更新日: 2023.09.27 その他年金

年金受給前に死亡した場合、納めてきた年金は「無効」になる?

年金受給前に死亡した場合、納めてきた年金は「無効」になる?
将来自分は年金をいくら受け取れるのか、関心を持っている方は多いです。一方で「年金受給前に自分が死亡した場合どうなるのか」という点について関心を持っている方や、正しい知識を有している方は、そう多くはないでしょう。
 
そこで、自分が年金を受給する前に死亡した場合、どうなるのか解説していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

年金受給前に死亡しても、納めてきた年金の保険料は基本的に無効にならない

もし、自分が年金の受給前に死亡してしまった場合でも、それまで納めてきた保険料が無効となるわけではありません。なぜなら、所定の要件を満たすことで、自身の年金保険料の納付実績を基に、一定範囲の遺族が遺族年金を受け取ることができるからです。
 
具体的には、下記いずれかの条件に該当する方に生計を維持されていた、子のある配偶者または子が存在する場合、それらの方に遺族基礎年金が支給されます。
 
図表1

図表1

出典:日本年金機構 遺族年金ガイド
 
なお、遺族基礎年金だけでなく、夫との婚姻関係が10年以上ある妻に対しては、60歳から65歳までの間、寡婦年金が支給されます。
 
そして死亡日の前日において、死亡した方の保険料納付済み期間が36ヶ月以上ある場合には、死亡一時金が支給されます。寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取ることができる場合は、どちらか一方の選択となります。
 
また、厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、次のいずれかの要件に当てはまる場合、死亡した方によって生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫または祖父母は、遺族厚生年金を受け取ることができます。
 
図表2

図表2

出典:日本年金機構 遺族年金ガイド
 
とはいえ、保険料を納めてきた自分自身が年金を受け取れるわけではないため、年金を受け取れる遺族が存在しない場合や、生計を維持している家族がいない場合、これまで納めてきた保険料による恩恵は受けられません。
 

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受け取れる遺族年金はどれくらいの金額?

遺族が受け取れる遺族年金の金額は、個別の事情によって異なります。遺族基礎年金について目安となる金額を上げるとするならば、子のある配偶者が受け取る場合は年額79万5000円+子の加算額(1人目および2人目の子の加算額は各22万8700円、3人目以降は1人につき7万6200円)を受け取れます。
 
子が遺族基礎年金を受け取る場合は年額79万5000円を受け取ることができ、2人以上子がいる場合は2人目以降の子の加算額も合わせて受け取れます。
 
寡婦年金は、死亡した方が受け取るであろう老齢基礎年金の額の4分の3となります。また一時金は、保険料納付月数に応じて原則12万円から32万円の範囲で支給されます。
 
図表3

図表3

出典:日本年金機構 遺族年金ガイド
 
遺族厚生年金の場合、死亡した方の老齢厚生年金における報酬比例部分の4分の3の額を受け取ることができます。実際に受け取れる遺族年金の額の詳細については、最寄りの年金事務所などへ確認することをおすすめします。
 

繰下げ待機期間中に死亡してしまった場合は?

年金は繰下げ受給によって、75歳まで受け取る時期をズラすことが可能です。本来なら65歳から受け取れる年金ですが、受け取る時期を繰り下げている間に死亡してしまった場合はどうなるのでしょうか。
 
この場合は「未支給年金」として、繰下げ受給による増加分は考慮せず、65歳時点で請求があったものとした上で、遺族は本来の受給開始時点から死亡日までに受け取っていない年金を一括で受け取ることができます。
 
なお、年金には5年という時効が定められています。死亡したときから5年経過すると、本来支給されるべきであった部分も受け取ることができなくなるため、注意してください。
 

年金の保険料を納めることは家族を守ることにもつながる

年金受給前に自身が死亡したとしても、基本的にそれまで納めてきた保険料が無効になるわけではありません。年金の加入状況に応じて、遺族が遺族年金を受け取ることができます。
 
年金は自身の老後を守るだけでなく、万が一の際に家族を守ることができるものです。万が一に備えるためにも、自身が年金受給前に死亡した場合、家族が受け取れる遺族年金の内容や額について確認しておくべきでしょう。
 
不明点や気になる点は、最寄りの年金事務所へ相談してみてください。
 

出典

日本年金機構 遺族年金ガイド
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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