更新日: 2023.11.24 その他年金
驚きの事実!「年金」は支給月額を下げてでも「早期に」受給する方が、得をすることがある!
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
年金は早くに受給すると、その期間に応じて支給が減額される
年金は原則65歳から受給することになっています。しかし、「繰上げ受給」をすることで、本人からの申し出に基づき、60歳から受け取ることもできます。ただしその分、月々の年金額は減額されてしまいます。
具体的には、請求する月を1月繰り上げるごとに、本来支給される年金額よりも0.4%減額されます。例えば、1年繰り下げれば4.8%の減額です。5年間繰り上げて60歳から受給するとなれば、年金額は24%も減額されます。
それに対して、繰下げ受給をすると、1月当たりの年金額は0.7%増額します。請求する時期は最大で75歳にまで繰り下げることができ、その場合、なんと84%も受け取れる年金が増額するわけです。
ここだけ見れば、多くの方が「繰上げ受給をすると損をする」と思うかもしれません。しかし、必ずしもそうとは限らないのです。
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どのような事例で早期に受給した方が得をするのか
年金を繰り上げた方が得をする事例としては、早期に亡くなってしまったという場合が考えられます。
例えば、厚生年金を65歳から、平均的な額で、月額14万6000円にて受け取れるとしましょう(厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より「厚生年金保険(第1号)受給者平均年金月額の推移」参照)。そして、その方が70歳で亡くなったと仮定します。
その場合、最も多く年金を受け取れるのは、60歳から受給を開始した場合です。試しに計算してみましょう。
上記の年齢まで繰り上げた場合、本来受け取れる1ヶ月当たり14万6000円の年金は、76%に減少し、11万960円になります。しかし、10年間も受け取れる期間があるので、総額で1331万5200円も受け取れます。
逆に、最も少なくなるのが、繰上げ受給をしないでそのまま受給した場合です。繰上げ受給をせずに65歳から受給すると、亡くなるまでにわずか876万円しか受け取れないことになります。
また、80歳で亡くなる場合、最も多く年金を受け取れるのは62歳から受給した場合で、総額2699万4816円です。逆に最も少なくなるのは、65歳から受給した場合で、2628万円です。
このように、亡くなるタイミングが早いと予想される場合は、支給月額を下げてでも繰上げ受給をし、受給期間を長く確保することができれば、結果的に総受給額を多くすることができるというわけです。
繰上げ受給で損をすることもある
逆に、繰上げ受給で損をしてしまう場合があります。それは長生きした場合です。例えば90歳まで生きた場合で仮定すると、60歳から65歳までの間で受給開始時期を決める場合、最も受給額が少なくなるのは60歳から受給した場合です。
このとき、総額は3994万5600円となります。それに対して最も多くの年金を受給できるのは、65歳から受給した場合で、4380万円となっています。
受給開始時期に迷ってしまったときは?
正直なところ、自分が何歳まで生きるかは分かりません。健康であっても事故で突然亡くなってしまうこともあります。長生きはできないと思っていても、医療の発達などで想定より長生きするということも、珍しい話ではありません。
もし、迷っているのであれば、原則どおり65歳から受給する方がよいでしょう。原則どおりであれば、特に月々の年金額が増えることもなければ減ることもなく、「人の生き死には予測できないし仕方ない」と割り切れるからです。
まとめ
年金をより多く受給するには、受給できる期間が重要です。仮に繰上げ受給によって、月額換算した年金額が小さくなったとしても、受給期間が長くなれば総受給額は大きくなります。そのため、月額の年金額を下げてでも、繰り上げて早期に受給した方が得をする場合もあります。
とはいえ、自分にとっていつ年金の受給を始めるのがベストなのかは、誰にも分かりません。年金の受給開始時期については、後悔が小さくなるよう、慎重に考えるようにしてください。
出典
厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 年金の繰下げ受給
執筆者:柘植輝
行政書士