更新日: 2023.10.08 その他年金

親が「65歳から年金を受けとる」と言っています。遅らせると増えるのに、これでは損しますよね?

親が「65歳から年金を受けとる」と言っています。遅らせると増えるのに、これでは損しますよね?
年金を65歳から受給しようとする親御さんを見て「年金の繰下げ受給を選択すれば得なのに」と感じる人は多いのではないでしょうか。しかし、老齢年金の繰下げ受給にはデメリットもあるため、よい面・悪い面の両方を知って検討する必要があります。
 
本記事では、老齢年金の繰下げ受給の仕組みやメリット・デメリット、関連する制度、繰下げ受給の利用状況を紹介し、繰下げ受給をしないのは損なのかを考えます。
FINANCIAL FIELD編集部

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老齢年金の繰下げ受給のメリットとデメリット

老齢年金の繰下げ受給とは、老齢年金の受け取り開始時期を本来の65歳から最大75歳まで遅らせることで、受けとりを繰下げた期間に応じて年金月額が増額される制度です。繰下げ1ヶ月に対して年金額が0.7%増え、最大で120ヶ月分の84%まで増額されます。
 
年金の繰下げ受給は、一見すると年金が大幅に増やせるお得な制度に思えますが、一概にそうとばかりは言えません。メリット・デメリットの両方を理解して、制度の利用を検討する必要があります。
 

メリット

老齢年金を繰下げ受給する最大のメリットは、受けとれる年金額が大きく増やせる点です。当面の生活に困らない手元資金がある、65歳を超えても働く予定があるなどの理由で、すぐに年金収入に頼る必要がない人は、繰下げ受給の選択により将来の収入に余裕をもたせられるでしょう。
 
1度、増額率が決まった年金額は一生涯増額されたまま受けとれるので、長生きするほど受けとれる年金総額は大きくなります。
 

デメリット

老齢年金を繰下げ受給すると、65歳から受給開始した場合と比べて年金受給開始のスタートが後ろ倒しになります。いくら年金額が増額されるとはいえ、累計受給額が65歳から受給開始した場合に追い付くには時間がかかることに注意が必要です。
 
例えば、75歳まで受給開始を繰下げて84%増額された年金額を受けとるケースでは、65歳から受給した場合、累計額が追いつくのは、およそ86歳前の試算になります。万が一、85歳までに亡くなってしまえば、生涯に受けとれる年金の総額は繰下げ受給をしなかった場合より少なくなるのです。
 
また、高齢になるほど認知症やそのほかの病気・けがのリスクは上昇します。年金を使って好きなことを楽しみたいと考えていても、繰下げ待機をしている間に心身の状態が悪くなり、年金を受給するころには元気でなくなっている可能性もあるでしょう。
 
以上を考えると、老齢年金の繰下げは得なことばかりとは言いきれません。
 

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繰下げ受給のデメリット解消になる? 「5年前みなし繰下げ制度」とは

「5年前みなし繰下げ制度」は、2023年4月に始まった新しい制度です。
 
本来、年金は、受給する権利が発生してから5年受けとらずにいると権利が消滅します。そのため、70歳を超えてから繰下げを中止して過去の年金(本来額)を一括で受けとろうとしても、5年以上前の年金の権利は失われてしまうのが従来のルールでした。
 
従来ルールのデメリットを解消し、70歳以降に繰下げを中止した場合でも充分な年金を受けとれるようにもうけられたのが「5年前みなし繰下げ制度」です。5年前みなし繰下げ制度では、70歳以降に本来額の年金を一括請求した場合に、請求の5年前に繰下げの申し出をしたとみなして、増額した年金を5年分一括で受け取れます。
 
例えば72歳時点で本来額の年金を一括請求すると、5年前の67歳時点で繰下げの申し出があったとみなして、65~67歳までの24ヶ月待機した際の増額率16.8%が加算された年金が、5年分一括で支給されます。また、請求以後も16.8%増額された年金を一生涯受けとれるのです。
 
5年前みなし繰下げ制度ができたことで、健康状態の悪化など、繰下げ待機中の事情の変化があった際に繰下げ中止を選択しやすくなり、以前と比べると安心して繰下げ待機ができるようになったといえるでしょう。
 

繰下げ受給を選択しているのは実際のところどれくらい?

年金の繰下げ受給を選択している人は、実際にはどのくらいいるのでしょうか。厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和3年度に繰下げ受給を選択した人はわずか1.2%にとどまっており、極少数派なのが現状です。
 
老齢年金の繰下げ受給は、高齢者の健康リスクなどを考えると、安易には選択しにくい制度だと言えます。本人の健康状態や年金以外の老後資金の状況などを考慮して、よく検討することが重要です。
 

年金受給を遅らせるメリット・デメリットを比べて検討しよう

年金受給を65歳から遅らせると、繰下げ受給の仕組みによって年金額を増やせます。一見すると繰下げ受給をしないのは損に思えますが、年金を受けとる年齢が上がると、受給開始時には待機期間の分だけ、健康寿命や余命が短くなっていることにも留意する必要があるでしょう。
 
金額の大小よりも、年金を受け取る本人が資金の心配をしないで生活していける選択をすることが大切です。
 

出典

日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業の概況
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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