 43万円+53.5万円×(被保険者数+旧国保加入者数)+10万円×(給与所得者等の数-1) |
※目黒区ホームページより筆者作成
今回のケースは5割軽減に該当することになり、国民健康保険料の基礎分(医療分)と後期高齢者支援分の均等割が、5割に軽減されることになります。
なお、国民健康保険の保険料率は各自治体によって決められています。例えば、東京都目黒区の場合
基礎分(医療分)の所得割は7.17%、均等割額は1人につき4万5000円
後期高齢者支援分の所得割は2.31%、均等割額は1人につき1万5100円
介護保険料分は65歳以上では負担がありません。
基礎分 所得割額3万9435円、均等割額2万2500円(5割軽減) 計6万1935円
支援分 所得割額1万2705円、均等割額7550円(5割軽減) 計2万255円
健康保険料は、8万2190円となります。
所得税は、所得金額の70万円から所得税の基礎控除48万円を引き、社会保険料の8万2190円を引いた額(1000円未満切り捨て)に税率の5%を乗じた額となり、6850円となります。
住民税は、所得金額70万円から住民税の基礎控除43万円を引き、社会保険料の8万2190円を引いた額(1000円未満切り捨て)に税率の10%(都道府県民税4%+市町村民税6%)と均等割5000円を足した額となり、2万3700円となります。
年間の社会保険料と税金の合計は11万2740円で、ひとつきあたり9395円の負担となります(65歳、単身の場合)。
まとめ
年金支給額を満額で受け取れると思っていても、支給される年金から税金や社会保険料が引かれた額が、実際の手取り額となります。
今回のケースでは、ひとつきあたりの受給額の約15万円から9395円が引かれることになり、手取りは14万500円程度となりました。配偶者がいる場合には、健康保険料の均等割は2人分の負担になり、配偶者が65歳未満であれば介護保険料の負担も増えます。
実際に受け取れる額を事前に確認しておくことで、老後生活の不足分を準備するための目標額が現実的になってきます。
出典
東京都目黒区 国民健康保険料の計算
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー