長生きできない場合、年金は「減額」も覚悟で繰上げ受給をした方が得するって本当?

配信日: 2023.10.26

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長生きできない場合、年金は「減額」も覚悟で繰上げ受給をした方が得するって本当?
老齢年金を受け取る年齢は、60歳から75歳の間で選択することができます。必ず長生きできるかは分からないので、受給開始を繰り上げて早く年金を受け取る方が得をするのではないかと考える方もいるでしょう。
 
そこで、長生きをしないと仮定した場合、減額を覚悟で繰上げ受給をした方が得なのか考えてみました。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

繰上げ受給の仕組み

老齢年金は原則65歳から受け取ることになります。それより早く受け取ることを繰上げ受給といい、最短で60歳からの受給を選択できます。繰上げ受給は1ヶ月単位で請求できますが、1ヶ月繰り上げるごとに受け取れる年金が0.4%減額されます。
 
例えば、原則の65歳から月額10万円の年金を受け取れる方が、60歳から繰上げ受給した場合、5年(60ヶ月)の繰り上げによる減額率は最大の24%で、年金額は月額7万6000円となります。
 

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長生きしなければ繰上げ受給の方が得することがある?

前述したとおり、繰上げ受給をすると早期に年金を受け取れますが、繰り上げた期間に応じて年金額は下がります。年金を繰上げ受給するか悩んでいるという場合、受給開始時期と減額される金額のバランスが理由の一つになっているのではないでしょうか。
 
実際、最近ではネット上で「長生きできないとしたら年金の受け取りは繰り上げした方が得をする」といった記事などを見て、繰上げ受給の相談に来る方もいます。
 
この点については、「長生きできないと考えるのであれば、年金は繰上げ受給した方がいい」という回答になります。
 
繰り上げによる減額について前述した例と同じく、65歳から受け取る1ヶ月当たりの年金額が10万円というケースで説明していきましょう。
 
ここでは仮に70歳まで生きるとして、年金の受給開始年齢を65歳から60歳までの間で1年ずつ繰り上げた場合、どのように年金額が推移していくか計算します。
 
70歳までの「総受給額」で見ると、最も多くなるのは60歳から繰上げ受給した場合で912万円となります。逆に最も少なくなるのは、原則の65歳からの受給で600万円です。
 
図表

受給開始年齢 受給年数 1ヶ月当たりの年金額 70歳までの総受給額
60歳 10年 7万6000円 912万円
61歳 9年 8万800円 872万6400円
62歳 8年 8万5600円 821万7600円
63歳 7年 9万400円 759万3600円
64歳 6年 9万5200円 685万4400円
65歳 5年 10万円 600万円

※筆者作成
 
また、75歳まで生きると仮定しても総受給額が最も多くなるのは60歳から受け取った場合の1368万円で、65歳からの受給では1200万円と最も少なくなります。
 
このように、70歳や75歳といった年齢で亡くなる可能性を考慮すると、繰り上げによる1ヶ月当たりの年金の減額はあるものの、60歳から年金を受け取った方が結果的には総受給額が多くなり、得をする場合もあると考えられます。
 

繰上げ受給するか迷ったときはどうすればいい?

例えば病気で余命宣告をされているような場合を除き、自分が長生きするのか、それとも早くに亡くなるのかは誰にも分かりません。年金を繰上げ受給するべきか、受け取りを開始する時期について決められないというときは、無難に65歳からの受給を検討してみてください。
 
確かに65歳から受け取るのであれば、ある程度は長生きしないと総受給額では損をしてしまうと思えるかもしれませんが、原則の受給開始年齢であり、1ヶ月当たりの年金額が減額されることもありません。
 
年金は老後の生活を支える収入となるため、無理に繰上げ受給をする必要もないのです。
 

まとめ

年金はある程度の長生きをしない限り、総受給額は繰上げ受給をした方が多くなります。例えば75歳以下で亡くなった場合、65歳から年金を受け取るよりも総受給額では得をするといえます。
 
しかし、繰上げ受給をした方がいいとは一概には言い切れません。繰り上げによって1ヶ月当たりの年金額は減額となるほか、自分が何歳まで生きるのかも分からないからです。
 
長生きできないことを前提として、総受給額を多くするために繰上げ受給を考えているのであれば、長生きした場合のリスクや年金が老後の収入の柱であるということも踏まえ、本当に繰上げ受給をするべきか十分に検討するようにしてください。
 

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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