更新日: 2023.10.17 その他年金

貯金がないため「60歳」から年金を受け取りたいです。「65歳」での受け取りと比べて、年金額にどれだけ差が出ますか? 年収は400万円です

執筆者 : 齋藤彩

貯金がないため「60歳」から年金を受け取りたいです。「65歳」での受け取りと比べて、年金額にどれだけ差が出ますか? 年収は400万円です
年金は原則65歳から受給できますが、「もっと早く受給したい」と思う人もいるかもしれません。年金の受給時期は早める(繰り上げる)・遅らせる(繰り下げる)ことができ、タイミングにより受給金額が変わります。
 
本記事では、年金の繰上げ・繰下げ受給の概要と、繰上げ受給している人の割合、そして年収400万円の人が年金の受給開始を60歳まで繰り上げた場合の受給金額について解説します。

年金の繰上げ・繰下げ受給

公的年金は国民年金と厚生年金があり、国民年金は主に自営業や専業主婦(夫)、厚生年金は主に会社員が加入します。
 
国民年金は20歳から60歳までの40年間、保険料を不足なく納付すると老齢基礎年金として月額6万6250円、年額79万5000円受給できます(2023年度)。厚生年金は収入と加入期間によって受給金額が異なり、基本的に収入が高いほど、また加入期間が長いほど受給金額は高くなります。
 
老齢基礎年金・老齢厚生年金はどちらも原則65歳から受給できますが、本人の希望により60歳までの任意のタイミングに早めることができます。これを「繰上げ受給」といいます。
 
しかし、繰上げ受給の場合は受給開始を1ヶ月早めると年金額が0.4%減額され、一度減額された金額は一生涯続きます。また、老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰り上げる必要があり、どちらかだけを繰り上げることは基本的にできません。
 
反対に、年金の受給開始を66歳から75歳までの任意のタイミングに遅らせることもできます。これを「繰下げ受給」といい、1ヶ月繰下げると年金額が0.7%増額されます。
 
75歳まで繰り下げると84%の増額となり、一度増額された金額は一生涯続きます。なお、繰上げ受給と違い、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることができます。
 

年金を繰上げ受給している人の割合

年金の繰上げ・繰下げ受給状況をみてみましょう。厚生労働省が発表した2021年度のデータによると、老齢基礎年金の繰上げ率は27%、繰下げ率は1.8%です。
 
老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金権者を除く)の繰上げ率は0.6%、繰下げ率は1.2%であり、自営業や専業主婦(夫)など、老齢基礎年金受給者の繰上げ率が高いことが分かります。一方、繰下げ受給は年金額が増額されますが、選択している人が少ない状況です。
 

年収400万円の場合、60歳まで繰り上げると受給金額はいくら?

まずは、年収400万円の人が65歳で受給できる老齢基礎年金・老齢厚生年金を確認しましょう。
 
国民年金は、国民年金保険料を満額納付していたとすると、65歳から受給できる老齢基礎年金は月額6万6250円、年額79万5000円です。厚生年金は計算を簡便にするため次のように仮定します。


・平均標準報酬額:34万円
・2003年4月以降に40年間加入
・円未満切り捨て

この場合、65歳から受給できる老齢厚生年金は月額7万4541円、年額89万4492円、老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計は月額14万791円、年額168万9492円です。
 
これを60歳まで繰り上げると、0.4%×60ヶ月分(5年分)減額されるため、65歳時点の金額の76%を受給することになります。計算すると月額10万7001円、年額128万4012円です。
 

まとめ

本記事では、年金の繰上げ・繰下げ受給の概要と、繰上げ受給している人の割合、そして年収400万円の人が年金の受給開始を60歳まで繰り上げた場合の受給金額について解説しました。
 
年金は老後の生活を支える大切なもので、60歳以上75歳未満の間で受給タイミングを自分で決められます。しかし、繰上げ受給は受給金額が少なくなってしまうため、いつから受給するかの判断は慎重に決めるようにしましょう。
 

出典

日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
日本年金機構 は行報酬比例部分
厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)
 
執筆者:齋藤彩
CFP

ライターさん募集