更新日: 2023.10.06 その他年金

「ねんきん定期便」のはがきによると、将来の年金額「10万円」……!1ヶ月当たり10万円の年金で老後は過ごせる?

執筆者 : 柘植輝

「ねんきん定期便」のはがきによると、将来の年金額「10万円」……!1ヶ月当たり10万円の年金で老後は過ごせる?
将来の年金額は月10万円という通知が来た方から、先日「これで老後は生活していくことができるのか?」と相談がありました。同様の状況にある方は、この点で非常に頭を悩ませていることでしょう。
 
そこで、老後1ヶ月当たり10万円の年金で生活が可能であるのか考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

ねんきん定期便とは

ねんきん定期便とは、年金への理解を深めるために発行されている文書で、毎年誕生月に送られてきます。ねんきん定期便では、ご自身のこれまでの年金の加入に関する経歴を確認できるようになっており、その中に将来自分が受け取れるであろう額の記載もあります。
 
この額はあくまでも現時点のものであるため、今後増加する可能性もあります。特に20代や30代であれば、まだまだこれから年金額の増加が期待できるため、ねんきん定期便の記載のとおり、将来は10万円しかもらえないまま、という可能性は低いでしょう。
 
とはいえ、年齢が50代後半であるなど年金受給開始時期が迫っている段階においては、大きく増加させることは難しいです。その場合、将来は10万円程度のお金で老後を過ごす覚悟をしなければなりません。
 

将来の年金額が10万円って少ない?多い?

では、もしも老後を1ヶ月当たり10万円の年金で過ごすとして、その金額は多いのか少ないのか考えていきましょう。
 
厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、令和3年度末の厚生年金受給者の平均額は、1ヶ月当たりおよそ14万6000円となっています。老後の年金が10万円だとすると、この平均の3分の2程度の金額となり、支給額は少ないといえるでしょう。
 
もし、これ以上に年金を増やしたいと考えるのであれば、より長く働いて厚生年金に加入する期間を延ばしたり、年金を繰り下げて受給額を増やしたりする、などといった対応が必要になります。
 

月10万円の年金で、老後を過ごすことができる?

総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要」によれば、65歳以上の単身無職世帯の月々の支出は、15万5495円となっています。統計上、10万円の年金だけでは生活が厳しそうです。
 
【図表1】

図表1

出典:総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要
 
また、65歳以上の夫婦のみの無職世帯であれば、1ヶ月当たり26万8508円の支出が生じています。1世帯当たりの年金の額が、夫婦それぞれ10万円ずつで合計20万円という場合でも、生活は難しそうです。
 
【図表2】
図表2

出典:総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要
 

年金だけで生活できないと感じたときは?

現役世代のうちに「将来は年金だけで生活できない」と感じたときは、その時点で早期に対策を立てるべきです。
 
例えば、先に挙げたように、老後も働いたり年金の受給開始時期を繰り下げたりするというのは有効です。参考までに、1ヶ月当たり10万円の年金も、支給開始時期を70歳とする(5年繰り下げる)ことによって、年金額は14万2000円と大きく増加します。
 
また、20代や30代など老後まで時間がまだあれば、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)を通じて資産形成をし、老後資金を準備するというのも有効です。
 

まとめ

将来の年金額が10万円という場合、その額は平均的な受給額と比較して小さく、年金だけで生活することは困難です。
 
年金額が10万円となると、よほどそれまで資産形成ができている方や不労所得を有する方でなければ、老後も働くことや年金の繰下げ受給をすること、今からでも急ぎ資産形成を開始することなどを検討するべきです。
 
ねんきん定期便を見て、年金額が10万円だったという場合、まずは統計上の一般的な支出額を参考に、自分が老後に生活するには毎月いくらのお金が必要か考え、不足する部分を補う方法について考えてみてください。
 
早い段階で気づくことができ、準備ができれば、老後も安心して過ごすことができるでしょう。
 

出典

厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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