結婚20年、年収600万円の夫が死亡。子どもがいない場合でも「遺族年金」は受け取れる? 受給額を試算

配信日: 2023.11.04

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結婚20年、年収600万円の夫が死亡。子どもがいない場合でも「遺族年金」は受け取れる? 受給額を試算
配偶者が亡くなった際に「遺族年金を受給できる」と聞いたことがある人は多いでしょう。しかし、実際にいくら受給できるかは年金保険料の納付状況や、子どもの有無などによって異なります。
 
本記事では、遺族年金の基本的な概要について確認し、子どものいない夫婦に焦点をあてて受給額の試算を行います。ぜひ参考にしてください。
辻本剛士

執筆者:辻本剛士(つじもと つよし)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種

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遺族年金の概要

「遺族年金」とは、国民年金・厚生年金の被保険者または被保険者であった人が亡くなった際に、被保険者によって生計を維持されていた遺族(配偶者や子どもなど)に支給される年金です。遺族年金は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つがあり、遺族厚生年金については、要件を満たしていれば「中高齢寡婦加算」も支給されます。
 
これらの年金は、被保険者の年金保険料納付状況や、子どもの有無などによって両方もしくはどちらか一方が支給される仕組みです。どのような条件を満たせば遺族年金を受け取ることができるか詳しく見ていきます。
 

遺族基礎年金

「遺族基礎年金」は、国民年金の被保険者が亡くなった場合などに、亡くなられた人によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。この年金を受け取れる対象者は次のとおりです。
 

●子どものいる配偶者
●18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子ども、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子ども

 
このように、遺族基礎年金は子どもがいない配偶者には支給されない制度となります。ただし、亡くなられた人が国民年金の第1号被保険者として、死亡日の前日までに36ヶ月以上保険料を納付しているなど、一定の要件を満たした場合には死亡一時金が支給されます。
 
遺族基礎年金の受給額は、2023年度においては79万5000円です。そして、子どもが1人増えるごとに加算されていきます。以下が子のある配偶者が受け取るときの遺族基礎年金の支給額です。
 

●基本額:79万5000円
●子ども1人目:22万8700円
●子ども2人目:22万8700円
●子ども3人目以降:各7万6200円

 
子どもが受け取るときは、79万5000円+2人目以降の子の加算額を子の数で割った額が1人あたりの額となります。
 

遺族厚生年金

遺族厚生年金は、会社員や公務員など厚生年金保険の被保険者が亡くなった際に遺族が受け取れる年金です。受け取れる遺族は、配偶者、子ども、父母、孫、祖父母で、優先順位の同じです。遺族基礎年金とは異なり、子どもがいない配偶者にも年金が支給される仕組みです。ただし、子どものいない30歳未満の妻は5年間のみの有期年金になります。
 
遺族厚生年金の支給額は2003年3月31日以前とそれ以降の加入で計算式が異なりますが、今回は4月1日以降の計算式でみていきます。
 

【遺族厚生年金の計算式】
(1)加入月数が300ヶ月未満の場合
平均標準報酬額×5.481/1000×300×3/4
(2)加入月数が300ヶ月以上の場合
平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数×3/4

 

中高齢寡婦加算

中高齢寡婦加算は、40歳以上であって遺族基礎年金を受給できない妻が遺族厚生年金に加算して受け取れるものです。受給要件は次のとおりです。
 

●亡くなった夫の厚生年金加入期間が20年以上
●夫の死亡時に妻の年齢が40歳から65歳
●遺族基礎年金の受給資格がない
●生計を同じくしている子どもがいない

 
中高齢寡婦加算額は年額59万6300円となります。これは、遺族基礎年金の4分の3に相当する額です。
 

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子どものいない夫婦の遺族年金はいくら?

ここからは、子どものいない夫婦の夫が亡くなった際に、妻が受け取れる遺族年金の受給額を試算していきます。年収600万円、子どもなしの夫婦2人世帯のモデルケースで見ていきます。その他の条件は次のとおりです。
 

●夫45歳(死亡年齢):会社員
●妻45歳(夫死亡時の年齢):専業主婦
●子ども:なし
●平均標準報酬額:50万円
●勤務期間:22年(264ヶ月)

 
【遺族基礎年金】
遺族基礎年金は子どもがいることが受給要件のため、今回のケースでは受給対象外です。よって、遺族基礎年金は0円となります。
 
【遺族厚生年金】
続いては遺族厚生年金です。前述で解説した計算式をもとに算出していきます。今回のケースでは夫の厚生年金の加入期間が300ヶ月未満のため、次の計算式になります。
 

平均標準報酬額×5.481/1000×300×3/4
50万円×5.481/1000×300×3/4=61万6600円(100円未満は切捨て)

 
よって、遺族厚生年金の支給額は61万6600円になります。
 
【中高齢寡婦加算】
今回のケースでは、夫の厚生年金加入期間は20年以上、妻の年齢は40歳以上65歳未満、そして遺族基礎年金の対象外となっているため、中高齢寡婦加算が適用されます。加算額は59万6300円です。
 
したがって、遺族年金の総額は61万6600円(遺族厚生年金)+59万6300円=121万2900円です。月換算では約10万円となります。
 

夫婦2人世帯は保険加入などで万一に備えよう

今回は、遺族年金の概要と夫婦2人世帯のモデルケースで遺族年金の受給額を見てきました。今回のモデルケースでは夫婦2人世帯では遺族年金の受給額は月に約10万円となりました。月に10万円では生活が苦しいと感じる人は、生命保険などを活用してきちんとした備えをしておくことをおすすめします。
 

出典

日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)

日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)

 
執筆者:辻本剛士
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種

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