65歳ですが、繰下げ受給をしようか悩んでいます。待機中に死亡した場合はどうなるのでしょうか?
配信日: 2023.10.03
本記事では、年金の繰下げ受給の制度概要をはじめ、繰下げ受給の待機中に死亡した場合の年金がどうなるのかについて解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
年金受給額を最大84.0%に増やせる繰下げ受給とは?
年金の繰下げ受給とは、原則として65歳以降に受け取れる年金を66歳以降75歳までの間に遅らせる制度です。
単に年金の受取開始時期を遅らせるのではなく、1ヶ月後ろ倒すことで年金額が0.7%アップします。例えば、繰下げ受給によって年金の受取開始時期を70歳0ヶ月からにした場合は42.0%、最長の75歳0ヶ月からにすれば84.0%にまで増やせるのです。
繰下げ受給によって適用される増減率は生涯にわたって適用されるので、長生きすればするほど年金を多く受け取れます。
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繰下げ受給の待機中に死亡した場合は遺族が未支給年金を受け取れる
繰下げ受給の待機中に死亡したとしても、その年金が無駄になることはありません。死亡した被保険者と生計を同一にしていた3親等以内の親族に対し、未支給年金が支給されるからです。ただし、誰でも未支給年金を受け取れるわけではなく、以下のように順位が定められています。
●1.配偶者
●2.子
●3.父母
●4.孫
●5.祖父母
●6.兄弟姉妹
●7.その他(1~6以外の3親等以内の親族)
未支給年金を請求する際には、年金事務所または街角の年金相談センターに書類を提出する必要があります。
「未支給年金・未支払給付金請求書」および「受給権者死亡届(報告書)」に加えて、死亡した被保険者の年金証書、死亡した被保険者と請求者の続柄を確認できる書類(戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写しなど)、死亡した被保険者と請求者が同一生計であったことを確認えきる書類(死亡した被保険者の住民票除票および請求者の世帯全員の住民票の写し)といった書類を用意して手続きを進めましょう。
繰下げ受給の増額分は反映されない
遺族は未支給年金を受け取れますが、繰下げ受給の増額分は反映されない点に注意してください。死亡した被保険者と生計を同じくしていた3親等以内の親族が受け取れるのは、65歳から年金を受け取ったと仮定し、死亡した年齢までのうち未受け取り分の年金です。
支払った年金そのものが無駄になることはありませんが、例えば被保険者が70歳0ヶ月で死亡したとしても、42.0%の増減率は適用されません。受け取れるのは65歳0ヶ月から70歳0ヶ月までの支給されていない年金となっています。
請求時から5年以上前の年金は時効によって受け取れない
国民年金法第102条第1項・厚生年金保険法第92条第1項によって、権利発生から5年が経過した年金については、時効によって消滅します。繰下げ待機中に被保険者が死亡し、未支給年金を請求しても、支給対象になるのは5年前のものだけです。
例えば、年金の被保険者が72歳0ヶ月で死亡したと想定すると、請求できるのは67歳0ヶ月までの年金となるので注意しましょう。
受給要件を満たしていれば遺族年金を受け取れる場合がある
年金の繰下げ受給の待機中に被保険者が死亡した場合、受給要件を満たす遺族なら未支給年金以外に遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取れる場合があります。
遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給要件と受給対象者は下記のとおりです。
【遺族基礎年金】
1. 国民年金の被保険者である間に死亡した
2. 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の国民年金被保険者が死亡した
3. 老齢基礎年金の受給権者が死亡した
4. 老齢基礎年金の受給資格者が死亡した
※ 1と2については、死亡日の前日において、保険料免除期間を含む保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上必要。ただし、令和8年3月末日までの死亡で死亡者が65歳未満の場合は、死亡日の前日において死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ受給できる
※3と4については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方
死亡した被保険者によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」
※「子」とは、18歳になった年度の3月31日までにある、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子
※子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている、または子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には遺族基礎年金は支給されない
【遺族厚生年金】
1. 厚生年金保険の被保険者期間内に死亡した
2. 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で死亡した(初診日から5年以内)
3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金の受給者が死亡した
4. 老齢厚生年金の受給権者が死亡した
5. 老齢厚生年金の受給資格者が死亡した
※ 1と2については、死亡日の前日において、保険料免除期間を含む保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上必要。ただし、令和8年3月末日までの死亡で死亡者が65歳未満の場合は、死亡日の前日において死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ受給できる
※4と5については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方
死亡した被保険者によって生計を維持されていた遺族のうち、もっとも優先順位の高い者
1位:子がいる配偶者
2位:子(※1)
3位:子がいない配偶者 (※2)
4位:父母(※3)
5位:孫
6位:祖父母(※3)
※「子」とは、18歳になった年度の3月31日までにある、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子
(※1)子のある妻または子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受け取っている間は、子には遺族厚生年金は支給されない
(※3)30歳未満の妻は5年間の受給。夫の場合は、55歳から受給できるが受給開始は60歳から(ただし、遺族基礎年金をあわせて受給できる場合は、55歳から60歳でも受給可能)
(※4)55歳以上から受給できるが、受給開始は60歳から
(日本年金機構「遺族年金」より)
自分の健康状態などを考慮して年金の受取開始時期を決めよう
年金の繰下げ受給は、将来的に受け取れる年金額を増やすために有効活用したい制度です。待機期間中に被保険者が死亡したとしても、死亡した被保険者と生計を同じくしていた3親等以内の親族に対して未支給年金が支給されます。しかし、支給されるのは65歳から死亡した年齢までの未支給年金のみで、繰下げによる増額分は反映されません。
単に年金額を増やせるという理由だけで繰下げ受給を選ぶのではなく、自分の健康状態などを考慮したうえで、年金の受取開始時期を決めてください。
出典
年金の繰下げ受給 日本年金機構
年金を受けている方が亡くなったとき 日本年金機構
年金の時効 日本年金機構
遺族年金 日本年金機構
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー