更新日: 2023.11.24 国民年金

同居していた亡き夫の母が亡くなった! 年金の手続きは必要?

執筆者 : 井内義典

同居していた亡き夫の母が亡くなった! 年金の手続きは必要?
夫が亡くなって以降、夫の母と同居して暮らしていたAさん。その夫の母も亡くなりました。Aさんと夫との間に子どもはおらず、夫にも、夫の母にも兄弟など近い親族は他にいません。
 
老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)を受給していたその夫の母が亡くなったことで、Aさんには年金についての手続きがあるのでしょうか。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

未支給年金の請求手続き

Aさんの夫の母は老齢年金の受給者でした。年金というのは偶数月の15日に前月分と前々月分が支払われるのが原則で、つまり、後払いのルールとなっています(【図表1】)。亡くなるまで年金を受給していた人は、これに従って生前受給をしていたことになります。
 


 
そして、年金は死亡した月の分の年金まで支給対象となります。しかし、後払いであるために、少なくとも死亡した月の年金は本人が受給できません。その本人が受け取れず、未支給分となっている年金については、死亡した人と生計が同じ(生計同一)の一定の遺族に支給されることになり、受け取るために未支給年金の請求手続きがあります(未支給年金の例は【図表2】)。
 

 
住民票上、同居している場合は生計が同じとされます(※同居していなくても生計同一が認められることもあります)。そして、請求できる遺族とは、死亡した人の(1)配偶者、(2)子、(3)父母、(4)孫、(5)祖父母、(6)兄弟姉妹、(7)それら以外の3親等内の親族です。
 
ただし、遺族には優先順位があり、(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)の順になります。
 

夫死亡後も原則として親族関係は続く

未支給年金の請求ができる遺族のうち、(7)は「3親等内の親族」とあり、その親族は、血族と姻族を指しますが、自分の子の配偶者、あるいは自分の配偶者の親は1親等の姻族となり、3親等内の親族の範囲に含まれます。
 
結婚によって生じた親族であるこの姻族については、配偶者と離婚した場合は終了しますが、配偶者が死亡した場合はそれだけでは終了しません。市区町村に「姻族関係終了届」を提出して、いわゆる「死後離婚」をして終了するため、そうでなければ姻族関係は継続することになっています。
 
夫の母の死亡当時まで姻族関係が続いていれば、Aさんが1親等の姻族となり、他に生計を同じくする遺族がいないのであれば、Aさんが未支給年金の請求をします。(7)の3親等内の親族は、遺族の中で最も後の順位となりますが、2014年4月の法改正で対象遺族に追加され、より優先順位の高い(1)~(6)の人がいなければ、その請求をすることができます。
 

誰に請求権があるか、実際に誰が請求するか

Aさんのケースとは異なり、実際死亡した人には、(1)~(7)までで複数の遺族がいることもあります。
 
もし、複数の遺族がいる場合は、その中で優先順位が最も高い遺族が請求します。また、その請求できる最も優先順位の高い遺族が複数いる場合(例:死亡した人に配偶者がいないため子が請求権者となり、その子が2人以上いる場合など)は、その中で代表して請求をした1人が未支給年金の全額を受給します。
 
誰に請求権があるか、実際に誰が請求することになるか、確認が大切でしょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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